表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔眼の宮廷魔術師は眼鏡を外し、謎解きを嗜む  作者: 秋月 忍
第四章 神殿

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/125

神殿 9

 レオンは、ダイビンを連行した後、孤児院の職員を院長室に呼び集めた。

 職員は全部で二十名。勤務が交代制とはいえ、十五人ほどが定員とおもわれる孤児院にしては、ずいぶんと手厚いらしい。

 むろんデイバーにある孤児院だから、安全面に気を付けてと言うことも考えられる。

 だが、食事や掃除の担当は、四名ほどで回しているらしい。

 書類仕事をしていたのが三名。残りの十四名は教育係だそうだ。

 全員男性なのは、デイバーの治安を考慮した結果と言われれば、納得できる。

 だが、十四人もの教師がいると言うのは、孤児院としては普通ではない。

 孤児の中には幼児もいることから、人手がいるのは理解できるが、それにしてもかなり手厚い教育をしている。

 国の経営する孤児院は、万年人手不足と予算不足に悩んでいるのに、ずいぶんと羽振りのいい話だ。

「つまり、教師の担当は神殿からの出向、それ以外は院長が雇ったということか」

「はい」

 副院長のロバスと言う男が答えた。

「教師は何を教えていた?」

「一般的常識ですが」

 ロバスは緊張を隠せない様子で答える。

 院長が連行されていったこともあって、かなり怯えているようだ。

「魔術の訓練は一般常識に入るのかね?」

「この施設にいる子供に関しては、そうだと思います」

 ロバスは冷や汗をかいている。

「君はそう信じているのかね?」

 レオンの言葉に、ロバスは頷く。

「魔力量の検査はどこでやっている?」

「こちらへ入る前に、神殿で行っております」

「なるほど」

 神殿には、魔力を検査するための道具がそろっている。

 そこに違法性はないし、院長が言ったように、暴走の危険を考えて、デイバーの孤児院に集めるのはある意味では理にかなっている。

「あの、すみません。我々、仕事がおしているので、手短に願えませんか?」

 一人の男が手を挙げた。

「仕事?」

「お昼の用意をせねばなりません。子供たちが待っておりますので」

 どうやら、厨房担当らしい。

「そうか。では、全員、名前を署名してから、仕事に戻ってくれていい。取り調べは一人ずつ行うことにする」

「殿下?」

 あまりにもあっさりとしているレオンに驚いたサーシャだったが、取り調べで職員を集めていては、子供に目が届かなくなる。

 レオンの許可を得て、職員たちは書類に署名をしてから部屋を出て行った。

 職員が出て行くと親衛隊の隊員も出ていく。逃走などがないよう見張るためだ。

「院長を連行しても、きちんと従う時点である程度まともな施設だ」

 職員たちがいなくなると、レオンはサーシャに向かって呟く。

「なるほど」

 サーシャは頷いた。やましいことが明らかにあるようだったら、招集に応じず、逃げ出す可能性が高い。

「それに経営に怪しいところがあったとしても、子供が生活する場所だ。子供らをどうするか決まらぬうちに、職員を全員捕まえるわけにはいかない」

「……そうですね」

「まずは、魔術訓練をしていた人間が、本当に国家資格を持っているかどうかを調べねばな。まあ、おそらく持っているだろうが」

「持っていますか?」

 サーシャは首を傾げる。

「神殿には、資格を持った人間が大勢いるし、訓練そのものが失敗するようなら困るだろう」

「それは、そうですね」

 サーシャ自身、訓練を受けなかったせいで死にかけた経験があるため、訓練の大切さはよくわかっている。

 魔力のある人間を指導するには、正しい知識がいるのだ。

「まだ塔に秘密で訓練したと決まった訳では無い」

「私は申請していない方に賭けても良いです」

 孤児院で訓練をするのはかなり珍しい。同じ塔でもサーシャは部署違いだから聞いていなくても不思議はないが。

「平民でも強い魔力を保ち、魔術師として出世した人間はいくらでもいますが、これだけ手厚く長期間育てれば、何人かは噂になるはず」

「ふむ」

 レオンは顎に手を当てた。

「今ここにいる子供の魔力量検査をするべきだな」

「確かにそこを偽装されている可能性がありますね」

 仮に上級クラスの子供がいたとすれば、塔に登録されているはずだ。

「部下に検査道具を持ってくるように言って来よう」

 そう言ってレオンは立ち上がる。

「少し出てくるが、アルカイド君はここで待っていればいい」

「待ちません」

 レオンの気遣いにサーシャは首をふる。

「私は殿下の護衛ですから」

「そうだったな」

 レオンは珍しく苦笑し、サーシャを伴って院長室を出た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ