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神殿 40

短くてごめんなさい

 大祭司が黒魔術を使っていたというのは、神殿内でも衝撃だった。神官たちは恐怖に怯え、特に抵抗もなく従順に捜査に協力した。一部逃走した神官もいたが、もれなく確保された。

 正式な発表は先だが、神殿は再編されることになり、しばらくは親衛隊と塔の監視下に置かれることになった。

 塔からはリズモンドが、親衛隊からはマーダンが調査の中心になっている。

 大祭司グレック・ゲイルブは魔力を封じられ、尋問を受けた。

 そして、神殿突入の日から十日が過ぎ、今日は親衛隊と塔の魔術師らが皇太子であるマルスに事件の詳細を報告するための会議が開かれた。

「それで、結論的にはどうなった?」

 マルスは弟であるレオンに話を振った。

 出席しているのは、親衛隊からは、マーダンとカリド、塔からはハダルとサーシャとリズモンド。そのほかにはエリラーク・ザバンアントとアリア・ソグラン、それからロイド・マーベリックも同席している。

「まず大祭司グレック・ゲイルブに関してですが、どうやらこの国をのっとるつもりだったようです」

 レオンは静かに語り始める。

「孤児院を利用し、私兵を育て、信仰の力を使って民の支持を集め、最終的には皇帝と並び立つ位置に立とうとしておりました」

 レオンが合図をすると、カリドが資料を全員に配り始めた。

 その資料にはゲイルブが隣国のエドランと深い関係にあったこと、孤児院で育てられた魔術師が塔に登録されず闇に流れたことなどが記されている。

「それから、黒魔術の研究ノートも発見され、影狼をはじめ数々の裏組織とのつながりもみられました」

「あの」

 マーベリックが手をあげた。

「何か?」

 レオンはマーベリックに質問を許す。

「影狼が大祭司と繋がっていたとは?」

「マーベリック君は、神殿のガス抜きにちょうど良かったということだ。ソグラン嬢のことで君を追放したのは、我ら親衛隊の疑いの目をそらすためだった」

「つまり私は大祭司の手のひらで踊っていたのですね」

 マーベリックは苦笑する。マーベリックを祭司にまで引き上げることで大祭司は神殿内のバランスを保っていたのだろう。そしていつ切り離しても構わなかった。

「うすうすそんな気がしていました」

「マーベリック君は優秀だったからこそ良いコマだったのだろう」

 レオンは少しだけ憐れみを込めた。

「沈む船から降りられて良かったと思います」

 サーシャは思わず口を挟む。

「内部にいたまま今回のことに気づいたとすれば、大変な目にあっていたでしょうから」

 見て見ぬふりをさせて貰えればまだいいが、犯罪に手を染めさせられたり、命を狙われる可能性があった。なんにせよ無関係ではいられなかったはずだ。

「それはそうですね」

 マーベリックは頷いた。

「殿下」

「なんだね、ガナック君」

 手を上げたリズモンドにレオンは話すよう促す。

「大祭司はメルダー祭司に黒魔術を使うよう指示したと伺っておりますが、贄の調達は誰がしたのでしょう?」

「マーダン」

 レオンは部下の名を呼ぶ。

「はい。大祭司の可能性が高いです。まだ裏付けは取れておりませんが、亡くなったのはおそらくは保護施設で保護していた浮浪者たちと思われます」

 マーダンの言葉にその場にいた者は思わず眉間に皺を寄せた。

「神殿の名で保護をして、それを黒魔術の贄にするとは」

 マルスが頭を抱えた。

「兄上、神殿は今のままではダメです」

「解散か再編か、難しいな」

 マルスは大きく息をはいた。

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