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ヤルキマン  作者: 豊十香
6/80

第6話 ダンがダンっと行く

テクテクテクテク


 タケルの後ろをついていくような形で、ダンも博士も平然とした様子で校舎の中に入っていく。


「ちょっとあなたたち!!部外者がこんなところで何をしているの!!」


 案の定、2人は玄関にたどり着く前に先生に引き止められた。


「いえ!!部外者ではないので大丈夫です」


 博士はうつむきながら適当な言い訳をしてこの場をやり過ごそうとした。


「嘘おっしゃい!!そんなどこからどう見てもうだつの上がらない博士みたいな格好をした人が、当学校の関係者なわけがないでしょう!!」


 博士は真正面から言い伏せられた。


「チッ!!」


 60歳越えの男の舌打ちが炸裂した。


 これも見ようによってはやる気なのだろうか・・・・??


 ダンは、博士を擁護でもするかのような感想を横目で見ながら抱いていた。


「博士!!変なトラブルを起こすのはまずいです!!ここは一旦学校の外に出ましょう!!」


 全く納得いっていない顔をした博士の手を引っ張り、ダンは博士とともに学校の外で様子を見守ることにした。


「ちょっと博士!!悪いのは俺たちなんですから!!あまりことを荒立てるようなことはよしてください!!」


「ふんっ!!こっちだって頼まれたから来てやっているのに、なんで追い出されにゃならんのじゃ!!」


「はぁ〜〜〜〜」


 ダンは大人げない博士に対してため息をついた。その時である。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 学校の玄関の方から悲鳴が聞こえてきたのである。


ダンッ!!


 ものすごいトップスピードでダンが学校へ入って行った。


「待て待て!!ワシはお前みたいには走れんのじゃぞぉ〜〜!!」


 博士はスーツを着ていなければ歳相応なのである。あまり無理ができる体ではなかった。それでもなんとか走り出し、ダンを追いかける。


「どうした!!」


 一足早く駆けつけたダンが様子を伺う。


「ダンさん!!また上履きが盗まれたんだよ!!」


「本当か??」


「うん!!今度は俺ではないんだけれど・・・・、こいつの上履きが・・・・」


 そういってタケルが紹介してくれたのは同級生のケンジであった。


「昨日の帰りはちゃんとあったのかい??」


 ダンはケンジに質問した。


「うん!!昨日は確実にあったよ!!だっけ昨日はタケルの上履きがなくなって大騒ぎだったから、自分の上履きは安全だったんだって安心してたもん!!」


「うぅ〜〜んん、それが今日来てみたらなくなっていたというわけか・・・・」


「はぁはぁはぁはぁ、やっと追いついたわい!!」


 博士がやっと玄関へ到着した。


「博士!!新たな被害者が出ました!!」


「なんじゃと!!」


「今度は別の生徒の上履きが盗まれたようです!!」


「うぅ〜〜む。ということはタケルに恨みがある者の犯行というわけではなさそうじゃな・・・・」


「そうなりますね」


 少ないヒントの中、悩む博士たちの元へ、先ほど校庭で2人を指導した先生がやってきた。


「こら!!あなたたち!!また、勝手に入ってきて!!警察を呼びますよ!!」


「ヤバッ!!」


 ダンは焦った。


「先生・・・・。実はおたくの生徒さんたちの上履きが2日連続で盗まれているようなのじゃ!!」


 博士は臆することなく言った。


「まぁ!!それは本当ですか??」


「そうなんです!!昨日は僕のが、そして今日はケンジのが盗まれたんです」


 タケルが先生に報告する。


「それは大変!!ちょっと待っていなさい!!」


 そう言うと先生は急いで学校の中へ入って行き、すぐさま戻ってきた。


「一旦、これを履いておきなさい!!」


 そういってスリッパを持ってきてくれたのである。よく見てみるとタケルも同じスリッパを履いていた。


「何か踏んで足を怪我したら危ないからね!!あなたたち子供には馴染みが薄いかもしれないけれど、スリッパは履きやすいから、これがあれば学校の中を歩き回っても大丈夫よ」


「ありがとう先生!!」


 タケルが笑顔で感謝した。


「先生ありがとうございます!!」


 ケンジも笑顔で感謝した。


 優しい先生だな。


 その様子を見たダンは、こんな事件がありながらも、タケルがこの学校に通っていることに少し安心感を抱いた。


「お二人とも今日のところはお引き取りください!!子供たちのことを気にかけてくれるのはありがたいのですが、ここは学校です。生徒たちを守るのは、私たち先生の役目。どうか私たちにお任せください!!」


「はい!!私たちも出すぎ真似をしてしまい、申し訳ございませんでした。私たちはこれでおいとましますので、子供たちのことをよろしくお願いします!!」


 ダンは先生に深々と頭を下げ、博士とともに玄関を後にした。


 おわぁぁぁぁ!!


 校舎を外へ出る途中で、何気なく子供たちの靴入れを見ていたダンは心の中で驚いた。


 これ今話題のバーズルマックスじゃねぇか!!


 バーズルマックスとは有名スポーツメーカーから発売された履き心地最高のスポーツシューズの名前である。CMなどでもよく見かけ、イケメン俳優などがドラマで身につけていたこともあり、今は半年先まで入荷待ちとも言われ、転売なども問題視されるほどの人気商品である。


 今の子供はお金を持っているなぁ・・・・。んっ??


 ダンは何かに気がついた。


 かぁ〜〜〜〜!!いるいるいるいる、こういうことする子!!まったく!!かかとがガッツリ踏み潰されてるじゃねぇか!!


 そう!!そのバーズルマックスはかかと部分が左右ともに押しつぶされたようにぺしゃんこになっていたのである。


 もったいねぇぇぇぇ!!きっとこの子の家はお金持ちで、何度もこういう高価な靴を履いてきたんだろうな・・・・。だからかかとを踏んで使っても何も感じないのだろう。っというか、子供の頃はそんなものか!!俺も普通に買ったばかりの靴のかかとを踏んでたきがする。でも、他の子の靴を見てみてもこの靴くらいか??そんな履き方されているのは・・・・。


 そういえば、この学校ってお金持ちの子が多いのか??なんだか校舎も立派だし、先生も気が利くし・・・・。そうなるともしかしたら上履きだけでもかなりのお値段したりして。まさか、それ目当ての犯行か??うぅぅぅぅんん!!


 と、ダンが熟考していると。


ドガァァァァァァァァンンンン!!


「痛たたたたたたたたたた!!!!」


 ダンは閉めっぱなしの玄関のガラス戸に激突したのである。


「お主は何をしとるんじゃ??」


「へへへへ、すみません!!」


 ダンは照れくさそうに笑った。


『ハハハハハハハハハハハハ!!!!』


 そんなお茶目なダンを見て、その場に居あわせた子供たちもみんな笑った。




 そしてその日の下校時間。


「博士、もう帰ってもいいんじゃないですか??」


「言い訳ないじゃろ!!ダンよ!!子供たちの上履きがなくなっているということは、犯行は子供たちが下校した後に行われているということじゃ!!下手すれば、先生たちさえ帰った後かもしれん!!ということは、先生たちに犯人探しをお願いしても見つけられんかもしれんということじゃ!!」


「確かにそうかもしれませんけど・・・・!!もうちょっと先生を信じましょうよ!!」


「いやじゃ!!ワシは絶対に自分の力で犯人を見つけるんじゃ!!」


「はぁ〜〜〜〜」


 "まったくこの人は"という言葉が、後に続きそうなため息をダンはこぼした。その時である。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 朝と同様に校舎の玄関の方から悲鳴が聞こえたのである。


ダンッ!!


 朝と同様にものすごいトップスピードでダンが学校へ入って行った。


「じゃ〜〜か〜〜ら〜〜!!ワシはお前みたいには走れんと言っておるじゃろぉぉぉぉぉぉ!!」


 体への負荷がエゲツない"てんどん"で、博士はまたしてもダンを走って追いかけることになった。


「大丈夫か??今度は誰の上履きだ??」


 先に駆けつけたダンがちょうどその場にいたタケルに様子を伺った。


「ダンさん!!違うんだ・・・・」


「何??どういうことだタケル??」


「今度は上履きではなくて、普通の靴なんだよ!!」


「なんだって??」


「ここに置いてあったミツルの靴が盗まれたんだ!!」


 そう言ってタケルが指差したのは、朝、ダンがたまたま見かけた、バーズルマックスが入っていた場所であった。

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