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AKANE  作者: 木と蜜柑
第3章  旅編 
30/63

    10話  リストアーニャ

 

 朱音とクリストフは喧騒の中を歩いていた。

「お嬢ちゃん! お一つどうだい?」

 今日は月に数回開催されるリストアーニャの(いち)の日だった。

 屋台で香ばしい匂いを漂わせている串焼きを差し出しながら、男が朱音を引き止めた。

「あ、えーと・・・」

「失礼、わたしのフィアンセは脂っぽいものは苦手なんです」

 クリストフがすっとその間に割って入ると、男はちぇっと舌打ちして引き下がっていった。

「クリストフさん、今の美味しそうだったのに・・・」

 指を咥えながら、恨めしそうにクリストフを見つめる朱音は、リストアーニャの女性が身につける民族衣装に身包んでいる。これは、気を失った朱音を例のごとく風に乗せて今朝方ここリストアーニャまでやって来たクリストフが、早朝から買い出してきた品の中の一つであった。

「あれだけはお勧めできません! あの肉を焼く際に使用しているスパイスが麻薬性の強い木の実なんです」

 ひっと声をあげると、朱音は生唾を飲み込んだ。

「この国は商売の国として有名ですが、規制がほとんどありません。その為、危険なものが多く出回っています。よく商品を見定めて売り買いしないと痛い目をみるんです」

 なんと恐ろしい国だ、と朱音は急に小さくなって歩き始めた。

「それと、もう一つ忠告しておきます。絶対にわたしから離れないでください? いくら美味しい話を持ちかけられても知らない人について行かないこと! いいですね?」

 小さな子どもにでも言い聞かせるかのようなクリストフの言葉に、朱音はぷうと頬を膨らませた。

「何それっ、なんでそう子ども扱いなの」

 困ったように肩を竦めながらクリストフが小声で言った。

「今回ばかりは本気ですよ。言ったでしょう? この国には規制がほとんど無いと。人身売買が平気で行われることでもこの国は有名なんです」

 恐ろしくなって、朱音はクリストフの腕にしがみ付いた。見回せば、誰も彼もが悪人に見えてきてしまう。

 そして恐ろしいものが朱音の視界に入ってきた。

 目の前を横切る荷馬車。後ろには檻が取り付けられ、何人もの薄汚れた子ども達が中ですすり泣いている。

「クリストフさん、あれ・・・」

 恐怖で朱音はクリストフに目線を送った。

「アカネさんの察しの通り、売りに出される子ども達ですよ。多くは孤児や身元不明の者達ばかりです。」

 クリストフは今朝方調達したばかりの真新しいハットを被り直すと、囁くようにそっと朱音の耳元で話した。

「わたし、何があってもクリストフさんから離れないよ」

 クリストフはこくりと頷くと、腕を組みやすいように左の曲げた肘を朱音に差し出した。朱音は大人しく自分の腕をそこに引っ掛けるようにして絡ませると、再び喧騒の中を歩き始めた。

「旦那! どうです、この魔光石は“マルサスの危機”で流出した正真正銘の本物ですぜ。今ならお安くしておきます。美しい彼女へのプレゼントにお一ついかがです?」

 ひょろりと痩せた男が、突然ひょいと二人の前に躍り出た。その手には黒い石がはめ込まれたネックレスが引っかかっている。

「悪いですが偽物を売りつけるならば、もう少し頭の悪そうな客にしてください」

 クリストフが面倒くさそうに痩せ身の男を避けて、朱音をぐいと男から遠ざける。

「なんと人聞きの悪い! 見ててください! 本物ですから!」

 男が首飾りを自らの首に引っ掛け、手をクリストフのハットに翳すと、ふわりと僅かにクリストフのハットが浮かび上がった。

 朱音はぎょっとしてクリストフの頭の上に浮かぶハットをまじまじと見つめる。

 瞬間、クリストフが思いも寄らない行動に出た。痩せ身の男の首飾りを力任せに引っ張ったのだ。

「これをどこで手に入れたんですか!」

「ちょっ、旦那! 乱暴は止してくださいってば」

 いつもは朗らかな笑みを浮かべているクリストフだったが、こんな緊張感高まる表情は見たことが無い。

「クリストフさん!?」

 朱音が止めに入ったことで正気を取り戻したクリストフは、やっと男の首飾りから手を離した。

「・・・失礼」

 痩せた男は慌てて首飾りを庇うと、クリストフから隠すように懐へそれをしまい込んだ。

「いくらですか?」 

 クリストフがベストのポケットから財布を取り出す。意外なクリストフの行動に、朱音も思わず首を傾げた。

「二千ギアでどうです?」

 余程高い値段だったのか、ピクリとクリストフの手が止まり、財布をぱたりと閉じてポケットへとしまい始める。

「待って待って! じゃあ千九百ギア!」

 何事も無かったかのように歩き始めるクリストフに痩せ身の男が慌てて付き纏う。

「ああ! わかった! じゃあ思い切って千八百ギア!」

 クリストフはしっしと男を遠ざける仕草をしても、男は諦めずついて歩く。

「じゃあ旦那、一体いくらならいいんだよ!」

 男がそういうのを待ってましたとばかりに、クリストフはにこりと微笑み、

「千五百ギア」

と言った。

「そりゃいくらなんでも安すぎるぜ!? だって、こいつは本物の魔光石・・・っておい! 旦那!」

 痩せ身の男が売り渋った瞬間、クリストフは朱音をつれたまますっと男がまるで空気にでもなったかのように隣をすり抜けて行った。

「ああ! もう! 畜生っ! 千五百ギアでのんでやる!」

 男が地団太を踏んで叫んだのを聞くと、クリストフはくるりと向き直り、素早く財布から金を取り出すと男に笑顔でそれを握らせた。

「ありがとう、いい買い物ができましたよ」

 男は泣く泣くそのネックレスをクリストフに手渡す。

「ところで・・・、この石、どこで手に入れました・・・?」

 痩せた男の目を伺うように、クリストフは質問した。

「そうだなあ・・・、言ってもいいがタダで話す訳にはいかないね・・・」

 にやりと嫌らしい笑みを浮かべて、男は右手の人差し指と親指を摺り合わせた。

 面倒臭そうにクリストフは財布から札を取り出すと男に握らせる。

「毎度あり! この魔光石ですがね、あっしもある人から譲り受けたんですよ。元々はサンタシのとある地で製造されたものらしいんですが、“マルサスの危機”でサンタシの兵とともにゴーディア国内に持ち込まれた中の一つだという話でさ」

 男の話を目を細めながら聞いていたクリストフは、声を落として訊ねた。

「サンタシのとある地とはどこです?」

 男はちっちと舌打ちをすると、

「こっからは固有名詞が入ってきやすから、追加料金をいただかないと・・・」

 不愉快そうに眉根を顰めつつも、クリストフは仕方なく再び財布から取り出した札を男に手渡す。

「毎度! ある地ってのは、嘗ての砲弾生産の中心地ミラクストーでさ」

 朱音は聞き覚えのある地名にあっと小さく声を上げた。

 朱音の記憶が正しければ、ルイとロランの生まれ故郷の筈だった。

「なるほど・・・。最後に一つ、あなたがこの魔光石を譲り受けたある人とは誰ですか?」

 口の軽い男だったが、急に口を一文字に結ぶと、男は口を開こうとはしなくなった。

 クリストフは一つ溜息をつくと、

「さて、お待たせしてすみませんでしたね。アカネさん、行きましょうか」

と、再び歩みを再開させた。

 しかし、それは朱音にとっては有難いことで、それは街外れの宿屋に置いてきたある人の様子が調度気にかかり始めていたからである。

「ちょっ、旦那!」

 まだ何か用かとでもいうように、クリストフは歩みを止めることなく痩せ身の男をちらりと横目で見た。

「見たところ、旦那達は旅の途中だろ? どうだ、あっしを案内役として雇うなんてことは。安くしとくよ」

 いい金の出所を知ったとばかりに、男がとんでもないことを言い出したので、クリストフはふっと苦笑いを浮かべると、

「いいえ、結構。わたしはこれでも旅慣れてましてね、リストアーニャも例外ではないんですよ」

 きょとんとして朱音はクリストフに手を引かれるまま両側を屋台や出店が立ち並ぶ道の真ん中で足を進めていく。ちょうど昼時ということもあって、道中はかなり混雑していた。

「あーっと、旦那! わかった! 金は要らねえ! それならどうだ!」

 クリストフはうんざりしたように足を速める。

「どうしてわたしが、見ず知らずの怪しげな男を連れて歩かなければならないのですか? そんなに暇なら他の旅人につるみなさい」

 冷たくあしらわれた男は、とうとうクリストフの腕に縋り付いて頭を下げ始めた。

「旦那ったら、そんなこと言わねえで、頼むよ・・・! あんた達なら信用できそうだから正直に話す! あっしはガキの頃リストアーニャの人身売買で奴隷として買われた孤児なんだ・・・。どうしてもこの国から出たい・・・! けど、国を出るには検問所を突破しなきゃなんねえだろ? あそこを通過するには案内役の振りをするしか方法がねえんだ・・・、頼む・・・!」

 男の言うことは満更嘘でもなさそうで、男は証拠として、リストアーニャの人身売買で奴隷となった証である手首の刻印をこっそり二人に見せた。

「あなたの境遇には同情します・・・。しかし、わたし達も訳有りの旅を続けているんです。これ以上の面倒は背負いきれません。申し訳ないが、他をあたってください」

 そうはっきりとクリストフに断られても、まだ尚諦めきれない様子で、男は懸命に二人に頭を下げ続けた。

「無理を言ってるのは承知だ! でも、あんた達を逃したらきっとあっしは二度とこの国を出られねぇ・・・。この国は皆金の亡者ばかりだ。な、哀れな男を助けると思って、頼む!」

 この国では逃亡した奴隷を捕まえた者には、奴隷所有者から謝礼金が下りることになっている。男が言いたかったのはずばりそのことだった。

 この男は、どうやら逃亡中の奴隷の一人のようだ。

 あまりに必死な男の様子に、朱音はだんだん男が可哀相に思えてきた。ここで男を見捨てて去ってしまうにはあまりに薄情な気がした。

「クリストフさん、可哀相だよ、検問所を出るまでならいいんじゃない?」

 朱音の言葉に困惑したように、クリストフは、

「しかし・・・」

 と、言葉を続けた。

「何事も無く検問所を通り抜けることができたらいいですが、仮に彼が逃亡中の奴隷だとわかったら、大変なことになります」

 そしてその言葉の後は、朱音にそっと耳打ちした。

『アカネさんの正体まで調べられでもしたら収集がつかなくなってしまいます』

 青くなって、朱音はしゅんと下を向いてしまう。

 クリストフの言うように、もし検問所で朱音の正体がばれでもしたら、きっとこの旅はここで終息することとなり、朱音はゴーディアに無理矢理連れ戻されることとなるだろう。それに、朱音を無断で連れ出した罪で、クリストフもただでは済まされない筈だ。

 ただでさえ余計なことに関わらせ、これまでにも多大な迷惑を掛けまくっているクリストフに、これ以上の迷惑は掛けられない。

 そう思う反面、目の前の哀れな男が朱音自身に重なって見えた。

 朱音が元の世界に戻りたいと思うように、リストアーニャでずっと捕らえられてきたこの男にもきっとどこか別の故郷があって、帰りたいと思い続けてきたに違いない。

 そう思うと、朱音にはそう簡単に男を切り捨てることはできなかった。

「それはよく分かってます・・・、クリストフさんにもこれ以上迷惑を掛けられないことも・・・。でも、無理矢理この国に連れて来られ、閉じ込められてきたことを思うと、なんとかできないかなって・・・」

 朱音の悲しげな目を見て、クリストフは呆れたように肩を落とした。

「貴女がそこまで言うのなら、仕方無いですね・・・」

「ほ、本当かい!? 有難う! 旦那! お嬢さん!」

 目に涙を浮かべて呼び跳ねる男に、クリストフは釘を刺した。

「いいですか、検問所を出るまでですよ? それに、わたし達も危なくなったらそのときはあなたとは他人の振りをします。それでもかまいませんか?」

 男は何度も大きく頷いた。

「おお! 構わねえさ! 有難う! 本当に有難う!」

 思わぬところで旅の共が増えることとなり、クリストフは困り顔で笑いながら朱音の美しく整った横顔をちらりと見やった。クリストフはどうも朱音にはついつい甘くなってしまう自分に苦笑を漏らした。

「あっしはボリスってんだ。この恩は必ず返すからよ、そうだ! もし無事に検問所を通り抜けられたら、魔光石を譲り受けた相手の名前を教えてやる! 約束だ!」

 痩せ身の男、ボリスは軽快に二人の後をついて行く。

 クリストフは咳払いを一つすると、もう一度ハットを深く被り直した。 




 

「最後まで任務を果たせず申し訳ありませんでした。ヴィクトル陛下にこの書状をお渡し頂けると有難い」

と、アルノはリストアーニャの船着き場で、ヴィクトル王宛てに認めた文をフェルデンに託した。

「書状は確かに預かった。おれの怪我のせいでそれでなくとも帰還が遅れてしまっている。先に行くことを許してくれ・・・。ヴィクトル陛下にはおれからうまく伝えておくよ」

 フェルデンはアルノの丸い手をしかと握った。

「世話になったな。リーベル号の修理が終わったら、必ずディアーゼ港へ戻ってきてくれ」

 そのすぐ隣で、ユリウスがアルノに手を差し出す。

「アルノ船長、フェルデン殿下から嵐の夜の話を聞きました。失くしたものが多かったけれど、貴方の腕は失われてはいません。いつの日か、同じサンタシの同志として共に働ける日を待っています」

 力無く微笑むと、アルノはユリウスを握るだけの握手を交わした。

 

 二人は、リーベル号の修繕におそらく長期間を有するだろうとの判断で、ここからは陸地を通っての進路をとった。

 世話になったリーベル号の乗り組み員達や船長と挨拶を交わすと、二人は旅を再開させた。

 ボウレドで出会ったフレゴリーの腕が余程良かったのか、完全では無いものの、フェルデンの肩の傷は格段に良くなっていた。


 騒がしい(いち)が街の中心地で開催され、リストアーニャは多くの商人や買い物客で溢れ返っていた。

「それにしてもすごい人ごみですね・・・」

 小柄のユリウスは人ごみが苦手だった。この身長のせいで他の者以上に人の波に飲まれやすそれで何度も痛い目を見てきたからだ。

 そして今回もそれは同じくして、既にユリウスを人ごみで酔わせていた。

「おぶってやろうか?」

 長身のフェルデンが見下ろしながらユリウスにそう言うと、ユリウスは目を吊り上げてつっけんどんに言った。

「おれよりちょっと身長が高いからって馬鹿にしないでください! いいですか、確かにおれはちょっとばかし身長は低い! けど、男としての器の大きさなら、殿下にも負けませんから!」

 ふんっと鼻を鳴らす小柄な部下を見て、フェルデンはぷっと吹き出した。

「ほら、見てください! 今だって何人かのレディーがすれ違い様におれを見てましたよ? やっぱりおれの男らしさは外面にも溢れ出てるんですよ」

 はいはい、といい加減な返事をしてフェルデンはもの珍しい屋台に目をくれる。

 美しい石を磨き繋げてアクセサリーとして陳列した店、リストアーニャの民族衣装で用いられる鮮やかな手染めの布々を売る店、旅に必要な小道具を売る店、中には怪しげな薬草を陳列する店まで。

「ちょっと、殿下ってば、聞いてます??」

 怒ったユリウスがフェルデンの顔を見上げたとき、フェルデンの足はぴたりと止まった。その視線はある一点をとらえたまま動かない。

「殿下?」

「あの男・・・! 間違いない・・・!」

 突如行き交う人々を押し退けて走り出したフェルデンの背中を、慌ててユリウスが追う。

「殿下! ちょっ・・・! 待ってください!」

 混雑した中で無理矢理押された人々の中から、時折「きゃっ」という悲鳴や「何すんだ」という声が上がる。それでもフェルデンは視界に一切他の物が入っていない様子で、どんどん人ごみの中を掻き分けていく。

 ユリウスはフェルデンを見失うまいと必死だった。この人ごみで逸れてしまったら、探すのに一苦労するだろうことが予想できたからだ。

「殿下~~~~!!」

 ユリウスはフェルデンがどうしても持っていくと言って聞かなかった棺の入った木箱を荷車に乗せて引いていたものだから、余計にこの人ごみを進むのに手間取っていた。

 フェルデンはついさっき人ごみの中で確かに見た男を見失い、きょろきょろと辺りを見回した。

 しかし、その人物はそこにはもう見当たらなかった。

(船の中で何度かすれ違ったときに見た顔、あれはロジャーに違いない・・・! あの男、生きていたのか!?)

 まるで幽霊でも見たかのような気分に陥り、フェルデンは男立ち止まったまま考え込んでいた。

「殿下! やっと追いついた・・・。もう、突然走り出して、一体どうしたって言うんですか?」

 息を切らせながら、ユリウスが駆け寄る。しかしその後ろには、ごろごろと荷車もしっかりと引いている。

「さっき、人ごみの中であの男を見かけた・・・」

 フェルデンの表情が明らかに動揺していることに気付き、ユリウスは彼が何か昨晩の嵐に関わる重要なものを目撃したことを悟った。

「あの男とは?」

「ロジャー。アルノの古い友人で昨晩の嵐で海に投げ出され、死んだ筈だった」

 ユリウスは初めて聞く名に頭を傾げる。

「船長の友人?」

 こくりと頷くと、フェルデンはユリウスに向き直り説明を付け加える。

「ロジャーは秘密裏にアルノに願い出て、ある王族の姫との駆け落ちの最中にリーベル号に乗船していたらしい」

 フェルデンの言っていることが一体何を意味するのか、ユリウスにはすぐに理解できなかった。

 それをもどかしく思ったのか、フェルデンは口調を早めた。

「昨晩、おれがアカネに会ったと話しただろう? その時に、暗がりの中で何者かが現れてアカネを連れ出して行った。そいつは、アカネの名を口にしていた。それに、自分はアカネの友人だとも・・・」

 ユリウスはフェルデンの茶の瞳を見つめ返した。そこには、もはや一点の曇りもなく、真実だけを追い求める強さが宿っていた。

「つまり、こういうことですか。そのロジャーという男と、殿下の前に現れた暗がりの中の男は同一人物だと。そして、そのロジャーこそが貴方が探しているアカネという人に何らかの関係を持っている」

 ロジャーがこの昨晩の嵐で死んでいなかったとなると、朱音も生きてすぐ近くに居る可能性が高い。

 フェルデンはロジャーなる男を目にしたことで、朱音にまた一歩近付いたことへの強い手ごたえを感じていた。

「きっと、この国のどこかに、それもおれ達のすぐ近くにアカネはいる!」

 

 しかし、ユリウスはまだ気付いてはいなかった。

 ボウレドで出会った風使いのクリストフ・ブレロが、まさかフェルデンの言うロジャーなる人物と同一人物だという事実を・・・。      






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