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魔眼の宮廷魔術師は眼鏡を外し、謎解きを嗜む  作者: 秋月 忍
第四章 神殿

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神殿 8

 メリトンという宝石商は、かなり有名だ。

 サーシャでも名前は知っている。 

 優秀なデザイナーがいるとかで、新作デザインなどは、予約もできないほど人気らしい。

 宝石は富の印だ。ブルックス伯爵家は上級貴族ではない。ゆえに宝石を身にまとい、財力をみせつけようとしていた。

「ところで、ブルックス伯爵はよくこの孤児院を訪ねてくるのか?」

 レオンの問いに、ダイビンは頷いた。

「多額の寄付をいただいているだけでなく、子供たちにも気を配っていただいております」

「ブルックス伯爵は、人格者なのだな」

 レオンが呟いた。

「はい。とてもよくしていただいております」

 ブルックス伯爵が人格者かどうかは定かではないが、多額の寄付をしているのは間違いない。

 おそらくブルックス伯爵の不利になるようなことは、ダイビンは話さないと思われた。

「ブルックス伯爵夫人はこちらには来るかね?」

「いえ。場所がデイバーということもありまして、ご夫人がいらしたことはございません」

 ダイビンは首を振った。

 夫人が来たがらないのか、伯爵が止めていたのかは定かではないが、デイバーに貴族の女性が来ることは、あまりすすめられない……そう考えたサーシャは、自分も貴族であることを思い出し、内心で苦笑した。

「ふむ。……アルカイド君」

 レオンが不意にサーシャの方を見た。

「はい」

「何か気になることはないか?」

「ええと」

 サーシャは口を開く。

「まず、この孤児院で魔道具とかは使用されていますか? 大きなエーテルの流れを感じましたので。それから初歩の魔術訓練は頻繁に行われているのでしょうか?」

「え?」

 ダイビンは驚いたようだった。

「魔道具は魔道灯程度は使いますけれど。大きなエーテルの流れというのであれば、魔術師になりたい子供の訓練をしているせいかもしれません。初歩訓練は、毎日行っております」

「それほど、魔力を持った子たちがいるのですか?」

 サーシャの問いにダイビンは頷く。

「ここにいる子供たちの多くは、魔力をもっています。塔に行くほどすごい子供はおりませんが。神殿がこちらに集めているのです」

「なぜだ?」

 レオンが問うとダイビンが苦笑した。

「魔力暴走の危険がありますから。デイバーなら、その可能性があっても、誰も反対しないからというだけのことです」

「その点は、塔にご連絡はいただいているのでしょうか?」

 サーシャはさらに突っ込む。

「神殿の方でしていないのであれば、しておりません。こちらは、あくまで神殿の経営する孤児院でございますので」

 ダイビンが首を振る。

「それはおかしい。この国にある限り、神殿の経営とはいえども、魔術訓練をするなら報告が義務付けられているはずだが」

 レオンがにらみつけると、ダイビンの顔が青くなった。

「さらに魔術訓練を行う教師には、国家資格がいる。ここで教えている教師はきちんと資格を取っているのか?」

「それは……」

「神殿に任せておいたので知らないでは通らない。もちろんこちらから、神殿の方に問い合わせはさせてもらうが、君の罪がなくなるわけではない」

 レオンは息をついた。

「魔術訓練を行わなければならない人材は、帝都にそんなにはいないはず。何人も秘密裡に集めているとなれば、何事かを企んでいるのかと、疑いたくなる」

「そんな……ことは」

 ダイビンは汗をぬぐいながら、首を振る。

「マーダン」

 レオンは、サーシャとともにレオンに同行していた部下の名を呼んだ。

「ダイビンどのを朱雀離宮に連れて行け。それから帳簿や、名簿など押収しろ」

「承知いたしました」

 マーダンはダイビンの身柄を拘束する。

「私は何もしていない!」

「知っている。君の場合は、何もしていないからこそだ」

 喚くダイビンに、レオンは言い放つ。

「くそっ! こんなことをして神に許されると思うな! 呪われるがいい! 死神皇子め!」

 ダイビンが悪態をついた。

 先程までの礼儀正しさはどこかに消えてしまった。

「お前の神は人を呪うようなことを許すのか。もしそうなら、私はそんな神を信用はできない」

「神を愚弄するな!」

 ダイビンが怒りの声をあげる。

「神を愚弄しているのは、あなたの方だと思いますよ」

 サーシャが呆れたように呟く。

 ダイビンは喚き散らしながら、マーダンに連行されていった。

 



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