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第18章 男2人の過去

この章は望月湊と貝塚俊哉の目線、両方で描かれてます。


ーー望月の事、諦めないから。


私は田中君とお付き合い出来ないと率直に伝えた。


けれど、受け入れては貰えなかった。

ましてや、貝塚との仲を更に悪化させたかもしれない。


私は重い足取りで貝塚のマンションの前へと来てしまった。


お互い1人暮らしだから気兼ねなく行き来してしまうのが癖になってきている。


来てみたものの、流石に今日は止めておこう…。


私は今来た道を引き返そうとマンションに背を向けた時だった。



「…望月?」


私はこの声だけで胸がじんわりと熱くなるのを感じた。


振り返らなくても、誰だか聞かなくても、分かる…。


そして、私の身体はあっという間にその人の両腕の中にすっぽりと収まっていた…。



「…どうかした?何かあった?」

「…………か、貝塚」


私は言葉に詰まる…。


「…取り敢えず、部屋に行こう」

「…あっ、あの貝塚!」

「うん?」

「田中君の彼女を奪ったって本当?」

「ーー?!」


少し驚きながらも直ぐに冷静な表情に戻る貝塚。

それが事実なら田中君との溝は簡単には埋まらない。それに貝塚に対して憎しみを抱いていた様にも見えた。



「……望月、取り敢えず、行こう。全部話すから」

「…うん」



部屋にお邪魔すると、貝塚は私に温かいミルクティーを淹れてくれた。

紅茶とミルクの香が疲れを癒していく。


「…美味しい」

「少し落ち着いた?」

「うん」

「じゃ、話すよ」


貝塚は淡々と話し出した…。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



元彼女、香は田中信男の彼女だった。

偶然、街で会って3人で食事に行く事になった。

これが事の発端だった。

食事はイタリアンのお店で少し暗めの照明が店の雰囲気を醸し出していた。

出会ったばかりなのに僕と香は田中そっちのけで2人だけの世界を作り出していた。

耐えかねたのか田中はトイレに席を立つ。


それを見て、ようやく僕も今の状況に気付く。


彼氏の田中より自分の方が香と意気投合して彼女を独占し過ぎていた事を…。

香にも申し訳なかったな……と彼女に謝罪のつもりで軽く頭を下げる。


「…すいません、僕何か喋りすぎて田中との時間潰しちゃいましたね」


次の瞬間、僕は耳を疑う言葉を聞かされる…。


「…ねぇ、貝塚君?私と付き合ってみない?」

「…えっ?」

「最近、信男の事、好きじゃなくて。だから新しい出会いの場に参加してたんだけど良い人が見つからなくて。そしたら今日出会えた、貴方に」

「…何言ってるんですか?だからって貴方と付き合うなんて無理です。それに僕は二股はごめんなんで」

「それじゃ、二股でなければ良いの?」

「…いや、そういう問題じゃなくて」

「そういう問題よ。取り敢えず、ちゃんと精算するから約束は守ってね」

「約束?」

「…ちゃんとフリーになったら付き合うって約束」

「それは困るよ」


僕はこの時、半信半疑で彼女の話を聞いてた。

まさか彼女が有言実行するとは夢にも思わずに…。


それから暫くした頃、香からメッセージが届いた。

連絡先は田中の前で堂々と交換したから後ろめたさはない。

しかし、今となってはそれも間違いだった。


彼女からのメッセージの文面に僕は思わず目を疑う。


【貝塚君、信男とは別れたよ。だから約束守ってね!】


えっ?!まじで別れたの…?

有り得ない、そんな事…。


けれど僕も前の彼女と別れてから1年が経過。

心の中ではもうそろそろ彼女が欲しい頃合いだった。


だからだろう……。香と付き合おうと決めたのは。


香の話じゃ、田中から別れる理由を聞かれ、単に好きじゃなくなったからとだけ伝えたらしい。


けれど、香と一緒に居ても全然飽きないし居心地が良くて楽しかった。

初めは乗り気じゃなかった僕もいつしか香の事を好きになっていった。

香と付き合い出して半年経ったある日、彼女のバイト先のファーストフード店に昼食がてら顔を出した。


彼女は主にレジでの接客対応がメインだった。


「こんにちは、香」

「俊哉、来てくれたの?」

「あぁ、昼食を食べにね」

「もう素直じゃないな。会いに来てくれたんでしょ?」

「うん、まぁ」


僕達は一時の甘い恋人関係を楽しんでいた。

けれど、空気は一変する。


僕は急に背筋が凍る様な感覚に襲われる…。

そして背後から誰かに腕を掴まれていた。



「おい、どういう事だ、これ?」


振り返るとそこには香の元彼田中の姿が…。

偶然にも鉢合わせてしまった僕達2人を田中は鋭い眼差しで睨み付けていた。


「…貝塚、説明しろ。香と付き合ってるのか?どうなんだ?」

「…あぁ、付き合ってる。お前には申し訳なかったが……?!」



バン!


一瞬の出来事だった。

彼の拳が僕の顔面を直撃していたのは…。


僕は口元を怪我した程度だがお店では大騒ぎになっていた。


田中は僕を殴ったせいで気が動転してしまい大慌てで店から出て行った…。


騒ぎを聞き付け店長は僕の方へ駆け寄り警察に通報しようと促したが僕は止めた。

自業自得だからと…。


流石の香も心ここにあらずだな。

自分のせいだと精神的にも参ってる様子だった。

僕の痛々しい顔を何度も触りながら謝る香を僕は優しく抱き締めていた…。


だからと言って、僕達は決して別れなかった…。


いや、別れたくなかったのが本心だった。



それから1年、2年と月日は過ぎて行ったが殴られたあの日以来、田中と会う事はなかった…。



そして、問題の同窓会。

僕の予想では田中はてっきり欠席だと思い込んでいた。


けれど同窓会の帰りに望月と一緒に歩いているとこを目撃されてしまう。

本人は殴った事など忘れてしまったかの様に平然と僕に話しかけてきた。

案外、香との事は吹っ切れたのかもしれない。


けれど、またもやお互いの好きな人が被るという恐れていた事が起きた…。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「…ごめん、色々と」

「…うん、大丈夫。それと、田中君には告白された」

「ーー?!」

「でも断ったよ。……だけど、諦めないって言われた」

「……そうか」

「貝塚、私はね」

「…望月、1つだけ聞かせて」

「うん、何?」

「…こんな最低な僕でも好きでいれる?」

「…うん。それにもう決めたんだ。迷わないって」

「ありがとう。実は僕も決めた事がある」

「えっ?何?」

「…君を幸せにする事」


とてもじゃないけど、言葉にならない…。

私は自然と流れ落ちる涙を手で拭っていた。


すっかりと化粧崩れした私の顔は酷かった。


「…望月、もう泣かないで」

「泣いてない!嬉し泣き!」



私達はこの幸せを必ず守り抜くと、心に誓ったのだった…。















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