表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

Vol.2 バレンタイン

 

 ――サイアクなバレンタインデーだった……


 予想はしていたけど、木村くんは沢山の女の子からチョコレートをもらっていた。


 やっぱり木村くんって、女の子にモテるんだね。

 あいぽなんか、普通の女の子過ぎて、木村くんには釣り合わないよ……。


 私は、徹夜で作った木村くんへのチョコレートを、私の『恋』と一緒に焼却炉に捨てて、放課後の校舎をあとにした。


 ――ヤダ……雨!?


 まるで、私の心が泣いてるかのように、藍色の空からは雨が降ってきていた。


「あいぽ、ナニ先帰ろうとしてんだよ!」


 校舎の片隅で、空を見上げ悲しみに暮れていた時だった。

 少し怒ったような木村くんの声が、突然に聞こえてきた。


「あいぽの事は、ほっといてよ! 木村くんには、木村くんのコト好きな女の子がいっぱいいるじゃん。あいぽじゃダメだよ……。あいぽじゃ……」


 気がついたら、私の頬は涙に濡れていた。


 さよなら木村くん……。

 そして、こないだは『好き』って言ってくれてありがと。


 あいぽは、今日で木村くんの事は忘れます。

 だって、あいぽと付き合ってたら、きっと木村くんはメーワクするよ。


 …………。


 …………。


 どのくらい時間が流れたのだろうか?

 うつ向くあいぽに口を開いたのは木村くんだった。


「……ばか。世界中の女がオレの事どんなに好きって言っても、あいぽから言われる『好き』には敵わないよ」


「木村くん……」


「さぁ、一緒に帰ろう。傘、持ってるか?」


 そう言って、私の頭を撫でてくれる木村くんの眼差しは優しさに満ちていた。


「傘……!? あっ、そうだ!」


 私は、ブレザーのポケットにパラソルチョコを入れていたのを思い出し、それを取り出し、木村くんを上目で見上げて微笑んだ。


「はい、木村くん。ハッピーバレンタイン。大好きだよ」


「あいぽ……!」


「木村くん……!」


 私たちは、降りしきる雨の中、ぎゅっと手をつないで、歩き出した。


 ぎゅっと……


 ぎゅっとね!




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ