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20 実習訓練

 本日もレインくんとレイナちゃんを連れて、戦略魔導歩兵としての訓練を行っている。

 この時代では、自分の身は自分で守れないと話にならない。


 と言うことで、以前渡した演算結晶の使い方を、軽くレクチャーした。


「飛んでる、本当に飛んでるんだ!」


「凄い、街があんなに小さく見える」


 その結果、2人は空を飛んでいる。


 空を飛ぶだけなら演算結晶があれば可能で、魔導甲冑は必要ない。

 2人は初めて空を飛んで興奮し、周囲を見回している。


 初々しくていいな。

 初めて空を飛べた人は、いつもこんな反応をする。

 見ていると嬉しくなるな。


「2人は高いところがあまり気にならないようだし、戦略魔導歩兵としての適性は結構あるな」


 高いところが、完全にダメ言う人間もいる。

 空を飛べるだけの魔力があっても、高所恐怖症では戦略魔導歩兵は務まらない。


「とはいえ、本来であれば魔法の使用は、訓練の後半で行うべきものだがな」


 こう指摘するのはチビ助先生。


 正規の軍隊訓練の場合、演算結晶を用いた魔法の使用は、訓練の後半で行われる。

 前半で行われるのは、ひたすら体力を鍛える訓練。


 軍人は体力がなければ始まらないので、頭の中身が筋肉一色になるくらい、体力を付けなければならない。



 他の事は、基礎になる体力がついてからだ。

 魔法を扱って戦う戦略魔導歩兵とて、例外でない。



「今の俺たちは軍人じゃないし、正規の訓練通りにやってる余裕がないからな」


「そうだな。それでも可能であれば、一か月間かけた行軍訓練を行いたいものだが」


「ソウダナー」


 戦略魔導歩兵訓練の定番、地獄の一か月行軍訓練。

 あれを通過した人間は、訓練を指導する教官を殺したくなる殺意に芽生えるので、軍人として必須の訓練だ。


 皆の目が生き生きとして、兵士らしい目つきにかわる。


 その後、死刑囚を使った銃殺刑を経験させれば、一端の兵士になる。




 今は空から見える景色に浮かれているレインくんたちだが、そんな兄妹のこれからを、俺とチビ助で相談する。


 もちろん、彼ら2人には立派な戦略魔導歩兵になってもらいたいので、地獄の行軍訓練も、銃殺刑の執行も、どこかで経験してもらわなければならない。




「うわああああっ、オークだ、オークの群れが出たぞ!助けてくれー!」


 なんて考えていたら、地上から悲鳴が起こった。


「どうしたんだ?」


 地上を見ると、武装した冒険者のPT(パーティー)が森から出てきて、大慌てで街へ向かって逃げている。


 森の中は見通しが悪く、上空からでも視界を確保するのが難しい。


 だが、それから待つことなく、冒険者PTの後を追いかけるオークが現れた。


「ブモー」


 体長2メートル以上の、2足歩行する豚。

 手に巨大な斧を持って、ブーブー鳴いている。



「2人とも、あれを仕留めてみようか。ただし冒険者には当てないように」


「了解」


「分かりました」


 いい的が現れたので、ここはレインくんとレイナちゃんの、射撃訓練の的にしてしまおう。



 2人は高度をある程度下げて、オークの傍に近づく。

 空中でライフルを構えて、それから引き金を引いた。


 パンパンッ。


 魔導ライフルに比べて、2人の使うライフルは火力に劣るものの、それでも銃火器の火力は圧倒的だ。


「ブ、ブモォーッ」


 オークの体に立て続けに銃弾がめり込み、さらに頭を貫通する1発。


 オークは、頭上にいるレインくんたちに気づく前に絶命し、地面に倒れ伏した。



「やった」


「私たちでも、オークを倒せるなんて」


 オークが死んだことで、ホッとするレインくんたち。



「馬鹿者、周辺を警戒!

 敵を仕留めた後に、警戒を緩めた隙を狙われるな!」


「「は、はいっ!」」


 チビ助先生が大激怒。

 戦略魔導歩兵は、空中を飛行するため、地上の敵の意識外から奇襲しやすい。

 ただし、敵を倒した後に気を抜くのが一番危険だ。


 特に、その場にとどまって浮かんだままだと、敵の伏兵に狙撃されることがよくある。


 チビ助先生の大激怒で、レインくんとレイナちゃんは慌てて、空中を移動し、周辺を警戒する。



「戦略魔導歩兵の基本は、高速移動しながらのヒット&ウェイにある。

 今のお前たちでは、空中で止まったままの射撃しかできんが、いずれは移動しながらの射撃訓練もしてもらう」


 チビ助先生が、本当に先生らしくしている。

 さすがは幼女先生だ。




 その後、レイン君たちが仕留めたオークの後から、さらに4体のオークが出てくる。


「訓練を続行」


 チビ助先生が指示すると、レインくんたちは再びライフルを構えて、オークを射殺していく。


「遅い、グズグズするな。弾倉カートリッジ交換にいつまで時間をかける!」


「す、すみません!」


「謝るくらいなら、とっとと交換を終わらせろ!」


 途中ライフルの弾が尽きてカートリッジ交換となったが、普段訓練している地上と違い、空中という環境のせいで、レインくんが手間取っていた。



「ブモオオーッ」


 そして、一方的にライフルの的にされていたオークたち。

 さすがに、何発も銃撃されたので、空にいる俺たちのことに気づいた。


 空を飛ぶ手段のないオークは、手に持っている斧を空へ放り投げた。

 だが、空中にいる俺たちに届く前に重力に負け、斧は落下していく。



「チッ、ライフルすら持たん魔獣モンスターが相手では、命の危険がなくて危機意識が芽生えんな」


 空にいれば安全。

 安全過ぎるせいで、チビ助先生が物凄く不機嫌になる。


「そうだな、向こうがちゃんとした反撃をしてこないと、危機意識が芽生えなくてダメだな」


 俺もチビ助先生と同じ考えだ。

 空中にいれば安全。そんな温い考えで育った兵士など、戦場ではただの的。

 一発撃たれて、お終いだ。



「レインくん」


「レイナ!」


 ということで、俺とリゼ先生は、射撃に夢中になっているレインくんたちを呼ぶ。


 魔導ライフルの銃口を、2人に突き付けた状態で。


 パン、パン。


 そして問答無用で魔導ライフルの引き金を引けば、実弾がレインくんたちの傍を通過する。


「なっ!」


「きゃあ!」


 実弾が側を飛んで行ったことに、慌てる2人。



 特にレイナちゃんの方は、バランスを崩してしまい、空中から落ちる。


 演算結晶によって、現代魔法モデムを扱う戦略魔導歩兵だが、魔法への意識が足りなくなると、魔法の効果が切れる。

 空中に浮かんでいる場合は、地面に向かって落下だ。


「キャアアアーッ!」


「レイナ!」


 空から落ちるレイナちゃんを、大慌ててレイン君が助けに入る。


 レイナちゃんを追いかけて、地面の方向に向かって、全力で移動する。


「ノロマどもめ」


「空を飛ぶこと自体初めてだから、こんなものだろ」


 このままいけば、レイナちゃんは地面に激突。

 レインくんもレイナちゃんしか見えてないので、あの速度だと地面に激突する。



 このまま見捨てるという選択肢もあるが、俺とチビ助先生は2人を助けるために動いた。


「未熟な兵士など、見捨てていいのだが」


「まだ訓練途中だから、仕方ないな」


 戦略魔導歩兵の訓練でも人死にが出ることはあるが、今回は助けることにした。



 地上に激突しそうになっている兄妹より、早く移動する。


「レインくん、ストップ」


「グエッ!」


 俺は地面に向かって全力を出していたレインくんを掴んで、強制的に空中停止させる。


「このグズが、集中力が足りておらん!」


「リ、リゼ先生!」


 一方落下していたレイナちゃんも、チビ助先生が空中キャッチして、お姫様抱っこした。


 チビ助先生が男前すぎる。

 見た目は、ただの幼女だけど。





 その後、俺とチビ助先生は、レインくんたちにダメ出しをしていく。


「いいか、空中にいるから安全などと言う考えは絶対に持つな。

 狙撃に集中し過ぎると、周囲のことが見えなくなる。さっきのようにな」


 俺とチビ助先生が攻撃したことだ。


「は、はい……」


 味方だと思っている相手からいきなり撃たれて、2人は相当焦っただろう。


 確かに味方からいきなり攻撃されるという事態は、想定できるものではない。


 しかし、空にいても攻撃されることがある。

 そのことを恐怖と共に理解していないと、必ず次も同じ失敗をしでかす。


 チビ助先生がガミガミと怒鳴りながら、レインくんたちに教え込んでいった。




 ちなみに俺は、地上でまだ生き残っているオークを落ち殺しておいた。


 未だに冒険者PTが追い掛けられていたので、助けておいた方がいいだろうという緩い判断で助けた。


 彼らは同業者であっても味方ではないので、俺たちが一方的に救う義理はない。


 なので、かなり緩い判断だ。

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