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44 匍匐前進

 チュドーン!


 パン、パパパパンッ


 本日の天気は土煙による曇天、時間によっては銃弾の小雨。

 ライフルの弾と野戦砲に気を付けて、匍匐前進をしよう。


「オラオラ、ちんたら進んでるんじゃねえ、とっとと進め!」


 100人の訓練生に、赤、青、お色気の3騎士が、銃弾の雨の下を、ヒイヒイ言いながら匍匐前進している。


 今日の連中の訓練内容は匍匐前進だ。


 冷たい雨によって地面は泥濘になり、泥だらけになりながら彼らは進んでいく。

 雨と泥で体が凍えるが、それ以上に命の危機で、魂まで凍り付くように凍える。



 以前は俺に反抗的だった連中も、今では顔を真っ青にして震えながら進むだけだ。


「頭を上げ過ぎると、穴が開くぞ!」


 ヒュンッと風を切る音がすれば、俺の撃ったライフルが、青髪の耳近くを通り過ぎていく。


 それに対して、青髪は沈黙。

 恐怖の悲鳴を上げることがなければ、俺に対して文句の罵声を上げることさえできない。



 ドーンと音がすれば、野戦砲が盛大な音を立て、大地に穴を作りだす。


「修正射、右に5度。さっさと回せ!」


 今回の匍匐前進の訓練には、チビ助も協力してくれている。


 チビ助は、この国の宮廷魔導士たちとつるんでいろいろしているが、その中のひとつが野戦砲による砲撃だ。


 この野戦砲は、以前帝国の地下秘密基地から回収してきたものだ。


 ただし現物があっても、運用できる人間がいなければ使い物にならない。


 運用する人間だが、この時代は四則演算ができる人間はかなり珍しく、野戦砲に必要な弾道計算となると、高位の知識人でないとできなかった。

 幸いなことに、宮廷魔法使いは高位の知識人であり、彼らの一部を使って砲兵を作り出した。


「ルコット様、次弾装填完了しました。いつでも修正射行けます」


「よろしい、戦場に偉大な神の御業を見せてやろう。発射だ」


「ハッ!」


 野戦砲とは戦場の神。

 チビ助が指示すれば、再び盛大な爆音を轟かせて、砲弾が発射された。


 地面に大穴が開いて、再び大地が耕される。

 今回は歩兵相手の訓練なので、人間に当てないように気をつかっているが、敵陣地に落とせば、それだけで何人、何十人の兵士を爆殺できる。



 パンパン。


 さらに匍匐前進している連中の頭上にライフルを撃っているのは、俺以外にもレインくんとレイナちゃんの兄妹がいる。


「レイナちゃん、もっと下を狙って撃とうか。あまり加減しすぎると、奴らが調子に乗る」


「わ、分かりました。でも当たったら……」


「気にしなくていい。訓練中に死亡事故が起こることは、たまにある」


「……はい」


 よしよし、いい子だ。

 俺の指示で、レイナちゃんの射線が下を向き、訓練生たちの傍を弾が飛ぶようになる。


「命の危険を感じないと、人間って本気にならないからな」


 訓練生たちは表情を殺し、泣き喚くことも、叫ぶこともせず、ただ匍匐しながら前進するだけ。

 皆目がいい感じに死んでいて、感情が抜け落ちている。


 こうやって、徐々に兵士としての面構えになっていく姿を見ていると、彼らを指導している俺も嬉しくなってしまう。



「ギャア、ケツが、ケツがー!」


 なお、この日の訓練で、不幸にもライフル弾が命中して、負傷した訓練生が出てしまった。


 負傷した訓練生にとっては不幸なことだが、他の訓練生にとっては、いい教訓になってくれた。


 俺は訓練後に、訓練生たちを集めた場で一堂に告げる。


「いいか、今回は怪我で済んだが、訓練だからと舐めた態度でいると、本当に死ぬぞ」


 負傷してくれた彼のおかげで、残りの訓練生たちは、さらに引き締まった。


 赤、青、お色気も、もはや俺に対して舐めた態度も取ることなく、黙って頷く。

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