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37 創世魔法“滅びの為の滅び”

『今この世界に新生の世を創生するために、我は創世の主となりて世界に再び望まん、我は天地万物尽くを司り新生の神の御座の主となる、天地開闢の法は我が右手にあり、天地新生の法は我が左手にあり、万有の世よ我は尽く世界に命ずる、今新生の世を具現せんために古き世を滅ぼす、諸々よ新生なる世界の到来に歓喜せよ、諸々よ古き世界は灰燼に消え去り滅びの時を迎えよ、新たな天上の主たる我は命ずる、世界よ滅びの時が訪れた、今新たなる世を創生するために古き世は尽く滅び去るべし』


 ポエムを歌っているようで、恥ずかしい。

 これだから前時代魔法オールドは嫌いだ。


 俺は上空1万メートルの世界から落下していく中、創世魔法“滅びの為の滅び”を詠唱した。




△ ◇ △ ◇ △ ◇ △ ◇




(リゼ視点)


 世界が歪んだ。


 自分の前と後ろに、自分が存在し、自分がいくつにもダブったように見える。


 世界は赤と白と黒のみが存在するようになり、それ以外の色が失われた。


『長いまどろみを終え審判の刻は目覚める

 目覚めよ今終焉の刻が来たり』


 世界を歪めるほどの魔力が場を支配し、世界の理が外れかける。


 目の前に君臨する老王は、もはや王の威厳などかなぐり捨てて、頭を抱え込んで地面に蹲っていた。


『息絶えた深紅と漆黒の大地

 焼けただれた大地を穿つ慟哭

 鳴り響く足音の名は永遠の絶望』


 王を守るべき近衛たちも跪き、神かあるいは悪魔に祈りを捧げるように、大地にひれ伏す。


『罪悪燃ゆる星

 蠢く闇

 終焉に降る闇の雨

 絶望の黒い風

 汚泥へ還る大地』


 歓喜に打ち震えていた老人も、魔法に対する狂気を吹き飛ばされて、地にひれ伏す。


『終わりへと廻る時計』


 これまで世界を歪めていた魔力が、さらに変質していく。


 私の後ろで控えている、レインとレイナも、もはや立っていることができず、頭を抱えていた。


「皆、知るといい。これが創世魔法”滅びの為の滅び”。

 始まりの魔法使いが自らの体と共に、旧世界を滅ぼした魔法である!」


 皆が怯え跪き、蹲る中、私はその場にいる全員に吠えた。


 もっとも、世界の法則が狂ったこの場所で、私の声など誰にも聞こえていないだろうが。


『牢獄を解き放たれた愛おしき絶望

 牢獄を解き放たれた残酷な希望』


 次の瞬間、天から闇が落ちてきた。


 それを闇と形容したが、しかし闇と呼んではいけない何かだ。


 ただ見ているだけで分かる。

 あんなものが世界に存在していいわけがない。


 そんな闇が、天より真っ逆さまに落ち、王都の近くに存在した山を呑み込んだ。


 音も、光も、温度も感じない。



 だが、山があった場所には、その存在を示す土が消え去り、後には何も残らなかった。

 その代わりに、巨大な黒い穴が出来上がっている。

 まるで世界の底まで穿ったような、黒い穴だ。


 この穴の最奥に、何が存在しているのか、それは誰も知らない。

 過去にこの魔法が使用された時にも、同じ穴が作られたが、大戦時代の科学力をもってしても、底に何が存在しているのかは解明不能な、未知の領域だった。




「諸君、見たであろう。

 これが魔王と呼ばれた、大賢者グランドマスターアルヴィス・ガイスターの魔法だよ」


 魔法の終了と共に、世界には再び音と光が蘇り、色を取り戻した。

 私はこの場にいる全員に宣言した。



「ああああ、あんなものが世界に存在していいわけがない!」


「魔王、魔王だと!?あれはそんなレベルで済ましていいものではない。もっと冒涜的な何かだ!」


「いあ、アアアーッ!」


 しかし残念だ。

 せっかく創世魔法が使われた瞬間だというのに、私の周りにいる連中は、どいつもこいつも正気を失って泣き叫んでいる。


 小便や脱糞までしている者がいるが、老王もその中の1人だ。

 王などと言っても、所詮はただの人間。


 しかし、戦場で恐怖体験をすれば、誰でも一度ならずすることなので、珍しい光景ではない。

 酷いものだと、精神がおかしくなって、ただ喚くだけの人形になり果てる者もいる。



「やれやれ、これは連中が冷静になるまで待たねばならんか」


 事前の打ち合わせで、戦友に創世魔法” 滅びの為の滅び”を使わせたが、どうやら刺激が強すぎたようだ。


「うっ、うううっ」


「レイナ、大丈夫だ、大丈夫だから」


 刺激の強さは、レイナも同じだったようで泣いている。

 あと、下から雫が出ているが、それに関しては見なかった事にしてやろう。


 同じ女として、せめてもの情けだ。



 そんなレイナを兄のレインが抱いているが、こいつらは相変わらずベタベタしてばかりだ。

 だが、こいつの方が案外精神がタフらしい。

 誰もが正気を失っている中で、こいつだけは妹の心配をしていられるのだから。

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