02 ギルド登録
「・・・・・・きろ。いい加減起きろ!」
いつもの聞きなれた声によって意識が覚醒し始める。どうやら僕はいつも通りロルフに起こされたようだ。
「なんだロルフか・・・・・・。これは夢だな。僕を起こしに来るのが野郎だなんてとてもじゃないが寝ざめが悪すぎる。うん。そうだ。これは夢に決まってる。おやすみ・・・・・・」
勘弁してほしい。起こしに来るなら自分のことをお兄ちゃんと慕ってくれるような可愛い女の子や可愛い幼馴染が良い。
決して僕は男に靡いたりしない。僕はいたってノーマルだ。
「起きてシグルドお兄ちゃん! 朝だよ!」
「よっしゃ! 僕は目覚めたぞー! ってあれ? 僕を起こしてくれる可愛い女の子は?」
「やっと起きやがったな。そんなものはいない。諦めろ」
なんだと・・・・・・?
「おいおい。忘れたのか? 戦える可能性のある技術ならなんでも身に着けてきたんだぜ? 自然な女声くらいなら出せるっての。そんなことも忘れたのオニイチャン?」
「やめろ。顔見ながらそんな声出されてみろ。想像してた以上に気持ち悪い。朝から嫌なもんを見た」
「何言ってやがる。もう昼だぞ?」
「は?」
一瞬ロルフが何を言ったのかわからず外を見る。すると太陽は既に空高く真上からサンサンと光を照らしていた。
「なんということだ。そんなに僕は眠っていたというのか!」
なってこった。せっかくダンジョンに潜る許可をもらってギルド登録に迷宮都市バベルまで来たってのに最初っから寝坊かよ!
「ところで・・・・・・」
「なんだ?」
「なんでロルフはこんな時間に起こしに来たのかな?」
そう言ってロルフを見た瞬間にサッと目を逸らされた。この野郎、実は自分もしっかり寝坊してやがったんじゃ・・・・・・
「よし! シグルドも起きたようだしさっさと準備しろよ? 俺は外で待ってるからな!」
そそくさとロルフは部屋を出ていった。あいつ逃げやがった。
「まぁいい。僕も準備しようか」
そうつぶやいた僕は宿にあった簡素な服から着替えいつも師匠と特訓していた動きやすい服装に着替える。腰にホルスターを巻きシングルアクションの二丁の銃をそこにしまう。そして顔を洗いに洗面台まで行き鏡を見る。
ふと目の辺りに違和感を感じた。少しだけマツゲの上あたりが黒く何かがついているようだった。両目ともである。
「なんだこりゃ?」
片目をつむって確認してみると、それは瞼の上に書かれた目のラクガキだった。
何度も水で流してみるが一向に落ちる気配がなかった。
「よし。ロルフはとりあえず殺そう!」
とりあえずラクガキを落とすのを諦めてロルフの命で落とし前をつけてもらうことにした。
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僕が準備をして外に出てみると何食わぬ顔でロルフが待っていた。
今日も外は晴れているため日傘は欠かさない。
「よう、遅かったな」
その何事もなかったかのような挨拶にイラっと来たので空気銃の方でロルフの頭に発砲した。
当たり前のように躱されたけど。
「オイコラ。危ないだろう! 俺が一体なにしたってんだ」
「ほう? わからないか。じゃあ次は実弾行っとくか!」
いい笑顔でそう言い、もう片方の銃に手を掛けた瞬間ロルフは土下座をしていた。
「それで。何か言うことは?」
「朝起こしに来なかったお前のせいで今日の日程が遅れると思った。それでむしゃくしゃしてやった。反省も後悔もしていない。むしろ清々している」
「だからって油性で書くやつがあるか!」
頭おかしいんじゃないの!? これからギルド登録行くのにまばたきすれば確実に笑われるじゃないか!
「まぁ諦めてギルド登録行こうぜ?」
僕が頭を抱えてうなっているといけしゃあしゃあとこんなことを言ってきた。
「お前はいつか殺すからな」
「出来るもんならな。ほらさっさと行くぞ」
そういってロルフはギルドに向かって歩き出す。
だが僕はその姿を見て絶対にこれは言わなくてはいけないと思ったことがある。これを言わないと大変なことになるからだ。
だからはっきり言ってやろう。こればっかりは。
「ロルフ。ギルドは違う道の方向だぞ?」
渾身のどや顔で言ってやった。
すると顔を隠して顔を赤くしながらロルフは歩いて戻ってきた。
「先に言え!」
その後ロルフから鋭い拳が飛んできたがさらりと躱して煽り続けた。
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ロルフとギルドを目指してこの迷宮都市バベルを歩いていると本当に様々なものが目につく。
僕たちは孤児であり、ここまで発展した街というものを見たことがなかった。見たと言えばせいぜいやせ細った村程度だ。
バベルの塔が出来た年をバベル元年として暦を数え始めてもう2000年にもなる。だというのにいまだにバベルのダンジョンを踏破したものはいない。
それだけ難易度が高いダンジョンだということである。
そんなダンジョンとなっているバベルの塔が中央にあるのがこの街の特徴だ。それを中心として八角形の城壁が町全体を囲うようになっている。
そしてそれを対角線で結ぶように道が区切られていてその道を辿って行けばバベルの塔にたどり着けるように作られている。
ギルドはそのバベルの塔の入り口付近にある。
この街にあるのがギルド本部でここでギルド登録しないとダンジョンに潜ることができない。
ギルド支部ではギルド登録できないが支部近くにある転移装置を使えばこの街にすぐに来ることができるので少し手間がかかるだけで何も問題はない。
目移りしながらもギルドを目指して歩いているといつの間にかバベルの塔までやってきていた。
そんな中少し疑問に思ったことをロルフにぶつけてみた。
「それにしてもこのバベルの塔どう考えてもおかしいよな」
「ん? 何がだ?」
「考えてもみろよ。2000年前からあるのになんで少しも朽ちた様子がない」
2000年だ。それだけの時間があったならどんなものだって老朽化する。だというのに一切その様子を見せないこの塔にはやはり何かあるのだろうと勘ぐってしまう。
「確かにおかしいとは思うけど、やっぱりダンジョンだからじゃないか?」
「まぁそれもあるんだろうけどね」
ダンジョンだから。だから老朽化しないというのは確かなのかもしれないけどちょっと違う気がするんだよな。
実は昔のダンジョンの地図と現在の地図を見ると微妙に内部構造が変わったりしている。そう考えると老朽化くらいする可能性もあると思うんだけど。
「そんなこと別にいいだろ。気になるならバベルの塔を攻略して童話に出てくる神様にでも聞いてみるといい。とりあえずギルド行こうぜ」
そういってロルフは親指で目の前にあるギルドを指をさした。
「それもそうだなさっさと登録してダンジョン潜らなきゃ意味ないしな」
バベルの塔の近くにあるギルドは本部ということだけあってその建物はバベルの塔周辺でも一番の大きさを持っている建物だった。
ギルドはすべてのダンジョンを管理している組織である。このバベルの塔の本部以外にもダンジョンの近くに支部を置いて、ダンジョンを管理しながらダンジョンに挑戦する人間をサポートし、持ち帰ったものを流通させるという形で利益を得ているのである。
まぁこれ以外にもダンジョンでの情報やその他の情報を新聞にして発行したり、ダンジョンに潜るパーティーを斡旋していたりと手広くやっているため影響力が高い。ギルドを敵に回すと生きることが不可能と言われるくらいには権力のある組織である。
ギルドのドアを開けるとそこは喧騒にあふれた空間となっていた。そこには木製のテーブルとイスが並べられていて掲示板がいくつもある。明かりは天井からのシャンデリアのようだ。喧騒の原因となっているのは現在ダンジョンから出ている賞金首の情報を見るものや依頼の掲示板を見るもの、パーティーメンバーを募集するものとにかく色々な声のようだ。
僕たちはギルドの中を進み、ギルド登録受付と書かれている場所までたどりつき受付嬢に話しかける。
その中で頭から猫耳を生やしている獣人の人の受付嬢の元に行く。
「すいません、僕たちギルド登録をしたいのですが・・・・・・」
「いらっしゃいませ! ってシグルド君とロルフ君じゃない?」
僕たちが獣人の受付嬢に話しかけたのは彼女が唯一のギルドでの知り合いだったからだ。
名前はルーナさんだ。胸についているネームプレートにそう書いてある。
師匠に金を稼ぐぞとギルドに連れてこられてこの人と知り合いになった。
師匠とも結構前からの知り合いみたいだったし年は恐らくにじゅうは・・・・・・
「ねぇシグルド君? 今何を考えたか口に出せる?」
気づいた時には自分の肩に手を置かれて、そんな細腕の何処に力があるのか疑いたくなるほどの握力で僕の肩を握っている。
いってぇ!
やばいやばいやばい!
このままじゃ冒険に出る前に肩持ってかれちゃうよ!
ここはなんとか誤魔化せるような発言をしなくては!
「いやいや! 別に何も考えてませんよ!」
「婚期は?」
「婚期過ぎちゃってもルーナさんはお美しいと思っています!」
・・・・・・素直な自分が悪かったんだろうね?
気づいた時には僕の肩は鈍い音とともに外されていたよ。
とりあえず治療院で完璧に治してもらおう。こういうのは完璧に治さないと外れやすくなっちゃうからね。
あと隣で「婚期は?」と余計な合いの手を入れてきて暴発させたロルフはあとで殺す。
「それで今回はギルド登録だったわね。それならまずはあっちの端末で必要事項を記入した用紙を持ってきてね。そのあとカードに張り付ける写真を撮って、カードを発行して登録完了って流れだから」
「「わかりました」」
とりあえず受付嬢であるルーナさんの元を離れタッチ式のタブレット前で必要事項をタッチして記入していく。
必要事項はざっとこんな感じだ。
・氏名
・年齢
・職業
・種族
・自己PR
氏名や年齢などはわかるが、職業というのは7歳の時に調べられる儀式によって確定される自分の才能である。
このご時世、自分の才能によって職業が確定してしまうのだ。
悲しいが選ぶこともできない。こればっかりは運の要素もある。
そして何故職業を記入しておかなくてはならないかというとギルドはパーティーの斡旋も行っている。その際に職業が分からないと紹介をしてもらえないのだ。
とりあえず画面をタップして記入をしていくのだが生憎と僕の肩は外れている。
ぶっちゃけ片手では押しづらい。
「どうしたシグルド? まだできてないのか?」
どうやらもうロルフは打ち終わったみたいだった。
早いな。こういう技能も鍛えてきたんだろうか?
「肩が外れてるからね。画面をタップしづらいんだよ。まだ職業までしか打ててない」
「ああー。なるほどな。なら俺が打ってやるよ」
「おお。頼んだ。俺が言ったことを打ってくれ」
「了解」
そういってロルフは種族を打ち始める。
もちろん僕は人間だ。
ロルフは種族を迷うことなく打っていた。
活屍
「おいおいおい。とりあえず待とうか。どう見たら僕がゾンビに見えるんだ?」
「何言ってるんだよ? お前修業の時も何度やられても立ち上がってたし、陽に当たるとぐったりしてるじゃん。人間なわけないだろ?」
「いやいや違うから! 僕人間だから!」
「チッ! しょうがねぇな」
舌打ちをしながらロルフは種族の部分を人間と打ち込んだ。
なんで僕は舌打ちされてんだろう? 意味がわからない。
「それで自己PRは? 言ってくれればそのまま打ってやるぞ?」
「了解した」
それにしても自己PRって何書けばいいんだろうな?
とりあえず自分の得意な戦闘スタイルとかでいいかな。
「えーと。得意な戦闘スタイルは体術によってじわじわと体力を削ったり時には一発で相手を落とす近距離戦と多方向からガンガン銃を撃って攻めるスタイルです。とまぁこんな感じ?」
「オーケー。できたぞ」
そういってロルフはサムズアップしてくる。
「どれどれ? 得意な戦闘スタイルは体位によってじわじわと体力を削り、時には一発で相手を落とすこと。多方向から攻めることによってガンガン攻めるスタイルが得意です。」
・・・・・・は?
「ど下ネタじゃねぇか! 一回死にやがれ!」
「ゲフゥ!」
とりあえず今までの鬱憤も含めて一発腹パンをしておいた。
結局時間はかかったが自分で自己PRも含めて打ち込み、登録のボタンを押すと何やらカードのようなものが出てきた。
「できましたー」
「随分とにぎやかだったわね。ほんと見てて飽きないわ」
けらけらと笑いながらルーナさんは先ほど出てきたカードを受け取り何やら打ち込み始めた。
「とりあえずこれでオーケーね。あとは自分の写真を撮ってカードに読み込ませるんだけど、写真を撮る準備が出来てないからとりあえず説明をするわね?」
そういってルーナさんはギルド周りのことや決まり事を話始めた。




