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魔眼の宮廷魔術師は眼鏡を外し、謎解きを嗜む  作者: 秋月 忍
第一章 鳳凰劇場

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鳳凰劇場 23

本日も遅刻。すみません。

 ケルトスを含め、計十名が捕らえられた。

 そのうちの一人が鳳凰劇場の元従業員で、モリア・セリンに用意した制服は、その男のものだったことがわかった。

 ローザ・ケルトスは、神官見習いでありながら、裏では金次第で仕事を請け負う『影狼(かげおおかみ)』の首領であったようだ。

「しかし、参りましたね」

 朱雀離宮の会議室のソファに腰かけ、サーシャは肩をすくめた。

 サーシャの前には、レオンが座り、マーダンはレオンの脇に立っている。

 今日でサーシャの親衛隊への出張は終わるはずだった。

 が、事件はまだ解決していない。

「ああ。失態としか言いようがない」

 レオンの顔が苦い。

「まさか、ローザ・ケルトスが大やけどで瀕死状態になるとは」

 サーシャの魔術で凍らされ護送されていたケルトスの背中に、突然火がついた。火元はなく、周囲に魔術師もいなかった。

「魔法陣一つ描いておけば防げたかもしれない」

 狭い荷車のような護送用の馬車には、護衛の兵士しか乗っていなかった。

 魔術の使えない護衛だったため、対応が遅れてしまった。

「何とか命はとりとめそうだが、いつ話が聞けるようになるかはわからん」

 レオンはため息をつく。

「発火の魔術の陣が、おそらくあらかじめ彼女の背に描かれていたものと思います。焼けてしまってはっきりはしませんが、たぶん入れ墨でしょう」

「魔術をかけた人間はわかるか?」

「いくつかの人間がかかわっているので難しいです。陣を描いた人間、彫師、発火のスイッチを入れた人間、全部違うように思います。それに、私が吹き飛ばしてしまいましたので」

 サーシャは頭を下げた。

 現場に駆け付けたサーシャは、ケルトスの命を救うために、陣を破壊した。相手を特定したいのであれば、そちらに集中すべきだった。

「いや、アルカイド君のおかげで、被疑者を死なせずに済んだ」

 レオンは首を振る。

 意識不明ではあるが、とりあえず死んではいない。

「自殺ではなさそうなので、『次』があるかもしれません」

「わかっている。むしろそうなれば、一番奥にある奴を引っ張り出せるかもしれない」

 レオンは息を継いだ。

「おそらくはロイド・マーベリックだろう」

「祭祀ですか」

 サーシャの問いにレオンが頷く。

「今、ロイド・マーベリックの周辺を探らせている。『影狼』の連中の話では、ケルトスは首領とはいえ、実は誰かの命令を受けて動いていたように思えるらしい」

「ロイド・マーベリック祭祀は、確か、アリア・ソグランをあまりよく思っていなかったのですよね」

「ああ。何故かは知らんが」

 神殿のほとんどは、アリア・ソグランを聖女として立て、皇太子に嫁がせることで、神殿が政治に口を出せるようにしたいと考えている。

「それなのに、どうしてエドン公爵家に喧嘩を売るような真似をしたのでしょう? マーベリック祭祀が指示したのであれば、別の聖女のアテがあると考えるか、もしくは、単に現在の神殿の体制に不満があるということだと思うのです」

 サーシャは首を傾げる。

「もちろん、カモフラージュとしてちょうど良かったということもあるでしょうが、実際の話、宮廷魔術師である私まで担ぎ出して、捜査をしたのは、間違いなくエドン公爵家に泥をかぶせたからでしょう。あまりにも安易としか言いようがないと思います」

「確かにそうだな」

 レオンは顎に手を当てた。

 ノックの音とともに、ワーナー・カリドが入ってきた。

「殿下、ナリド伯爵家に行って参りました。当日、マーベリック祭祀よりチケットを贈られたそうです。ローザ・ケルトスを連れて行く約束をしたが、用事でいけないから連れて行ってくれと頼まれたとか」

 ワーナーは報告を続ける。

「チケットは、ボックス席なので、神官見習いのケルトス一人では観劇しづらいからと言われたらしいです。どこまで本当のことかはわかりませんが」

「それで、ケルトスについては?」

「芝居が終わる直前に席を外したそうです。それから帰り際、忘れ物をしたと言って、伯爵達と行動を別にしたとか」

「モリアの話と一致するな」

「マーベリック祭祀の関与は間違いないです。引っ張りましょう」

 マーダンが身を乗り出す。

「アルカイド君は、どう思う?」

「現状、マーベリック祭祀に話を聞くのが最良でしょうね。そこまではお供致します」

 サーシャは丁寧に頭を下げた。



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