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魔眼の宮廷魔術師は眼鏡を外し、謎解きを嗜む  作者: 秋月 忍
第一章 鳳凰劇場

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鳳凰劇場 20

遅刻。すみませんm(_ _)m

 神殿裏にある森は深い。鎮守の森として、帝都にあるにもかかわらず、かなり広大な面積を持っている。

 すでに日が沈んでいるため、森は暗く何も見えない。闇の中に木の葉がこすれる音が響いている。

 ケルトスが逃げたという道は真っ直ぐに森の奥へと伸びていて、闇に埋もれて見えない。

「この道の先は祭壇があるだけで、他には何もないんです」

 案内のエドが、ランタンを持ち上げるようにし案内をする。

「もちろん、道を外れていたら、どこへ行ったかはわかりませんけれど」

 この森を突き抜けるような道は、原則存在しないらしい。

 エドの照らす先の道は、基本一本道のようだ。

 森の中央付近にある祭壇は、年に一度の儀式の時のみ使われるだけで、通常は放置されている。この道はその祭壇まで伸びているだけで、他の場所には続いていない。

「この時間に森に入る者はいるのですか?」

「いえ。日があるうちは、薬草採りに入る者もおりますが、もういないと思われます」

「なるほど」

 サーシャは頷いた。

「殿下、探査の術を使います」

「ああ」

 サーシャの意図を察したレオンが、エドを伴って、一歩下がる。

「大地の精霊よ」

 サーシャは膝をつき、手を大地にあてる。

 大地の精霊の力で、周囲に地に足をつけて動く物の位置を探る魔術だ。

 もっとも、動く物ならすべて反応するので、獣にも反応してしまう。だが、大きさや位置を考えれば、まず問題ない。

 探査の距離は、魔術師の能力によって決まる。サーシャの能力があれば、問題なくケルトスを追える。

 サーシャは力を広げていった。

「三十度右の方角。一人ではありませんね。十人ほどいます」

「何かあるのか?」

 レオンはエドに尋ねる。

「ええと。確かちょっとした岩窟があったはずです」

「岩窟?」

「岩窟といっても小さいもので、人ひとりが入れる程度のものです。薬草採りの時に目印にする程度ですよ。道も獣道のようなもので」

 エドが首を傾げる。

「目印になるということは、そこで誰かと合流したということだろう。つまり、私が来たのはただのきっかけで、もともとここを出る予定だったに違いない」

「殿下。どうしますか?」

 サーシャは手を大地にあてながら、その気配を追跡する。こちらに来る様子はない。むしろ森の奥へ若干の移動が認められる。

「おそらく彼らが向かうのは、フルラ川です。川を越えると探査が効きづらくなることを踏んでのことでしょう」

 森の中を流れるフルラ川は、そのまま帝都をかすめて、海まで流れていく。

「舟か」

「はい。森を抜けるのには、一番安全で手っ取り早いでしょうね。舟に乗られてしまったら、探査の魔術は使えません」

 森を抜けてすぐに船を捨てて逃げるか、そのまま海まで行くつもりかはわからない。

 もちろん、川を横断して、対岸へと逃げる方法もある。

「ところで、エドさん。その岩窟、古代の陣が残っていますよね?」

「ええと。一応は。でも、あの陣は既に術式が読み取れないのですが」

「まあ、かなり古いものですが、まだ使えそうですね。古代語の術式ですから、読み解けるものは、わずかでしょう」

 サーシャはニヤリと笑う。

「殿下、転移して追いますか?」

「出来るのか?」

「出来ます。ただ、もう少しだけ待ちましょう」

「なぜだ?」

「援軍が間もなく到着します。マーダンさまですよ。たぶん」

 サーシャは、腕を組み、天に向けて光の玉を放った。

「おい、アルカイド君」

「転移陣を使うなら、すぐに追えます。二人で追うより、マーダンさま達と合流した方がよろしいでしょう。光玉はしばらく発光しますので、きっとこちらに来られるかと」

 探査の術で、騎馬と思われる気配が近づいていることがわかる。今、この時間に神殿に向かって来ている騎馬が何騎もいるとすれば、親衛隊に違いない。

 光玉を打ち上げるのは、軍の連絡でよく使われる。光玉の色で、細かな情報伝達も可能らしいが、残念ながらサーシャは、そこまで詳しくない。ただ、どの色にせよ、親衛隊の人間なら無視はしないだろう。

「まさか、隊全員を転移させるつもりなのか」

「必要であれば。大丈夫ですよ。古代の転移陣の方が、大人数の輸送に向いていますから」

 サーシャは微笑む。

「しかし、魔力はかなり必要なのではないか? さすがにそこまで無理をさせるつもりはないが」

 レオンは、できないと思っているというより、サーシャの身を案じているようだ。

「ハダルさまにも同じことをおっしゃいますか?」

「それは」

 サーシャの問にレオンは即答しない。

「ならばお任せを。私はハダルさまの代理ですので」

 やがて騎馬の蹄の音が近づいてきた。騎馬は神殿に向かわず、光玉へと向かってくるようだ。

「来ましたね」

 サーシャは、騎兵の方を指さした。光玉のおかげで、サーシャとレオンの姿は、向こうからよく見えるはずだ。

「すごいな、アルカイド君は。騎兵が来ることも探知済みとはね」

 レオンは騎兵に向かって手をあげる。するとマーダン率いる親衛隊の騎兵が、レオンの前に集結した。




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