ep2
「チッ、夜警の野郎が来たぞ」
「行かせねぇよ」
ここ06区街は犯罪の少ない地域ではあるが、もちろん0ではない。
能力を持て余したやつらがいない訳が無い。
「こっちにゃ、夜能があんだよ!」
3人組の窃盗犯のリーダー格の男が、言葉と共にこちらに向かって手をかざした。咄嗟に防御の構えをとる。
「なぁにビビってんだぁ?ただの煙だぜ?夜警さんよぉ」
ぼふん、と男の手から煙が溢れ出る。一瞬で目の前の景色を煙の白が覆っていく。
「これは…」
口を手で押さえながら煙から離れる。
「心配すんなって、毒はねぇから。でもなんも見えねぇだろ?こっちからは丸見えなんだけどな」
「兄貴の夜能があれば夜警なんざ怖くねぇな」
カチャリ、と音がする。訓練で聞き慣れた、拳銃の安全装置を外す音だ。なるほど、向こうには俺が見えているのか。なかなか厄介な能力だ。
「要するに、お前はここでお陀仏ってこったぁ!」
だが、
「残念だったな」
右足を大きく引き、構える。
「俺には関係ない」
ビュッ、と右足を蹴り上げる。その瞬間、空気を蹴った風圧で全ての煙を吹き飛ばし、今まで四方を囲っていた煙が跡形もなく霧散した。
「なっ…」
口をあんぐりと開けた夜犯達の姿を捉える。驚く暇も与えず、地を蹴り接近する。その間僅か0.8秒の事だった。
「烈脚」
きっと、傍から見ていた人からは俺が3人に近付いたようにしか見えなかっただろう。その間に俺の脚は、3人それぞれの顎を精確に蹴り飛ばしていた。
「これが俺の夜能だ」
「午前1時37分、窃盗罪並びに夜間公務執行妨害、暴行未遂で現行犯逮捕」
アスファルトの上に横たわる3人に、カチャリと手錠を嵌める。輸送車の要請と上司への報告も行う。
「こちら06区街署所属、第三機動知渓。06区中央にて通報の窃盗犯ら3人組を発見、交戦の後に現行犯逮捕。3人は拳銃を所持しており、リーダー格の男は手のひらから煙幕のようなものを発する夜能を使用する模様」
『おー、仕事早いねぇ。お疲れさん』
「…支部長、もしかして今日ずっと現場支援するつもりですか?」
『そりゃあ、キレイ派で年上好きの知渓君が住むこの06区の平和を守らないといけないからねぇ?』
「その話はもう終わりましたから!まったく懲りないなぁ…で、何が知りたいんですか?」
『拳銃の種類は』
「そう言えば、日本じゃあんまり見ない型でした。〈RB71〉…と記されてます」
『くうぅぅぅ、聞きたくなかったぁ…
それ、〈VII〉が輸入してるやつだ』
「と、言うことはまさか…」
『少なくとも近くには確実にいやがるな。そいつら聴取して入手法突き止めるぞ』
『ったく、面倒になって来やがった』