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神殿22

 呼び鈴を鳴らしたものの、誰も出てこない。

「留守ってことでしょうか?」

 カリドが目を凝らす。

「アルカイド君、防犯トラップはあるか?」

「少なくとも、魔術を使ったものはないです」

 サーシャは辺りを見回して答える。

「入ろう」

「あの、待たないので?」

 ルドワが驚いた声を出す。

「鍵がかかっています」

 ルドワの問いに答えず、カリドは門の扉を開けようとした。

「アルカイド君」

「はい」

 サーシャは解錠の呪文を唱える。

「殿下?」

「おそらく中には誰もいない」

 レオンはルドワに答えた。

「殿下、開きました」

「あの、どういうことですか?」

「下手に残っていても、ごまかしきれるものではないから」

 レオンは肩をすくめた。

「開きました」

「アルカイドさんは、私の後ろに」

「はい」

 サーシャはカリドの後ろについて、中に入った。

 神殿の入り口は全て戸が閉められていて、しんと静まり返っている。

 中庭にある花壇は手入れの途中なのか、引き抜いた雑草の山がそのままだ。草はまだ乾いていない。

 乾燥具合からみて、半日ぐらいだろうか。

 神殿の裏側の畑に回ったが、そちらにも人の姿はない。

「突然移動したようですね」

「こちらの動きを見て、ここを放棄した可能性が高い」

 レオンはため息をつく。

「中に入ろう」

 建物には、鍵が掛けられていなかった。

 待ち伏せの恐れもあるので、用心しながら中に入る。

 祭壇は建物の大きさから考えるとかなり小さいものだった。

「ずいぶん居住区の広い神殿ですね」

「まあ、信者が訪れる神殿ではないですから」

 サーシャの感想にルドワが答える。

「こちらが居住区のようです」

 祭壇脇の扉をカリドが開く。

「裏側の方が、金がかかっていそうなのは珍しいな」

 レオンが呟いた。

 廊下の窓にはガラスがはめられていて、豪奢とはいわないまでも、『清貧』なイメージとはちょっと違う。

 見えない場所なら、鎧戸を使うのが普通だ。

 ガラスは高価だから、通常は信者に見える場所に使う。

「殿下、神官長の部屋のようです」

「これはまた、豪華ですねえ」

 カリドの後に続いて部屋の中に入ったサーシャは驚く。

 本部の祭司の部屋に比べればたいしたことはない。だが、ガラス窓の入った部屋だ。

 よく見ると執務机の引き出しが開きっぱなしになっている。かなり慌てた形跡が見て取れた。

「必要なものだけ持って逃げたようだな」

「会計報告書があります」

 書棚に入っていた帳簿をカリドが取り出した。

「よほど急いでいたのでしょうね」

 ここで何をしていたのか隠すなら、帳簿の類は処分されていてもおかしくない。

「随分、金が動いているな」

 記入された数字を見てレオンは眉を寄せた。

「村以外からも購入してますね」

 サーシャは横から覗きこむ。

「あれ? デルゾラ商会って、魔石の原石を商っているはずですが」

 魔道具を動かしたり、術を封じたりするのに使用する魔石は、原石に魔力を注いで作成する。

「デルゾラは原石しか扱っていないはずなので、普通は取引しないと思いますが」

「魔石を作成するすべがあったのかもしれないな」

「素人が簡単に作れるものではありませんが、確かに違法でもないですから、それで稼ぐのはありでしょうね」

「毎月、神殿から送金されているな。あとランゼ社からも金が入っている。ランゼは魔道具の製作会社だから、魔石を作っていたのは間違いない」

「魔石を作っていたなら、魔法陣があるはずです」

 通常は陣を張って作成する。サーシャは魔力を探した。

「見つけました」

 長い間使用した魔法陣は、簡単に消すことは難しい。

 魔法陣だけでなくいくつもの力も感じた。

 明らかな黒魔術の痕跡もある。

「真っ黒だわ」

 サーシャは大きく息を吐いた。





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