新婚近衛騎士の困惑〜国の重鎮たちが愛妻家過ぎる件〜
読んで頂き、ありがとうございます。
感謝…っ!圧倒的感謝……ッッッ!!!
思いつきで書きました。後悔しかないです。
騎士団に入団してから苦節5年、20歳にしてようやく近衛騎士に昇進したハイルはその日の内に幼馴染みで婚約のミーシャと結婚式をあげた。
友人や同僚からからかい混じりの祝福を受け、照れながらも「王国一、いや世界一の嫁を迎えられて俺は幸せ者だよ」と全力で惚気に惚気けた翌日。ハイルは重鎮の会議か違反者の懲罰会議が行われる会議室に呼ばれていた。
ハイルは入団してから真面目ながらも気さくで団員とも良好な関係を築いていたので呼び出しを受けるような事に心当たりは全く無い。緊張しながらも会議室の扉を叩いた。
「近衛騎士、ハイル参りました!」
後ろめたい事はないとハキハキした声で名乗ると「入れ」と声がし、扉が開かれ中に招き入れられる。
中には魔導騎士団団長のガスト、近衛騎士団長のベイル、宰相のアイン、更には国王陛下であるヨハネスの4人が待ち構えていた。
「揃いましたので陛下、始めさせて戴きます」
「うむ」
アインが開始の了承を取るとヨハネスが重々しく頷く。ハイルに向き直るとアインは真面目な表情で口を開いた。
「近衛騎士ハイル。まずは昨日妻を迎えたようだな。おめでとう」
「は?はぁ…ありがとうございます」
突然の祝福に驚いているとアインは目を見開き大声で告げた。
「しかし!最中に言った自分の妻が世界一の嫁と言い切った事に関しては聞き捨てならん!」
「……はぁ!?」
嫁を貶されたと思いハイルの目付きが鋭くなる。婚約してから10年も連れ添った最愛の妻を貶されたともなれば近衛騎士という立場を投げ捨てでも抗議するほどミーシャの事を愛しているのだ。
「よいか?世界一の妻というのはだな、私の妻であるリーチェのような愛らしく、心優しい者の事を指すのだ!」
……何か宰相がほざき始めた。
するとガストが机を叩きながら立ち上がり手を挙げる。
「異議あり!世界一の妻となれば我が妻であるソフィアほど最適な者は居ないだろう!あの賢く、夫である私を立てながらも譲れない所は突き通す芯の通った者こそ世界一の妻だろう!」
すかさずベイルが立ち上がり反論を始めた。
「ふざけるな!世界一の妻は俺の嫁であるティアを除いて誰がいると言うのだ!女性ながらも騎士として身を立て、王妃殿下直々に側付きを命じられる程の妻が至高に決まっているだろう!」
ベイルの反論にガストが喰らいつく。呼び出されたハイルを取り残して。そう、本人を無視して口論が続く。
「ふざけているのは貴様だろう!私の妻は新たな魔術を開発出来る程の天才だぞ!その魔術で何度王族を狙った乱波者を退けたと思っている!」
「魔術だけが乱波者を退けている訳では無いわたわけ!何よりその功績は現場で対処している団員に掛けるべきだろうが!」
「それはそうだな」
「分かればよろしい」
なんだコイツら。ハイルはこめかみ辺りがひくつくのを抑えるので必死だ!頑張れ!
「聞くに耐えんな。リーチェ程天使のように愛らしく、仕事で疲れた私を癒やしてくれる存在こそ最上であろう」
宰相が団長二人にさらなる燃料を投下する。もう帰っていいか本気でハイルは悩みだした。
「共に鍛錬し高みを目指せるティアこそ世界一だ!」
「酒を交わしながらでも魔導について語り合えるソフィアの方が世界一に相応しい!」
「心も体も癒すリーチェに敵うものか!」
なんなんだこのオッサン共。斬り捨てても許されるかな?ハイルの目が据わりかけたその時、ヨハネスが手を挙げるとオッサン共が黙る。最初から黙っていてほしかったとハイルは思わずにはいられない。
「そなたらの言い分はよくわかった」
スッとヨハネスが立ち上がる。そして手を握りしめるとよく通る声で告げた。
「だが王妃である我が妻、ローズを差し置いて何を言っておるか!」
国王、お前もか。お前までそちら側なのか。そもそも何故俺は呼ばれたのか。ハイルの堪忍袋は臨界点ギリギリだ!
「よいか、この国においてローズは我を除いて最も位が高く、気品があり、優雅で慈愛に満ちた最上の妻である。そうで無ければ王妃になれるはずが無かろう!」
「陛下と言えどこれだけは譲れませぬ!世界一の妻はリーチェでございます!」
「そうですぞ陛下!ソフィアこそが世界一の妻なのでから!」
「陛下!ティアが世界一の妻であることは揺るぎなき事実でございます!」
「「「「あぁん!?テメェら表に出ろやゴルァ!」」」」
「帰っていいですか?」
なんなんだこのカオス空間は。ハイルが頭を抱え、いよいよ腰に吊るした剣に手を掛けようとした時、背後の扉が勢い良く開かれた。
驚いたハイルだが、そこは近衛騎士。賊かと思い警戒しながら柄を握り振り返るとそこには先程から名前が上がっている魔導騎士団長の妻、ソフィアと近衛騎士団長の妻であるティア、宰相の妻リーチェ、そして王妃ローズが入ってきたのである。
「王妃殿下!?失礼いたしました!」
予想外の人物にハイルが慌ててひれ伏そうとするもローズ自ら「構いません。あなたは楽にしなさい」と声を掛ける。
「あなた!バカは魔術だけにしてくださいと言ったはずですよ!帰ってお説教です!騎士様、うちの旦那様が失礼しました。家でよく言い聞かせますのでこれで失礼しますね」
赤くなったソフィアがガストを連れ帰ると、
「ガストお前!陛下に何を言ってやがる!惚気は嬉しいが他所でやるなって言っただろ!こってり搾ってやるから覚悟しろ!ハイルはそのまま帰宅して明日に備えろ!いいな?」
さらりと自分も惚気るティアがガストを連行し、
「旦那様。私も愛してますよー。今日も美味しいごはんを作ったので一緒にたべましょー。騎士様、失礼しますねー」
どこかズレているリーチェが続き、
「陛下!また新婚の近衛騎士をダシにくだらない惚気合戦をしていらっしゃるのですか!巻き込まれる騎士が可哀想だから止めるよう何度も申し上げたではありませんか!今日こそは許しませんからね!」
羞恥のせいか、顔を赤くしながらヨハネスを指差しながらローズが吠える。
「い、いや落ち着けローズ。我はこやつに夫婦円満の秘訣をだな」
「言い訳は結構!ハイル様、陛下に変わって謝罪いたします」
「殿下!?私の様な者に貴方様が謝らないでください!構いませんから!」
頭を下げようとするローズにハイルが狼狽えると「それでも謝罪は受け取ってくださいな」と微笑むとすぐにヨハネスを睨みつけ、連れて行こうとした。
ヨハネスも観念したのか出ていこうとするとふと思い出したかのようにハイルの方を向く。
「ハイル。近衛になる際、我に剣を捧げたがその剣を今一度お前に返す。近衛は続けてもらうがお前の剣はお前の妻に捧げろ。惚れた嫁一人護れん奴に近衛は務まらんからな」
ヨハネスはそう言って出ていった。一人残されたハイルは心の底から思った。
「近衛騎士になるの、間違えたかなぁ」
構成力が足りず申し訳ありません…!