3-5 VSレジーナ・ラルセイ3
目の前に悠然と立つレジーナ。今はキャノン砲は持っておらず、左手にハンドガン、右手にあのグラビティソードを持っている。なぜか全部ピンク色だ。
「私が何の意味もなく行動してると思うの?」
「……レジーナも女の子だな。全部真っピンクって。ピンク好き過ぎだろ?」
俺の言葉にレジーナは一度自分の恰好を見てもう一度こっちを見る。
そして呆れたような顔をした。
この子、俺に呆れ過ぎじゃないだろうか?
あれ? いつものことか?
「お兄さんさぁ、デザートピンクとか知らない? ほら、こういう場所だと辺りに同化して見え難くなるでしょ?」
「え? いや、見えてるんだが。意味ないんじゃないのか?」
夕日に照らされる彼女は確かに周りの色に近付いているかもしれない。
しかし、確かに少し見辛いかもしれないが、見えはするだろと思い俺はそのまま口にした。
「いや、そりゃこの距離で見えなかったらおかしいでしょ」
またまた、呆れたような顔で見られてしまった。
同年代のフィアならばともかく、自分より幼く見えるレジーナに呆れられるのは少し心にくるものがある。
「私の装備は予め設定してある複数の色に即時変更出来る優れ物なんだよ。見え難いってだけの事が有利に働く場面って意外とあるんだからね?」
「な、なるほど。なんとなくは分かった」
「分かればいいよ。それじゃあ、もっと味わっていってね!」
そう言うとレジーナが地面を強く蹴り、一直線に飛び出して切り付けてくるので、属性刀をカナムで覆って補強しつつ切り結ぶ。
すかさずハンドガンで撃ち込んできたのを雷盾を作り出してやり過ごす。
続けざまにレジーナが蹴りを繰り出そうとしてきたので、そっちにも盾を出して受け止めようとする。だが、
「あぐっ!?」
次の瞬間には体が宙に浮いて、くの字に曲がっていた。
何が起きたのかを理解する間もなく、頭目掛けて回し蹴りが飛んでくるのが見えた。
必死に盾をイメージして作り出すがレジーナの足に当たった瞬間、雷盾はやわなガラスのように一瞬で砕け散ってしまう。咄嗟に右腕でガードするもそのまま二十メートル程も吹き飛ばされた。
俺は地面に数回バウンドしたものの、何とか空中で体勢を立て直し止まることに成功した。
「うぁ、あ? 何だ、これ?」
腹部と右腕、頭に鈍い痛みが残っており、頭が少しボーっとする。
非常に重い一撃を食らったのだということはさすがの俺でも分かる。
しかし、レジーナのどこにそんな力が……?
まともに食らった腹部や右腕はともかく、ガードしたはずの頭までダメージが来るとは……。
地面に膝をついたまま、いまいち定まらない視点で何とかレジーナを捉えると、本来ならばすぐさま追撃すべきところなのにレジーナはゆっくり歩いて来ていた。
俺くらいなら余裕ということか? ……まぁ、そうだよな。
やはりA級というものはまだ俺の届く所ではなかったらしい。
よくよく考えてみれば全力のフィアとは戦ったことが無かったし、レオンはスポンサーの息子だという話だった。
多少甘い基準でA級になっていた可能性は充分に考えられる。
どうやら、本当に俺はレジーナのことを嘗め過ぎていたようだ。
「お兄さん大丈夫? もうふらふらじゃん」
「はは、レジーナの言う通りだったよ。まさか単純な蹴りでこの威力とはな。やっぱり能力者は見かけに寄らない」
俺が三メートル程手前で止まったレジーナを見上げつつ言うと、レジーナは口元に人差し指を当てて斜め上を見上げた。
何かを考えているような、そんな仕草だ。
「うーん、私が使った能力って身体強化だけだよ? ほら、指輪のさ」
「え? マジか……。俺も自前のではあるけど、身体強化はしてるんだけどな」
「まぁ、そこはイメージの強さとか慣れとか……色々あるし? 新人のお兄さんにはしょうがない部分もあるとは思うんだけど、なんと私はさらにこれを着てるからね」
そう言ってレジーナは自分の着ている特殊スーツを指差した。
さっきとは違って特殊スーツは黒色になっている。というか装備が全て黒色になっている。
どうやら、いつの間にか陽が落ちていたようだ。
「そのスーツ?」
「そう、私自慢のパワードスーツ! これさえあれば非力とか関係ないもんね。皆は調整が出来ないとか言って嫌がるけど、これ着るだけでもかなり強くなれるのにね。お兄さんはどう?」
「ははは、遠慮しておきます」
「そう? これ凄いのに」
凄いのは分かっている。
もはや膝はがくがくだ。
あんな普通の服に毛が生えた程度にしか見えないスーツでどうしてここまでの出力が出るのか、甚だ疑問である。
レジーナは色々と武器の扱いが上手いみたいだし、俺の身体強化に対して指輪の出力が大きいのもあるかもしれないけどな。
「あはは、それにしてもお兄さん膝がくがくだね。どう? 私の武器の凄さは分かった?」
「あぁ、嫌と言うほど分かったよ。以前に比べると大分強くなったからか、随分と思い上がってたみたいだ。ほんと、情けない気分だよ」
「それを言うなら、入ったばっかの人に負けたりしたらA級隊員として私の面目の方が立たないよ」
ちょくちょくA級隊員って言うな……。
レジーナもA級としての誇りとかがあるのだろうか?
……よく考えたら俺、A級以外の人に会った記憶がないな。
廊下とかですれ違う人達がそうなんだろうけど、別に話す機会もないしな。
……実は皆強かったりするんじゃないだろうな?
「研究員の人達って皆こんなに強いのか? ウルガスさんとか」
「んーん。私だけだよ。おっちゃん達は研究一筋だからさ。私も皆が使ってくれれば自分でやらなくてもいいんだけどねー」
「ははは、なるほどね」
「あっ、そうだ。お兄さん、ちょっと付いて来て」
俺が愛想笑いを浮かべていると、何を思ったのか突然レジーナが俺の手を引っ張ったので、引っ張られるままに後を付いて行くのだった。
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