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魔眼の宮廷魔術師は眼鏡を外し、謎解きを嗜む  作者: 秋月 忍
第四章 神殿

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神殿 7

遅刻。すみません

 会議が終わると、レオンは孤児院の捜査に向かった。

 もちろんサーシャも護衛として同行する。

 サーシャが護衛につくことについて、親衛隊のマーダンたちも歓迎しているようだった。

 レオンが親衛隊の要だとマーダンたちは当然知っている。自分たちがいかに調査をしても、それをしっかりと取り上げる上司がいなければ、意味がないのだ。

 帝国の治安が守られているのは、レオンの姿勢によるところが多い。

 孤児院は政府によって運営されているもののほかに、神殿が貴族の寄進を頼りに経営しているものがある。

 デイバーにある孤児院は後者だ。

 商工会の職業あっせん所からほど近いところにある。

 それほど大きいものではないが、かなりの数の孤児の面倒をみているとのことだ。

 貧民街にあることもあり、建物はお世辞にも立派だとは言い難い。

 だが建物の周囲にはしっかりと塀がめぐらされていて、防犯はされている。

 デイバーで一番安全な場所と言われるだけのことはあると、サーシャは納得する。

 中庭に馬車を停めておく場所もあり、イメージより広かった。

 ──ん?

 馬車を降りたサーシャは、違和感を覚えた。

 ──エーテルの動きが激しい。魔道具でも使っているのかしら。

 魔術を使わなくてもエーテルは動くものだ。だが、塔ほどではないにせよ、激しい流れがおこるのは、どこかで魔術を使っているということだ。魔道灯程度ではここまで動かない。

 孤児院にそれほど大きな力を使う魔道具があるのだろうか。

「アルカイド君、どうかしたのか?」

「いえ。たいしたことではありません」

 サーシャは首を振る。

「よくおいでいただきました、殿下」

 揉み手をして出てきたのは、年配の癖の強そうな男だった。

 孤児院の関係者にしては、目つきが非常に鋭い。体は小柄だが、人を威圧する雰囲気を持っている。

 子供好きには見えないが、デイバーという土地に根を下ろしていると考えると、当然なのかもしれない。

「孤児院を経営しております、トーマス・ダイビンと申します」

 男はうやうやしく頭を下げる。

「親衛隊のレオンだ」

 レオンは軽く名乗る。

 仮にも第二皇子なのだから、もっと仰々しく名乗ってもいいのだが、レオンはそういったことを必要と考えていないようだ。

 親しみやすさを出すためにしているのではなく、単純に不必要と思っているふしがある。

 ダイビンは、一瞬虚を突かれた顔をした。

「立ち話もなんですから、中へどうぞ」

 ダイビンの案内で、建物の中に入る。

 外観に反して、中はサーシャが思っていたよりきれいだった。

 古いことには変わりはないが、壁紙は新しく、掃除は行き届いている。

 ただ、遊び部屋にいた子供たちの身なりはひどいものだった。洗いざらしで、大きさがあっていない。破れたものも繕って着ているようだ。

 だが、子供達の血色は悪くない。

 それから、もう一つサーシャが気になったのは、部屋の片隅に魔術の初歩訓練に使う道具が置かれていたことだ。初歩訓練は幼いうちにすべきなので、孤児院で行って不思議というわけではないが、遊び道具のように置かれているのが解せないところだ。

 案内された応接室は貴族を迎えることを想定しているのか、調度品もそろっていた。大きく開かれた木の窓から、明るい光が差し込んでいる。

「子供の服がみすぼらしいのは、わざとか?」

 ソファに腰をおろしたレオンが、ダイビンに尋ねる。

「よくお気づきで。孤児院が裕福に見えるのは、場所柄、あまりよくないのです」

 ダイビンは苦笑する。

「少しでも金があるように見えたら、賊にやられてしまいます」

 デイバーとはそういう場所だと、ダイビンはため息をつく。

「ブルックス伯爵は昨日こちらに来たかね」

「いらっしゃいました」

「いつごろだ?」

 レオンの目が鋭くなる。

「朝にお見えなってお昼には立たれました」

「その後の予定は聞かなかったか?」

「メリトンという宝石商に会うと言っていたような?」

 ダイビンは首をかしげながら答えた。


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