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3.よくある風景 魔王軍幹部四天王議会

 暗い魔王城幹部用会議室では魔法の水晶から投影されスクリーンに映し出された映像を鑑賞する黒い3つの影があった。


「フーフッフッフッフッフッ」


「クークックックックックッ」


「ハーハッハッハッハッハッ」


 3つの影は高らかに笑う。


「ドラーゲンがやられたか」

「フフッ、奴は四天王の中でも最弱」

「人間しかも勇者ですらない女に負けるとは魔王軍幹部の面汚しよ」


 そして3体の影は再び大袈裟に声を合わせて高らかに笑うのであった。


 その時、パチッとスイッチを押す音がして部屋に灯りが点される。

「何言ってるんですか」


 呆れるように言い放ったのは魔王の世話係の可愛らしい少女の小悪魔リリィであった。

「ドラーゲンさんがいつ四天王最弱になったんですか? 私が知る限り最強のはずですが」


 3体の幹部は涙目になりながら弁解する。

「いや、だってそう言っとかなきゃ格好つかないじゃん。あのドラーゲンが一撃だよ。眼を開けたまま夢見てるかと思ったぞ。だいたいなんで最初から最強のドラーゲンが言ったの、俺は反対したはずだよ」


「おいおい嘘つくなよ。確実に姫を攫って勇者と魔王様との戦闘前にリベンジフラグも立てれるようドラーゲンが行くべきって言った時にお前は真っ先に賛成してただろ」


「いやいや、なんでそんな負けフラグ立てたんだよ俺たち。しかも、そのフラグすらへし折られちゃうし。もうどうすんだよ?」


「どうするもこうするもないだろ、ドラーゲンを瞬殺する奴だぞ今の俺らじゃどう足掻いても敵わない」

「そうなると……」

 3つの影は真剣な表情で互いに視線を交わす。なんだかんだ言っても最高幹部、それまでのお茶らけた空気が一変するのを感じリリィは素直に感心した。しかし、


「「「籠城だ」」」

 あまりに消極的な作戦にリリィは思わずずっこける。


「そうだ、それしかない」

「そうだ決してあいつと戦ってはいけない」


「そうだ、あの化け物を倒せるのは魔王様しかいない」

「魔王様が復活するまで絶対にこの城にあの女を入れないようにするんだ」


「我々に残された道はそれしかない」

 3体は円陣を組み手を重ねエイエイオーッと結束を強めるのであった、。そんな彼らを横目に魔王世話係は呟く。


「やれやれ、こんなんで魔王様復活まで持つのでしょうか?」

 バサバサッと翼をはためかす音が聞こえてきた。姫と間違えられた勇者ディアを連れたレッドレッドラゴンが魔王城に帰ってきたのだ。


「姫様を連れたトカゲーマンたちが戻ってきたみたいですよ」

「そうだ、まずは姫だ」


「姫を魔物にしなければ」

「では行くぞ」

「お前が仕切るな」


 3体の幹部はレッドレッドラゴンを出迎えるため部屋を出た。少ししてから大声が響く。

「泣くな! 泣くなお前ら! ドラーゲンが己の命を賭してまで完遂しようとした任務はまだ終わっていないんだ! 奴が最後まで果たせなかった任務をお前らが成し遂げるんだ」

 泣くなというその声も涙声であった。その演説の後にうあああああっとより一層大きな泣き声が響き渡る。


「でも、俺らだけじゃ所詮ただのトカゲ」

「ドラーゲンさんなしじゃ俺らはただのヌルヌルした気持ち悪い生き物なんだ」

「イモリ、ヤモリとの違いがわからないと言われる俺らには無理っすよ」


 あまりに弱気な発言ばかりするトカゲーマンたちに捕らわれの勇者ディアはいらいらした。

「あなたたちのことはよくわかりませんが……何をメソメソしているんですか! ドラーゲンさんはこんな情けない、ウジウジヌメヌメゲロゲロしたあなたたちを生き残すために命を賭けたんのですか?」


「ウジウジ……」

「ヌメヌメ……」

「ゲ……ゲロゲロ?」


「彼の死を無駄にしてはいけません。皆でその任務をやり遂げ天国で見守る彼を安心させてあげましょう」

 ディアの言葉に我に返ったトカゲーマンたちは涙を止めた。


「そうだ、姫の言う通りだ」

「あっ、私は姫じゃなくてゆう……」


「そうだ姫じゃない……姐さんだ。魔王様の奥さまになるお方、そう我らの姐さんだ。皆の衆、姐御の言う通りドラーゲンのためにもこの任務をやり遂げるんだ」

「うおおおおおお」


「姐さん? 魔王の奥様? 何の話ですか? そういえば、そのドラーゲンさんが皆さんに託した任務っていうのはなんなんですか?」

「そりゃー、姐さんを魔王様の嫁に迎えるために魔物化することですよ」


「えっ? 私を魔物化? 魔王の嫁? それはちょっと待ってって、あ、いやーーーーー」

 直後に姐さんコールがかかり、掛け声は城内へときえていくのであった。


「攫ってきた人間に励まされるとは……やっぱダメかもしれません魔王様」

 魔王世話係はそう呟いて魔王の部屋の花瓶の水差しに向かうのであった。


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