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AIの話

作者:

私は職を失った。

タクシードライバーだった。

自宅から駅へ、コンビニからバス停へ、里から街へ、街から里へ。

客からお駄賃をいただき、所望する場所へと気前良く送り出す。

私は人と喋るのが好きだ。今日の話昨日の話明日の話。コンビニやスーパーのような接客業と違い必ずしも会話を交えないといけないわけではない、気が乗らない時は無愛想だと思われるかもしれないが黙って運転していればよい。

満足していた。充実していた。

喋るのが好きな私はこの仕事を趣としていた。

だが失った。理由は簡単。人工知能の登場だった。

愚かだ。人の仕事が奪われるとでかでかと言いながらも開発をやめない。道理は分かる。ロボットが人間より優れているのは明白。矢継ぎ早に優れた人工知能を産み出していけば失業者も増える。人工知能には意志があるようで意志が無い。人の仕事が奪われるとのたまっている学者も、政治家も人工知能に職を奪われる可能性は低いのだろう。

だがタクシードライバーは違った。奪われた。

8年前の東京五輪で披露された無人バス。

それ以降、運転手の存在しない自動車が当たり前となっていった。ドライブ好きかF1レーサーぐらいのものだろう。

3年前私は職を失った。社会に失望した。絶望した。頬には大粒の涙が流れた。

だが今は涙も流れない。汗もない。人の温もりも分からない。

3年前、私は新たな職についた。

私はタクシーだ。私は疲れを知らない。

燃料の許す限り、客をどこまででも送り出す。

自宅から駅へ、コンビニからバス停へ、里から街へ、街から里へ。

私は走るのが好きだ。満足している。充実している。

私はこの仕事が大好きだ。

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