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魔眼の宮廷魔術師は眼鏡を外し、謎解きを嗜む  作者: 秋月 忍
第一章 鳳凰劇場

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鳳凰劇場 21

 レオンは騎士の一部をフルラ川の下流に配置するように指示をしている。

 サーシャは、探査の術を応用し転移の陣の術式を丁寧に読み解く。

 転移の陣というのは、大抵は、どこかと対になっていることが多いけれど、新たな陣をつなげることは可能だ。ただし、そのためには、陣の記号を正確に読み解かなければいけない。

 古代の術式だが、宮廷魔術師であるサーシャは触れる機会が多いものだ。それほど難しいものではない。

「陣を描いたら、順番に通って行ってください。一度に送ることも可能ですが、障害物があると危険ですので、それよりは持続時間を長くしましょう」

 おそらく転移の陣の大きさは、騎馬一騎ぶんほどしかない。強引に大きくすることは可能だが、現地の地形がわからない以上、無理は禁物だ。障害物のある場所に強引に転移すると危険である。

「出現先と、容疑者の位置は少し離れていますが、視認できる距離だと思います。くれぐれもご油断なさいませんように」

 サーシャは言いながら、転移の陣を大地に描く。光の陣がそこに浮かび上がった。

「わかった。マーダン、行くぞ」

 レオンが率先して陣に入る。第二皇子自ら、先陣を切るらしい。

 誰も止めないところを見ると、これはいつものことなのだろう。

「転移の陣、開きます」

 サーシャは目を閉じて、転移の陣をつなげる。

 次々に騎兵が陣に飛び込んでいく。

「ひぇぇ」

 脇で見ていたエドが驚きの声を上げながら、しりもちをついている。

 転移の陣を知っていても、陣を張って転移するというのは、見たことがないのだろう。

 いわば、据え置き式の転移の陣はポピュラーでも、何もない場所に陣を張るのはあまり一般的ではない。使用できるのは、一部の宮廷魔術師と軍の最高位の魔術師くらいのものだ。

「さて、これで終わりですが、エドさんも来られますか?」

「え? いえ、私は行かないといけませんか?」

 エドはおっかなびっくりといった表情でサーシャを見た。

「いいえ。ただ、転移の陣にご興味がありそうでしたので。では、これで」

 にこりとサーシャは笑い、陣に飛び込む。

 あとに残ったエドは、サーシャが消えるとともに転移の陣が消え去るのをみつめていた。




 宮廷魔術師であるサーシャが、転移の陣を張れたところで驚きはしない。

 が、通常の場合、転移させるのはせいぜい一人か二人だ。それを十騎あまりある隊ごと転移させるという。

 もちろん転移の陣自体は小さいもので、基本、一騎しか転移できないが、長時間、陣を維持するということは並大抵のことではない。

「転移の陣、開きます」

 サーシャが術を完成させると同時に、レオンは陣に飛び込んだ。

 光の渦を越えた先にあったのは、エドから聞いた岩窟のようだった。足元は岩でできているらしい。

 真っ暗だが、足元に描かれた陣のラインが光っている。

 レオンは慌てて、陣を出た。次の瞬間、騎馬に乗ったマーダンの姿が現れる。

 どうやら陣から出ると、次の人間が転移してくる仕組みらしい。ぼんやりとした光の中で見る限り、岩窟は狭い。辺りは真っ暗で何も見えない。

「光よ」

 レオンは、外へ向けて光玉を打ち上げた。

 当然、そんなことをすれば、敵に気づかれるだろうが、暗いままでは戦えない。

「マーダン、すぐに陣を出ろ。次が待っている」

 岩窟はそれほど広くない。とりあえず、全員が転移を終えるには、先に転移した者は、早急に外に出る必要がある。

 レオンはマーダンと共に外に出ようとした途端、矢を射かけられた。

「風よ」

 マーダンが声を上げ、降りそそぐ矢を強風で弾き返す。

 相手は何人いるのかはわからない。光玉を見て、咄嗟に攻撃態勢に入ったのだろう。

 レオンは剣を抜いた。獣道を走り出した人影を追う。

 小柄だ。どうやら女性のようだ。

「ケルトス!」

 レオンは叫ぶ。

 レオンの声に女は一瞬振り返る。

 その顔に見覚えはないが、とにかく特徴のない顔だった。

 美しいというほどでもなく、醜いというわけでもない。しかし、彼女は実に妖艶に笑んだ。

 パチン

 彼女が指を鳴らすと、むくむくと土が盛り上がった。

「泥人形?」

 それは土くれで出来た人形だった。大きさは大人の男の倍ほどの大きさだ。

「神官の使う魔術にしては、えげつないな」

 レオンは剣をかまえた。







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