第2話 脱・落ちこぼれ記念日
「キャァァァァァァァァ!!」
ダンと博士は握手を解いた。と、同時に。
シュバッ!!
ダンが猛スピードで女性の悲鳴が聞こえた方へ走って行った。
「ちょっと待たんかぁぁぁぁ!!」
飛び出して行った。ダンを追いかけるように博士も走り出した。
「パスパスパスパス!!地球には本当に可愛い女の子が多いのだパス!!」
「や・・・、やめてください・・・・」
悲鳴をあげた女性は8本以上の手を持ったタコの化け物に捉えられていた。
「パスパスパスパス!!ここで声を上げても誰も来ないパス!!ここは閑静な住宅地、さらに今は平日の14:00だパス!!もしこんなところをウロウロしているような奴がいたら、そいつは会社をクビになって家族には会社に行ってきますと言って外に出て、そのまま定時まで時間を潰している確率が高いのだパス!!そんなやつに出くわしたとしても、俺が負けるわけないのだパス!!」
「てりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ドォォォォンン!!
女性を掴んでいた手に向かってダンはキックをかました。
「なんだ貴様??」
タコの化け物がダンに問いかける。
「お前こそなんだ??」
ダンはタコの化け物に聞き返す。
「お前こそなんなんだ??」
「そんなことよりお前はなんなんだ??」
ダンとタコの化け物の不毛なやりとりは続く。
「貴様人間だろう・・・・??」
「だったらなんだというんだ!!」
「パスパスパスパス!!人間がこの俺に勝てるとでも思っているのか??いいか俺はなぁ、たこ焼き星から来たタコの十八ちゃんだ!!」
「だからなんだ??」
「えぇぇぇぇ・・・・、お前まだそれ続けるの??」
「スキありぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ドガァァァァンン!!
ダンのキックが十八ちゃんに炸裂した。
「お前ぇぇぇぇ!!今のはどっちが正義か議論ものだぞ!!」
「知らん!!貴様こそ真剣勝負の最中に油断しているからいけないのだ!!」
「カッチーーーーンン!!お前は俺を本気で怒らせたぞ!!くらえ!!タコタコ真拳 十八番パンチ!!」
ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!
ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!
ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!
十八ちゃんの18本の手から強力な連続パンチが繰り出された。
ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!
ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!
ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!ドガ!!
ダンは18発ものパンチについていくことができず、そのほとんどを食らってしまった。
「ガハァァァァァァ!!」
「パスパスパスパス!!どうした〜〜??さっきまでの威勢は??所詮人間の実力などこんなものよ!!情けない・・・・!!」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!!」
ダンは十八ちゃんの言葉に怒りを感じ気力を振り絞って立ち上がった。
「お前のような異星人がいる限り!!俺たち人類は負けない!!そして、世界に平和をもたらすのだ!!」
「パスパスパスパス!!そう粋がっている貴様がこのざまだ!!」
「うるさい!!俺は負けなんて認めない!!俺が負けを認めない限り!!俺は負けないのだ!!」
「はぁ〜〜〜〜??なんだその屁理屈は??そこまで言うなら・・・・わかった!!俺様のこの18本の手で、貴様の口を無理やり動かし、負けましたと力づくで言わしてくれるわ!!」
「できるものならやってみろ!!うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ダンは拳に力を込めて十八ちゃんにパンチを放った。
スッカァァァァァァァ!!
なんと十八ちゃんは軽くダンの攻撃を避けたのである。そして、そのままダンの両頬を鷲掴みするような形で持ち上げたのであった。
「くそぉぉぉぉ!!離しやがれ!!」
ドガドガドガドガ!!
ダンは宙に持ち上げられた状態で足をバタつかせ、その反動で十八ちゃんに蹴りを入れた。
「お前は自分の今の状態がわかっていないようだな!!こちらに向かってきている時にすでに足元がふらついていたぞ!!そんな状態でよくも俺を倒すとか言ったものだ!!そんな失礼極まりない奴は、俺が今からぶっ飛ばしてやる!!あの世で思いっきり後悔しろ!!タコタコ真拳 十八番パ・・・・!!」
と、言いかけたその時だった。
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
突然、十八ちゃんを呼び止める声が聞こえたのである。
「は・・・・博士!!!!」
両頬を鷲掴みにされているため発音は覚束ないが、ダンが声の主の名を呼んだ。
そう、声の主はヤルキ博士だったのである。
「ふぅ〜〜〜〜、ダンよやっと追いついたわい!!まったく無茶をしおって!!」
「パスパスパスパス!!誰か助っ人でも来たのかと思えば、なんだこのヨボヨボのジジイは!!」
十八ちゃんはダンを持ち上げたまま博士の方を向き嘲笑った。
「はははは!!貴様、今、ダンに余裕で勝てる気でおるじゃろ??」
「当たり前だろうが!!この状況を見れば誰でもそう思うはずだ!!」
「残念じゃったな!!昨日のダンであればそれで倒せたじゃろう!!しかし、今日のダンは私と出会っている!!」
「だからなんだというのだ??」
十八ちゃんはイラっとしながら聞き返した。
「博士・・・・危ない!!逃げろ・・・・!!」
「ダンよ今日、お前は生まれ変わるのじゃ!!そして、戦士としてうだつの上がらなかった毎日に終止符を打て!!わしの自慢のこのヤルキスーツを使って・・・・!!」
「やる気スーツ??」
ダンは博士に質問した。
「そうじゃ!!このスーツはな実力ではなく、人のやる気に反応してパワーアップしていくスーツなんじゃ!!」
「スゲェェェェェェ!!!!」
ダンは目をキラキラさせて感動した。ダンはピュアなのである。
「このスーツをお前にやる!!わしだって自分の夢が叶わん辛さを十分知っとるつもりじゃ!!だからせめて、わしのちっぽけな発明が誰かの役に立つのなら、使って欲しいと思っておる!!ダン!!お前からはとてつもないやる気を感じるのじゃ!!わしもやる気ひとつでここまで来たからわかる!!大丈夫じゃ!!このスーツがあればそんなイソギンチャク、すぐにポイじゃ!!」
「俺はタコだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
十八ちゃんの怒りが手に力を入れさせる結果となり、ダンはさらに締め付けられた。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」
ダンはもがき苦しんだ。
「ダァァァァァァンンンン!!!!待っていろ!!すぐにこのスーツを貴様に装着させてやる!!」
「博士!!今、俺に近づいたら危ないのがわからねぇのかよ!!」
「ダンよ!!心配はいらん!!こんなこともあろうかと思って、このスーツには自動装着システムを導入してあるのじゃ!!このボタンを押せば、あとは自動で装着してくれるわい!!わざわざ近づく必要などないのじゃ!!」
「パスパスパスパス!!そんなことを俺が許すとでも思っているのか??こちらにスーツが来たところを叩き潰してやる!!」
「はははは!!できるものならやってみろ!!」
「何だとぉぉぉぉ!!!!この老いぼれがぁぁぁぁ!!!!」
ギリギリギリギリ!!
また十八ちゃんの手に怒りで力が入った。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ダンはまたも悲鳴をあげた。
「ダァァァァァァァァン!!!!お前の本気を世界に披露してやれぇぇぇぇ!!」
そう言って博士はやる気スーツの自動装着ボタンを押した。
ポチッ!!
ガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!!
博士の両手の上でやる気スーツが振動しはじめた。
ドギュゥゥゥゥゥゥゥンンンン!!
スーツはそのまま博士の両手を離れ、空高く舞い上がった。
「バ・・・・バカな??なんだあの動きは??スーツが意志でも持っているようだ!!」
十八ちゃんはやる気スーツに驚いていた。
ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!
そしてスーツは装着対象の元へ勢いよく飛んでいった。
ジャキィィィィィィィィィンンンン!!!!
そして見事キレイに装着が完了した。
博士に・・・・。