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第15章 忘れられない愛情

この章は貝塚俊哉目線で書いています。





ーー結局、望月と離れられなかった…。

1年という月日が過ぎても彼女を思う気持ちだけは変わる事はなかった。

彼女の為には別れるのが一番の選択だと思っていた。

だから僕はわざと望月と連絡を断ち切った…。

心から好きな人と別れる。

これ程にってぐらいに心が酷く乱れ、精神的にも限界にきていた。

そんな時、突然の望月からの手紙がポストに届けられていた。

僕は何度も繰り返し読み返した……。



【貝塚へ。1年前は貴方を傷付けて本当にごめんなさい。自分勝手だけど、一度だけでも会ってくれない?私、やっぱり自然消滅は嫌です!別れるならはっきり言葉にして欲しいです。それより大事な話、何で美容師の仕事辞めたの?私のお店に貝塚と一緒に働いてた女性従業員さん達が偶然やってきて貝塚の話をしてるのをつい聞いちゃって。私のせいで辞めたなら許さないよ!貴方はこれからも沢山の可能性があるんだから!】



ふと気が付くと、僕の涙が望月の手紙を濡らしていた。

綺麗で達筆な望月の字が涙のせいで歪んでいく…。

僕は純粋に嬉し過ぎて感極まったのだ。


ーあぁ、やっぱり会いたい。


どう考えても望月の事を忘れるなんて不可能に近い。


少し湿っている彼女からの手紙が僕の背中を後押しするかの様に無我夢中でマンションを飛び出していた…。



その結果、今こうして望月を抱き締めている自分がここにいた…。



「……所で望月、君の手紙読んだよ」

「ほんと?で、どうだった?」


望月は目を潤ませながらも、僕の感想を聞きたがる。


「……嬉しかったよ、凄く」

「…ほんと?!」


泣きそうだった彼女の顔はみるみる内に満面の笑顔へと変わっていく。


「それなら、私達またやり直せる……?」

「…うん、そうだな」

「ありがとう、貝塚。……それにしても手紙の効果って凄いな、まさか会いに来てくれるなんてーーー?!」


望月は何かを思い出したのか慌てて携帯電話を取り出し誰かにメッセージを打っている様子だった。


相手と連絡が取れたのか望月は安堵の表情を浮かべていた。


「…ごめんね、貝塚」

「…うん、大丈夫。それより何か用事でもあった?」

「対した事じゃないから」

「なら良いけど。……それじゃ」


僕は望月の身体を抱き上げ、寝室まで運ぶ。


1年分の思いを確かめ合う様に僕達はベッドの上で深く愛し合った…。



  

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



翌朝、僕は清々しい気持ちで目覚めた。その横にはスースーと気持ち良さそうに寝息を立てる望月がいた。

つい、悪戯心で彼女の柔らかい頬をつねった。


「んー?」


半分寝惚け気味の望月の頬を今度は優しく撫でる。

ほんとに何で君じゃないと駄目なのか、自分でも分からないぐらい好きになってる。


「……ん?あれ?貝塚、おはよう」

「望月、おはよう」


ようやく眠りから覚めた望月はゆっくりと身体を起こす。


「…今日も仕事だし準備しなきゃ。貝塚は美容室の件はほんとに良いの?まだ今なら間に合うかもよ?」

「…うん、そうだな。今日話をしてくるよ」

「それなら良かった。やっぱり貝塚は美容師の仕事が一番だよ」

「ありがとう」


彼女の笑顔を再び見る事が出来るなんて…。

これを幸せと言うのかな。



そして、仕事へ行くと言う望月と一緒に僕は彼女のマンションを出た…。



僕は望月と別れた後、美容室【つむぎ】に顔を出した。


「…おはようございます」

「…か、貝塚さん?!どうかされたんですか?もしかして、気が変わってここでやっぱり働きたいって戻ってきたんですか?」

「…えっ?」

「貝塚君が辞めてから大変だったのよ。お店が回るか心配だったし」


自分勝手で辞めた僕に皆が駆け寄り、歓迎の声を上げてくれた。

ただ1人、怖い面持ちの男性を除いて。

この人は店長の古賀さんだ。


「…あの、古賀さん」

「何ですか?」

「自分勝手で本当に申し訳ないのですが、出来れば辞めるって言ってた話、撤回させて貰えませんか?お願いします」


皆が見守る中、僕は店長の前で深く頭を下げた。

余りの身勝手さに店長は呆れ返ってるか、ただただ首を傾げていた。

駄目元で当然のお願いだ。

違う美容室への転職探しで決まりかなと諦めかけた時だった。



「…貝塚さん?」

「はい、店長」

「それじゃ、いつから来れますか?」

「はい、そうですね。ーーーえっ?!あっ、いつからでも大丈夫です!」

「じゃ、明日からで」

「ありがとうございます!」


辞めるの報告から余り日が経ってなかったのと、美容師の求人を出してなかったお陰で僕は無事、美容師に戻る事が出来た。


明日からの引き継ぎを終えると僕は不意に望月のお店の前で足を止める。



ー今日は店内に入るのは止めて置こう。

お店に顔を出すのが頻繁になるのは避けよう。

もう失敗だけはしたくない。


僕は会いたい衝動をぐっと堪え、店内を少し外から覗いていると望月が誰かと話してるのが見える。

お客さんかな?

だけど、見覚えのある顔に僕は目を疑う。


どうして?あいつが?

次第に僕は平常心が保てなくなりそうだった…。


相手は田中信男だった。

確か、望月は僕の目の前で田中の連絡先が書かれた紙をビリビリに破って捨てたはずだけど…。

また新たに教えて貰ったのか…聞きたい事は山ほどある。

だけど今の望月なら素直に答えてくれるだろう。



1年の間で2人に何があっても僕は事実を受け入れる覚悟は出来ていた…。







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