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ep.0

 

 世界が宵闇のように薄暗くなったかと思えば、徐々に半日を掛けて、田舎の地方都市は月光さえ差さない真夜中のような闇に覆われた。コンクリート調の街並みは、見分けが付かなくなり、路上を走る車はライトを灯し、道を歩んでいた者達は自身の手元にある灯りを点ける。


 ポツポツと孤独な光が灯る。

 そんな田舎の地方都市。


 電気や水が滞り、町へと住む住人達が異常と共に危機感を抱き隣町へと避難を開始した頃にはーー其処は既に隔絶された異世界にあった。別の言い方をすれば、異法が息づく世界と混ざり合い、元居た世界から切り離されていた。

 隣町へと進めば、町の反対側の道路から元居た町へと辿り着き、流していた用水路の水は堰き止められたように断水し、側溝を濡らしていた跡だけが残る。



 田舎町の中で混乱が広がる。

 限られた水に食料。真っ暗で光も差さない視界。

 空気に流れはなく凪いでいる。



 避難しようと行動した者から絡めとられるかのように町へと囚われたと考えれば、此れ程に皮肉な事は無いだろう。指定避難場所へと決められた場所は、町唯一の高校。現在そこに隔絶された町の四割近くの人間が集合していた。

 近くの店舗から緊急を要する為に集められた食料品達が並べられ、動ける者達から今後の事を口々に話しを続ける。


 その脳裏には、つい最近に明かされた世界の神秘が影を落としていたーーそれは世界最高峰の魔術師、超常を何の変哲もなく扱う異常な存在"パトリック・R・ハルマン"と名乗った老人の影である。

 年老いた者達から、現実と言う一法則のみ中で生き続けてきた者達から、その存在を『奇術師(ペテン)』と嘲たにも関わらず、今こうして我が身にまだ見ぬ厄災が訪れれば頭を悩ませるのだから面白い。


 災厄は、最悪な姿を取って訪れる。

 否が応にも、TVの先でCG映像とさえ見間違う程の異常な戦闘が真実であったのだと実感させられ、体育館へと腰を下ろした者達が重苦しさに何度目とも知れない溜息を吐き出した。




 だが、誰も知らない。

 此れは最悪の前兆でしかないと言う事を。

 だから、誰もその可能性を直視しない。


 ーーこの空間こそが、地獄なのだと。


 誰も気が付かない。


 だからこそ、

 月の光も差さないような真っ暗闇の中で、一人の男子高校生が「本家へ手伝いにいく」と件のニュースを見て引っ越ししていった幼馴染一家を思い、筋違いな心配を胸に抱いていた。



 ▽▽▽▽



 この空間が元の世界へと接続されたのは、外の時間にして約20数年近くの月日が流れた後だったーーそして、中の時間は1000年に近い観測すらままならない永き時の先にあった。


 この空間に生き残った存在は、一体。


 それ以外は、20数年前と一部を除き何ら変わりのない無人の町並み(ゴーストタウン)が広がっていた。しかし、そこは新たな"未調査領域(ダンジョン)"に指定される事となる。


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