01 プロローグ
書き溜めがあるうちは毎日投稿で頑張りたいと思います。
少し薄暗く陽のあたらない森の奥地にある空き地で僕たちは木々に囲まれた空を見上げていた。どうやら僕たちはこの目の前で悠然と立っている男に今回も負けてしまったようだ。
少し青白い顔をその男に向け青い目で恨みがましく睨みつけているがその男は悠然と立ってこちらを見ているだけだ。
僕たち二人はダンジョンに潜るためにこの男に弟子入りをしている。普段はボケているが鍛えるとなれば命を賭けるような場所にも平気で送り込むような鬼畜な師匠だった。
幾度も挑み幾度も負けた。そのたびに今のように地面に這いつくばる日常が続いた。
戦い方を変えた。試行錯誤することでダンジョンで生き残る術を身に着けるため。
卑怯と呼ばれる手段も使った。ダンジョンではどんなことをしてでも生き残らなくてはいけないため。
一度も勝つことを諦めたりしなかった。ダンジョンで誰かが助けてくれるような生ぬるい場所ではないため。
そして僕たちがこの男に弟子入りしてから約三年の月日が流れた。しかしその三年間の間にこの男に一本を取れたわけでもなく、今も息を切らしながら目の前でボロボロになりながら倒れている。
「まぁこんなもんだろう」
そう男が呟き構えていた木刀を腰に差す。身長は160cmとやや小柄な体だがその見た目に反して鍛えられあげた筋肉が見え隠れしている。
切り株に座り込み煙草に火を着け目の前に息を切らしながら倒れている二人に声をかける。
「シグルド、ロルフお前たちにダンジョンに潜る許可をやる」
その言葉を聞いて僕は一瞬で起き上がり目の前の男に嬉しさのあまり聞き返した。
「ホントですかきちく・・・・・・師匠!」
「おいシグルド。てめぇ鬼畜って言おうとしてなかったか?」
「そんなこと言ってませんよ師匠」
目を逸らしながら僕はそう答える。
そんな僕の言葉を援護するように先ほどまで隣で倒れていた盗賊のような恰好をしていて、燃えるように赤い髪、目の色をしていて師匠よりも10cm以上は背の大きいロルフが口を開く。
「そうですよ鬼畜チビ師匠。シグルドは師匠のことを尊敬してるから気を使って鬼畜師匠と言おうとしましたけど、心の中では鬼畜チビ師匠って思ってるなんて言えるわけないじゃないですか」
「100パー尊敬する気ないだろお前ら。尊敬する人間に罵倒するような言葉をつけるな」
まったく。僕たちはちゃんと尊敬してるのに師匠は小さいことばかり気にするな。そんなんだから背が伸びないんだよ・・・・・
「それは失礼しました。鬼畜チビ」
「そうですね。俺も失礼しました鬼畜チビ」
「お前たちにとって師匠って言葉は罵倒に入るんだな」
師匠は何やら遠い目をして虚空を見上げている。何か間違ったことを僕たちは言ったんだろうか? 別にいいだろう。どうせ師匠だし、いつものことだ。
「まぁお前たちの脳みその心配をしたところで今更の話だ。ダンジョンに潜る許可はやる。俺がお前たちの師匠として面倒を見る条件は覚えているか?」
「さすがにそれくらいは覚えてますよ」
「ほぉ。なら言ってみろ」
「バベルの塔の最上階で愛を叫ぶために女性をパーティーメンバーに迎え入れておくんですよね」
「せやな」
「うん。なんか色々違う」
なん・・・・・・だと・・・・・・!? 師匠もう28なのに彼女すらいないからこんな条件にしたんじゃなかったっけ?
「正直お前たちの馬鹿さ加減に俺は常々弟子にしたことを後悔してるんだが・・・・・・」
失敬な! 修行始める前に言ったきりでもう三年も前の話だぞ!
修行と称して散々人の頭を殴ってきておいて、今更そんな昔の事覚えてるわけないだろ!
「それで結局なんでしたっけ?」
「バベルの塔を攻略するためにパーティーメンバーが必要なんだよ。俺は一人で全ダンジョン攻略してきたからパーティーメンバーがいないんだ」
「そういやそんなこと言ってましたね」
「師匠。ボッチでダンジョンとか悲しくないんですか?」
ボッチでダンジョン攻略とかそんなことして悲しくないのかね?
普通はパーティーメンバーを引き連れてあの手この手でダンジョンを攻略するもんなんだけど・・・・・・
「うるせぇな。こっちにも事情があったんだよ。それに一人で全ダンジョン攻略してんだぞ? 誰も成し遂げてなかった偉業だ。文句あるか!」
そういって開き直った師匠相手に僕たちはこう言ってやった。
「「いいえぇ? 別にぃ?」」
「このクソどもが。せっかく餞別に旅支度用の金品でも恵んでやろうと思ったのによ」
「「マジ舐めたこと言ってすいませんでした師匠!」」
僕たちは二人そろって残像が見えるくらいのスピードで土下座をする。
その素早さたるや常人にはマネできるものではない。何故ならそれは僕たちが師匠相手に何度も行ってきた行為であるからだ。
「お前らにプライドってもんはないんだな」
「そんなものはありません!」
「俺はそんなもん生み落とされた時に一緒に落としてきました!」
プライド? 何それおいしいの?
僕わかんなぁい?
「まぁいい。これが餞別だ」
そういって師匠は何やら財布のようなものを僕たちに投げつける。
それをすぐさまキャッチし僕たちはその中身を確認した。
「なるほど。このお金でダンジョンに潜る準備をしろって事みたいだね」
「ああ。十万ゴルほど入ってるな。これなら余裕でどうにかできそうだ」
「お前らは感謝の気持ちを述べるってことすら覚えてないのか?」
その一言に僕たちはため息をつきながら答える。
「師匠がやってきた鬼畜な修行を考えたらここでも金を集めるのが修行だとか言いかねませんからね・・・・・・」
「てっきり俺はどこぞの魔王を討伐してくれと頼み込む王様のように50ゴルと銅の剣でも渡してくるのかと思ってましたから」
師匠は僕たちに信用があると思ってたの? やったね! そんなものは修行始めて3日目で無くなっちゃったYO☆
「お前たちの信用がそこまでないとは思ってなかった。」
そういいながらカラカラと笑う師匠。なに笑ってやがる。どんだけ俺たちが死ぬ思いしたと思ってやがる。
「まぁそんなことはどうでもいいとして」
おっ信用がないのはどうでもいいのか。そんなんだからパーティーメンバーすらできないんだよ。
僕たちはこんな大人にはなりたくないね。
そんなくだらないことを考えていると師匠の雰囲気が変わる。ピリッとした気配に僕たちも一瞬で顔つきを変え師匠を見据えた。
「そうそう。それでいい。俺の目的は一人じゃ進めないようにできているバベルの塔攻略だ。そのパーティーメンバーにお前たちを入れる。だから俺を含めると後二人までパーティーメンバーを集めてバベル以外のダンジョンを攻略してこい。でないとお前たちの目標すら達成できないからな。」
ダンジョンに潜れるパーティーメンバーは五人までだ。何故かそれ以上の人数でダンジョンに入ろうとするとダンジョンに拒絶される。師匠はすべてのダンジョンを一人で踏破した。確かに偉業ではあったのだがバベルの塔では一人では攻略できない仕組みがあったようでそのためのパーティーメンバーを探したのだ。
見つからなかったようだけど。
それは当たり前だと思う。ギルドで斡旋してくれるとはいえ何個もダンジョンを踏破するのであれば自然とメンバーは固まってくる。
しかし7つのダンジョンをすべて攻略している人間というのは一握りしかいない。
またそんな人間たちがパーティーを組んでいるのは当然な訳で、どうにもならず弟子を取ることにしたらしい。他にも候補として育成してたけどここまで残ったのは僕とロルフの二人だけだった。
「ええ。僕は自分の失った過去を取り戻すため」
「俺は世界最強の男になるため」
もちろん師匠だけでなく僕とロルフにもダンジョンに潜りたいという理由はある。
僕は物心ついた時にはロルフと同じ孤児院に居たようだった。
だったという過去形なのはその記憶が何故かさっぱりない。だからその記憶を取り戻すために神がいるというバベルの塔を攻略することで知りたいと願っている。忘れてはならない何かを忘れているような気がしてならないからだ。
ロルフはロルフで何やら約束があって世界最強の男になるという理由だそうだが、どうしてそんな目標を持っているのかという細かい理由は知らない。
「目標は再確認したな。そしたら行ってこい!」
そういって師匠の元を僕たちは離れていった。
まず最初はダンジョンに潜るためのギルド登録からだ!
意気揚々と森の外に出る。
するとサンサンと日光が・・・・・・降り注い・・・・・・で・・・・・・!
「あかん・・・・・・もう僕・・・・・・ダメかも・・・・・・ゴッフゥ!」
僕は干からびるような顔をしながら吐血する。
「うっわ締まりねぇ・・・・・・」
記憶にあるのはロルフにそうつぶやかれたことだけだ。
僕は日光にすべからく弱い。




