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魔眼の宮廷魔術師は眼鏡を外し、謎解きを嗜む  作者: 秋月 忍
第四章 神殿

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神殿6

 朱雀離宮はいつもより人の出入りが激しくなっていた。

 サーシャとリズモンドが応援に来たと告げると、そのまま会議室へと案内された。

 ちょうど捜査のための会議が行われるところらしい。

 レオンはサーシャだけでなくリズモンドも一緒に来たことをそれほど驚かなかった。

 ルーカス・ハダルなら、そうするだろうと察したのかもしれない。

 会議室には、マーダンをはじめ親衛隊のメンバーが腰かけていた。

 どうやら、サーシャ達を待っていたのだろう。

「それでは現在までの調査の結果を聞こう。カリド」

 レオンに促され、カリドが立ち上がる。

「はい。ブルックス伯爵の乗っていた馬車ですが、かなり損壊しております。なお、魔術の痕跡はありませんでした」

 カリドは息をつく。

「馬車は二頭立て。一頭の馬はハーネスが切れていたので、そのまま伯爵家へ帰ったようですが、もう一頭は馬車に引きずられて、川の土手を落下し骨折しておりました」

「馬車そのものに細工等はあったのか?」

 レオンの問いに、カリドは首を傾げる。

「切れた馬のハーネスは故意とも偶然ともとれる状態でした。また車軸等も折れておりましたが、事故によってのものか、作為があったのかどうか、現段階では判別しがたいかと」

「そうか」

 レオンは頷く。

「それから、亡くなった御者、ベイカーですが、長年ブルックス伯爵家に仕えておりました。口が堅くまじめだったそうです。それから、例の瓶についてですが、家族は知らないと答えました」

「ということは、本人もしくは家族が間違えて用意したものではないということだな」

 レオンは顎に手を当てる。

 ラクライとドミランの間違いは、故意なのかどうかは、まだわからないが、少なくとも本人や家族が用意したわけでないのなら、何者かに渡されたということになる。

「マーダン、神殿の方はどうだ?」

「特に大きな反応はございません。さすがにハックマン祭司がこちらの手にあるとわかっていますからね。下手に動けば、神殿そのものに疑いが向くことがわかっているのでしょう」

「まあ、そうだな。昨日の今日だから」

 ハックマン祭司が襲われ、親衛隊が保護したのは、昨日の夜。

 ウイリアム・ローザーはさすがにそのことは想定していなかったようだ。

「エルドラン、オルド・レイドンはどうした?」

 サーシャの知らない男が立ち上がる。少し小柄な男だ。

「黙秘を続けております。ただ、彼がキンブル製糸商会にかかわっていたのは間違いないでしょう。商工会の人間から聞いた人相書きそのものですから」

 キンブル製糸商会に関与していた神官は、オルド・レイドンに間違いなさそうだ。

 彼が黙秘しているのは、自分のためなのか、それとも師にあたるハックマンをかばってのことなのか、それとも神殿との密約があるからなのか定かではない。

「キンブル製糸商会は引き続き追い続けろ。ハックマン祭司が正しいなら、ブルックス伯爵とつながっているはずだ」

「承知いたしました」

 エルドランが頭を下げる。

「それから、ジム・ムクドを尋問し、魔術薬剤を売った相手を聞き出せ」

 レオンは大きく息をついた。

「ここまでで何か質問は?」

 レオンに問われ、サーシャが手を上げる。

「ブルックス伯爵が訪問したという孤児院はなんと?」

「それはこれから調べに行くところだ。おそらく孤児院に訪問はしているだろう。その後でどこへ行ったかはわからないが」

「伯爵夫人は、本当に孤児院にいたと信じていたのでしょうか?」

 それを聞いてリズモンドが質問する。

「わからない。そのあたりも調べるべきだろうな。なんにせよ、ブルックス伯爵は陰でかなり金を動かしている。妻にいろいろ秘密にしていることがあってもおかしくはない」

 キンブル製糸商会のこともある。

「なんにせよ、ガナック君とアルカイド君には、我々には手に負えない魔術関連のことを助力願いたい」

「申し訳ございません、殿下。その命令には従えません」

 リズモンドが首を振る。

「ハダルさまが宮廷魔術師を二人派遣することにしたのには、意味があります。魔術関連での応援はすべて私がいたします」

「ガナック君?」

 レオンが驚いた顔をした。

「サーシャは殿下の護衛です」

「護衛?」

「はい。ハダルさまは、殿下が狙われるとお考えですので」

 リズモンドの言葉に、親衛隊の部下であるマーダンたちも納得したようだ。

「さすがに私が狙われるとは思えないが、なぜアルカイド君が?」

 宮廷魔術師が皇族を護衛するのは珍しくないが、サーシャの担当はたいていは第二皇女だ。

「私が護衛で、サーシャが魔術関連の応援でもかまいませんが、サーシャは細かいことに向いていませんから。どうしてもというなら、私が護衛につきますが」

「いや、アルカイド君でかまわない」

 レオンは間髪を入れずに返答する。

「かまわないと言う言い方はおかしいな。私はアルカイド君に護衛を頼みたい。ガナック君の力ももちろん信用しているが」

 ストレートなレオンの言葉に、サーシャは顔が熱くなるのを感じる。

 そんなサーシャを見て、リズモンドがなぜか大きくため息をついた。

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