ハイスクール
ご覧いただきありがとうございます。
こちら私の人生における正真正銘の処女作となります。
黒歴史となるか伝説の始まりとなるか温かく見守っていただけると幸いです。
厳しいご指摘もぜひお待ちしております。
ほどほどに愛しなさい。長続きする恋はそういう恋だよ。ーサン・テグジュペリ
有名な恋にかかわる言葉である。私は彼に問いたい。
愛しすぎることは、長続きしないことは悪なのか、と。
私は彼は間違っていると思う。いつか天国のサン・テグジュペリにたたきつけてやるのだ。
愛とは底知れぬ欲求のことだということを。
私が初めて感じた愛情はおそらく両親からのものだろう。この世に生を受けたこと、産声を上げたこと、初めて言葉を話したこと、立ち上がり、歩き出した日のこと。そのすべてを私は祝福されていた。彼らは私の身の回りの世話もとても楽しそうにしていた。夜中に泣こうが、汚物を処理させようが微笑みながら私の世話をしていたことは覚えている。それ以外あまり記憶はないが、おそらく幸せだったのだと思う。愛を受けることは幸せなことだと、今でも私は疑わず暮らしている。
そんな私だが、人を愛するということは苦手なのだ。というよりも、方法が分からない。両親のように何でもかんでも世話をするというのは、どうも同年代に向けるものではなかったようだ。
「いい加減にしろよ、毎日毎日。赤ん坊じゃないんだよ俺は」
「でも、私はあなたのためを思って…」
「それがうざいって言ってんだよ!」
男というのは難しい生き物だ。プライドが高く、それを低くみられると気が狂ったように激高する。大事にされているのだから、愛情を注がれているはずなのだから、喜んでしかるべきなのに。
「…っ私があなたの将来とか、夢とか応援してるのわかんないの!?」
「だから!俺のやり方があるって言ってんの!毎日朝から晩まで一緒に居られて迷惑なんだよ!」
彼は将来、インフルエンサーになりたいのだという。私たち高校生の間ではYouTuberが大ブームを巻き起こしている。その輝かしい一面だけを見て、あこがれを抱くのも無理はない。しかし、その憧れを現実のものにするには様々な苦労や困難が待ち受けているのが、彼には分らないのだろうか。
「でも何かできることがあるかもしれないじゃん!雑用でもなんでも言ってよ!」
「ああもううるさいな、お前に監視されてると自由じゃなくて嫌なんだよ!」
「なんで?あなたの夢のために必要なことだと思って言ってるのに」
「それがうざいって言ってんだよ!何回も言わすなよ!」
彼は私の目を盗み、動画やゲームに傾倒している。やりたいと言い始めたころはその行為も研究のためだとほほえましかったが、次第にその割合が増え、最後に撮影をしたのは2週間前、最後に動画編集をしたのは3週間前だ。あきらめたわけではないらしい。彼曰く、好きなことをして生きていくものなんだ、と。
「でも、投稿しないとせっかく登録してくれた人が離れるじゃん!」
「そんなことわかってるって!」
「新規登録者も増えないじゃん!」
「だからわかってるっていってるだろ!しつこい!」
なぜ合理的に考えないのだろう。夢は目標には時間や手間も含む様々なコストがある。手放しで達成できるものは夢として掲げない。私は彼の夢のためにアルバイトをし、そのお金で彼の誕生日にパソコンまで買い与えたというのに。私が私を犠牲にしてでも、幸せになってほしいと願ったからこうしたのに。
「…あなたの方がうざいじゃん…」
「は?お前何言ってん」
私は返答を待たず、その辺りの石で彼の頭をおもむろに殴りつけた。勢い余って、とはまさにこのことだろう。声を発さなくなった彼だったものを置き去りにし、私はその場を去った。
彼は私の愛を受けるには器が小さすぎたのだ。私の愛を受け止められなかったのだ。すなわち、彼は愛されるべき存在ではなかったのである。そうでなければ、罪悪感を感じないまま帰路を歩んでいる私は人の心を失ったことになる。そんなはずはない、愛とは等価交換であるべきだ。私が今まで削ってきた自分自身と彼の人生で等価交換としよう。




