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ダンジョンサーガ  作者: 炎尾
森のダンジョン
20/22

19 求めるは暴虐なる力

 全員が立ち上がり、腰に着けていたすべてのポーションを飲み干す。

 ただこれはロルフ謹製ポーションではないと言っておこう。

 あんなの飲んだら気づいたら殺されてる。


 僕たちが起き上がりそれを見てボストロールが僕とリーンの方に向かってくる。

 弾丸はすでに充填済みだ。今回は強化、弱化、強化と交互になるように弾丸を込めた。


 僕はそれをゲットオフスリーショットと同じ要領でロルフとボストロールに当てる。

 こうする理由は時間に意識を割くという頭に掛かる負荷を減らし、戦闘に集中するためだ。

 ほぼ時間のロスがないこの撃ち方だと数えるのが一分だけでいい。そのあとまた同じ撃ち方で援護すれば何も問題がないからだ。


 強化弾を受けた瞬間にロルフはボストロールに肉薄する。

 ロルフの攻撃を見ると攻撃手段が大きく変わっている。先ほどよりも体術の比重が増えている。もちろん状況を見てナイフでも切りかかっている。

 あまり見せないがこれがロルフの本気のスタイルだ。体術を主体にして合間にナイフで切りかかり、さらに射出型の暗器を飛ばす。

 盗賊という職業から攻撃力が不足しがちなため攻撃の手が一瞬でも緩まないように模索した結果の戦い方らしい。だからあまり人にも見せたがらないのだ。


「おいおい。こっちも向いてくれなきゃ寂しいじゃないか?」


 大きな銃声が二度聞こえたタイミングでボストロールが大きく目を抑える。スポットバーストショットを二度放つ。

 どうやら目にあった壁のようなものがついに破れたようだ。血の涙を流し始めている。

 ただまだ目は見えているようだ。

 とんでもないうなり声をボストロールは上げながら目元を抑え僕の方を睨みつける。


 それを見計らってロルフはさらに激しくナイフで切りかかり、後ろからはリーンの矢が何本も飛んでくる。


「私を忘れてもらっても困るな!」


「今度は後ろががら空きだ!」


 それを見て僕はリロードを行いながら側面に回り攻撃を加える。

 一分経ったタイミングで強化弾と弱化弾を撃つのも忘れない。

 僕ら三人の連携によって見事に削れていくボストロールの体力。

 ロルフの鑑定によって現在は残り30パーセントといったところだ。


「25パーセント時に動きがまた変わる! 警戒は緩めるなよ!」


 そう僕とリーンに声をかけるロルフ。

 ただ僕のMPは結構ギリギリになってきた。マナポーションを使って最後まで持つだろうといったところだ。


「「了解だ!」」


 そういって僕は再びボストロールの後ろに回って弾丸を撃つ。

 それに合わせて矢の後方支援を行うリーン。

 

 ついに25パーセントを切ったタイミングで赤色に染まった体が元の色になりボストロールは再びとんでもない雄たけびを上げる。


「ウオォォォォォォォォォ!」


 最初に上げた『威圧の雄たけび』よりも強力な『強者の雄たけび』が飛ぶ。

 これは相手の鼓膜への攻撃も兼ねており、耳を防がないと耳がしばらく使い物にならなくなる。

 もちろん威圧の効果もあり厄介極まりない行動だ。


 ビリビリとした雄たけびの波動が僕たち目掛けて飛んできた。

 とっさに耳を塞ぐことによりこれを凌ぐ。


 スキル『音波耐性☆1』を取得しました。

 再びの機械的音声とともにスキルが手に入る。


「どうやら耳に影響はなさそうだ」


 それを確認すると先ほどと同じように僕たちは攻め始めた。

 ただ色が戻ったことにより、また冷静になったのか火矢による怯みが再発した。

 しかし動きは先ほどよりもさらに早くなる。


「ロルフ! さっきと同じように攻める!」


「了解だ! 前衛は任せろ!」


 しかしもともと5人前提で挑むことになるボストロールの攻撃は凄まじいものがあり、体力はなかなか削れなかった。

 そして先ほどよりも早くなった動きに苦労しながらボストロールの体力を削る。


「いける! あと10パーセントだ!」




 そうロルフが叫んで僕たちに伝えた瞬間それは起こった。


「ウオォォォォォォォォォ!」


 動画を見ても一度もなかったこのタイミングでの『強者の雄たけび』

 ビリビリとした雄たけびが僕たちに迫った。

 その行動に僕たちは戦慄する。


「んなっ!」


「こんなの・・・・・・聞い・・・・・・てねぇぞ!」


「私の知る限り・・・・・・こんな動きは知らない!」


 それを行ったあと大きくボストロールは飛び上がりこん棒を握りしめ地面に叩きつける。

 それにより地面が大きく隆起、ひび割れを起こし僕たちに襲い掛かったのだった。


-------------------------------------------------------------------


「なっ! なんですか今の雄たけび!」


 外で三人がボストロールの部屋が開くのを待っていたアドルフとその連れのパーティーにも『強者の雄たけび』は聞こえていた。

 それだけでなくその後に響いた轟音も。

 全員が驚いたその理由はボストロールが使う『強者の雄たけび』が二回目だということだ。


「マジかよ・・・・・・! あいつらそれでなくとも強いボストロールと戦ってんのに初見殺しコンボまで使われてるのかよ!」


 アドルフが少し動揺した表情でボストロールの部屋で起きたことを考察する。

 そのアドルフの言葉に初めて聞く単語があり、それをパーティーの女性が問いただす。


「アドルフさん? 初見殺しコンボって?」


「ああ。お前たちは知らないのか。これはネットでもほとんど出回ったことのない都市伝説レベルの話でな。ボストロールが稀に使う連続攻撃なんだが残り10パーセントあたりになると使うことがあるって言われている」


「言われているって? なんでそんなにあやふやなんですか?」


「それは見たやつがいまのところほとんどいないんだ。絶対に勝てるだろうって言われてるパーティーに限ってボストロールによって殺されたことが何度かあってな。条件は不明だが相手を恐怖と聴覚不全に陥らせる『強者の雄たけび』と地面を破砕して攻撃する『グランドスラム』を連続で行うらしいんだ」


「ほとんど見た人がいないのになんでそんな情報が出回ってるんでしょう?」


「例えば生き残りが話してもそのあと同じボストロールが同じ行動をしてこなくて信じるやつがいないんだろ。それに動画を撮れるようになったのも最近だし、まだこのパターンが完全に目撃されたこともないから都市伝説になっているんだ」


 なるほどと質問をしていたパーティーの女性が質問を切る。


(俺がこんな噂を知っているのはそれを受けたやつを知ってるからなんだけどな)


 アドルフは過去の事を思い出しながら扉を見つめる。


「それにしてもあいつら三人で、しかも一度目の勝負で10パーセントまで追いつめたのか。あれだけの逸材だ。死んでなきゃいいがな」


 三人の事を案じながら扉が開くのをじっと待つアドルフと四人パーティー。

 アドルフのつぶやきは四人に聞こえることはなかった。


-------------------------------------------------------------


 気づけば僕は前のめりになって倒れていた。こちらに向かってきているボストロールの足音が聞こえる。

 『強者の雄たけび』で耳は潰れてなかったのか。音波耐性のスキルのおかげか・・・・・・。


 全身にきしむような痛みが走る。

 どうやらさっきの攻撃で体は傷だらけになったようだ。恐らくHPは全部持っていかれただろう。

 でも・・・・・・まだ立てる! まだ動ける!


 全身に力を入れて何とか立ち上がると見るも無残な光景が広がっていた。


「ロルフ!」


 倒れているロルフに声を掛けるが起き上がる気配がない。


「リーン!」


 また別のところで倒れているリーンにも声を掛けるがやはり起き上がる気配がない。


「クソッ! 今動けるのは僕一人か!」


 まだMPはなんとかある。

 そして手持ちの残りのポーションはマナポーション一個だけ。絶望感だけが自分を支配する。


 起き上がった僕を見てボストロールは獲物を見定めた目をしている。

 うなり声をあげて僕の方へ走って向かってくる。


 強化弾と弱化弾を使いボストロールの攻撃を凌ぐが次第にそれも苦しくなりこん棒にカスり吹き飛ばされる。

 HPが既にない影響で今は一般人と同じレベルの防御しか自分にはない。その影響でダメージがよりダイレクトに押し寄せる。


「ゴッフ!」


 早く楽になりたい。


 立ち上がらなければもう楽になれる。


 そうすれば痛い思いも苦しい思いもしなくていい。


 気持ちのいい幻聴が聞こえてくる。


「まだ・・・・・・だ・・・・・・!」


 しかし僕はそんな自分の思いとは裏腹に立ち上がる。


「二人を巻き込んで・・・・・・諦めるなんて・・・・・・できない! できるわけがない!」


 僕が必死になって諦めることのできない、まだ死ねない理由だ。

 僕に合わせて転移石を砕いて命を賭けた二人に諦めて悔いの残る死に方なんて僕は望まない。


 僕の望みは・・・・・・!


「みんなでお前を倒して帰ることだ・・・・・・!」


 僕たちが与えたダメージによってボロボロになったボストロールをひたすらに睨みつけ銃口を向ける。

 諦めずに弾丸を何発も撃ちこむがボストロールは倒れない。

 

「クソ! クソ! あと少しなんだ! あと少しで勝てるんだ!」


 僕は自分の非力さを呪った。

 ここまでなのかと。
































『力が欲しいか』


 めげずに弾丸を撃っていたところにその声は僕の長い時間を一緒に支えてきた愛銃から聞こえてきた。

 そして記憶にないはずのその声は僕にとってどこか懐かしさを感じた。


「欲しい!」


 力というその言葉に僕は飛びついた。


『ここで手に入るのは代償ある力。その後しばらくお前を苦しめることになる。それでもお前はそれを望むか?』


「ああ。勝つためならどんな代償でも支払う!」


 代償なんか今は知ったことではない!

 どんなものでも支払ってやる!


『ならば望みを言え』


「力が欲しい・・・・・・!」


 願わくばあのボストロールを倒せるだけの力を!


『想いを叫べ』


「負けたくない・・・・・・!」


 僕に命を賭けてくれた二人のためにも!


『願いを吠えろ』


「勝つのは僕たちだ・・・・・・!」


 みんなで生きて帰るために!


『その願い聞き届けたぞ・・・・・・! 我のあとに続け!』


「了解!」


『我求めるは暴虐なる力』


「我求めるは暴虐なる力!」


『力求めしものに向ける解放への序曲』


「力求めしものに向ける解放への序曲!」


『相対する敵を撃ち滅ぼせ』


「相対する敵を撃ち滅ぼせ!」


 ああ。僕はこの言葉を知っている。

 どこで聞いたかは覚えていない。

 でもこの続きは・・・・・・


『「我の力を解放せよ! サーリア!!」』


 そこで僕の意識はプツンと飛んだ。












































 スキル『血の暴走』を取得しました。

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