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第2章 揺れ動く気持ち


貝塚との再会を果たした翌日、私は何度も鏡と向き合っていた。


「やっぱり、良いな。私って、どんな髪型でも似合うのかも!」


昨日から鏡とにらめっこ状態だ。



「あっ!やばい…仕事、行かなきゃ!」



私が店に到着した時には従業員の駒井さんと笹倉さんが店の清掃と準備に取りかかっていた。


「駒井さんと笹倉さん、おはようございます!」

「店長おはようございます!」


2人の声は活気に満ち溢れていた。


「店長、美容室行かれました?」


駒井さんが私の髪型に真っ先に気付いてくれた様で私は頬を緩ませた。


「分かる?昨日行ってきたわ」

「そうなんですか?良く似合ってますよ。普段からも良い感じに仕上げてたけど今回は特に良いですね!」


暫くこの話で盛り上がったとこで営業時間の開始。


売り上げを伸ばすべく、接客の応対には従業員や店長である私も普段から訓練をしている。

それを怠ると、店の雰囲気が一気に落ちるのは確実。


今の現状を維持しなければ。


お陰で売り上げは好調だった。



お昼の休憩時間にと私は思わず美容室【つむぎ】の様子を見に足を運ばれた。

私の店の向かい側に美容室があるというのも凄い偶然的な事で。


と、私は鏡越しから中を覗く。


あれ?貝塚居ない?

私は貝塚の姿を目で追っていると、レジ辺りで会計している貝塚の姿があった。

私はお客さんのお見送りをする為に店の前に出てきた貝塚と、ぱっと視線が合った。


そしてお見送りを終えた貝塚は私の方へと駆け寄り、


「どうしたの?髪型に不満でもあった?」


失敗でもしたのかと深刻そうな表情で貝塚は私を見ていた。


「ううん、違うよ。ただ私のお店が貝塚とこの美容室の向かい側にあって。ほらあそこの雑貨屋【幸せ運び屋】ってお店!」


私はお店の方へ指を指すと貝塚は視線をお店へと向ける。


「雑貨屋かぁ。可愛い雰囲気のお店だね。じゃ、そこの従業員か何か?」

「あっ、私はこのお店の店長。って言ってもまだ店長になって1年だけど。で…今、休憩時間だからちょっと美容室の様子を見にきたって訳で…」

「ふーん、そうなんだ。あっ、ちょっと待ってて」


そう言い残し、貝塚は一旦店へと戻ると急いで携帯と財布に手に再び私の元へ戻ってきた。


「僕も丁度、今から休憩だから一緒にどう?」

「えっ?あっ、うん」


ぎこちない返事で私は答える。


私達は5分程歩いたとこにある【ロマンド】という喫茶店で昼食をと言う話になり店内へと入る。


やはり、お昼の時間帯は少し混雑していた。

貝塚は辺りを見回すと幸い、テーブル席が1つだけ空いてるのを確認出来た。


「望月、そこの席、空いてるから座っといて」


私はそう言われ、席を確保する為に椅子に腰掛ける。


「何する?」

「あっ、それじゃパンケーキセットで飲み物はホットコーヒー」

「了解」


そう言って貝塚は注文口へと並ぶ。


10分程で私が頼んだパンケーキセットを持って貝塚がテーブル席へとやってくる。


「お待たせ」

「どうも、ありがとう。お金いくらだった?」

「あぁ、良いよ。これは僕の奢りで」

「えっ?悪いから、払うよ」

「本当に良いから。奢らせて」


貝塚は断固として奢りだと言い張る。


私はご厚意に甘える事にした。


「それじゃ、お言葉に甘えて」

「うん、どうぞ」


パンケーキの甘さが口に広がり、仕事での疲れを癒す。

良く見ると、貝塚の注文したのはホットコーヒーにカルボナーラかぁ。

結構、少食?


「ねぇ、お昼それで足りるの?」

「あぁ。太りたくないし。仕事がら余りにも太ってたら嫌だし」


それは私も同感するとこだわ。

うんうんと頷いてる私に、貝塚は笑みを浮かべる。


「…望月は本当に変わったよな、別人みたいに」

「そう言うなら貝塚だって、一瞬、本人なの?って疑った」

「そっか。お互い30だし色々と変わるよな」


ちょっとした楽しい一時はあっという間に過ぎて仕事に戻る時間が刻々と近付いていた。


そろそろ戻らないとな…。


「…貝塚、私、仕事に戻るよ」

「…あぁ、そうだな。僕も戻るよ」

「…あの、ありがとう。ご馳走さまでした」

「こちらこそ、ありがとう」


私達は席を立ち、そのまま喫茶店を出た。



何だろう。妙に名残惜しいというか…。

私達はただ、ぼんやりと歩いていた…。



私がお店に戻ると、何やら従業員達が騒がしくしていた。


良く見ると、床に破片らしき物が散らばってた。


「あっ、店長。お客様が商品を落としてしまって」

「それでお客様は?怪我などは?」

「あっ、それは大丈夫です」

「良かった。ここは私が片付けるから業務に戻って」

「はい!」


私はほうきと塵取りを持ち出し、散らばった破片をほうきで拾い集めている時だった。



「…ここにも破片飛んでるよ」

「…えっ?」


さっき別れたはずの貝塚の姿が私の目に飛び込んだ。


「…何で?ここに?」

「…これだけ渡しに来ただけ」


そう言って貝塚は1枚の紙切れを私のジーンズのポケットに入れ込む。


「じゃ、急にごめんね。後、怪我しないで」


それだけ言い残し、貝塚は美容室へと戻って行った。



私は貝塚がポケットに入れ込んだ1枚の紙切れを取り出すと、そこには連絡先が書かれている。


これでいつでも彼と連絡出来ると思うと私の心は弾んでいた。













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