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ダンジョンサーガ  作者: 炎尾
森のダンジョン
19/22

18 命を賭して

 スキル『威圧耐性☆1』を取得しました。

 機械的な音声が頭に響く。


「なるほど。これがスキルか。ロルフ!」


 頭に響いた音声を元にロルフに自分の変化を伝える。


「ああ。威圧耐性なんてやつだろ! 俺にも来た!」


 どうやらロルフにも同じスキルが発現したようだった。

 そしてリーンを見ると僕たちとは違う変化が起きていた。


「わたッ! 私には何も来ていない!」


 そう叫ぶ彼女の声は震えていた。またリーンを少し注視すれば震えているのがわかる。


 ボストロールの特殊行動『威圧の雄たけび』 

 これを受けるとステータス異常として恐怖のバットステータスがつく。

 恐怖の状態になると本来のパフォーマンスを発揮するのが困難になり、リーンのように手が震えるなどの悪影響が生まれるのだ。時間経過で立ち直ることも出来るのだが時間が掛かるのが特徴だ。


 もちろんこのボストロールの行動やステータス異常の事は作戦を練っている時点で話している。

 恐怖になること可能性を考慮した行動を取る。


「リーンが恐怖だ! プランBで行くぞ!」


「了解!」


 ロルフにそう告げ僕は強化弾をロルフに一発撃ちこむ。

 強化弾を受けた瞬間にロルフはボストロールに突撃。この戦闘ではロルフがボストロールの攻撃をかわし続け僕たちが援護射撃で追い詰めるというのが基本戦略だ。

 プランAは全員が恐怖になった場合に恐怖から立ち直るためにとにかく時間を稼ぐための戦闘プランだった。

 しかしリーンだけが恐怖の状態となったため僕たちはボストロールを引き付け、リーンが恐怖から立ち直るのを待ちながら攻撃を加えるというプランBを取ることとなった。

 そしてリーンは手がおぼつかない中、弓を撃つ準備を進める。


「まずはこいつで先制攻撃と行きますか!」


 ロルフがボストロールに肉薄するのと同時に弾丸を二発ボストロールの目を狙い撃つ。

 すると何かにはじかれた音がしたがボストロールはうなり声をあげながら目元を覆う仕草をする。


「ハイハイ、ボディがガラ空きですよっと!」


 ロルフはそんな行動をしているボストロールの腹にナイフで切りつける。

 しかし数回切りつけたところでボストロールはこん棒を握りしめ大きく薙ぎ払いを行う。

 それを難なくロルフは躱す。


 この流れを見て僕はあることを確信する。


「やっぱりこの恐怖を躱すことができなかったから動きも悪いし、なかなか勝つことも出来なかったんだな」


 それは今までのボストロールの映像を見ていて疑問に思っていたことだ。

 ボストロールに挑んでいる冒険者はどう考えてもレベル相当の動きをしていないのだ。

 何故そんなことになるのか? それは恐怖だ。

 今現在のリーンのように震えていては狙いをつけるのもなかなかに難しい。ましてや前衛は目の前に恐怖に陥れた元凶がいるのだからそりゃ動きが鈍ることだろう。

 

 しかしロルフと僕の動きは本来のままのパフォーマンスで動くことができる。

 一応ボストロールを怯ませる手段は考えてきたけどそこまで必要にならないかもしれない。


 そんなことを考えながら僕とロルフでボストロールにヒット&アウェイを行ったあたりでどこからともなく火矢が飛んでくる。

 リーンだ。プランAで時間を稼ぐために使おうとしていた手段である。


 その火矢が飛んできた瞬間にボストロールは明らかに僕が目に弾丸を撃ちこもうとしたときよりも大きくのけぞる。


「弱点って言えるほどでもないけど十分に戦略に組み込めるくらいには火が苦手みたいだな」


 これも動画を見ていて確認していたことだ。

 火を使う魔法使いがいるときに相手が通常の状態であれば火を見ると明らかに隙ができる。

 これをうまく使えば時間も稼げるし、何より攻撃のチャンスも作ることができる。


 ただこれが効くのは通常の状態に限る。ある程度ボストロールの体力を削ると怒りだし、火では怯まなくなってしまうからだ。

 これは予想だけど怒りで目の前以外が見えなくなってしまうためかもしれない。


「ロルフ! しばらくはこのまま削りに行くぞ! 少しでも辛くなったら合図をくれ!」


 そう僕がロルフに伝えるとロルフは手を後ろに回しサムズアップのサインをする。

 これでとりあえず序盤の戦いはなんとかなるだろう。


 何故序盤の戦いという言い方をするのかというと、このボストロールは大きく分けて4つほど戦い方が変わる場面が存在する。

 盗賊の鑑定を用いて出されたデータだけど25パーセントごとに動きが変わるみたいだ。

 だから最初の25パーセントはこのままの戦い方で行く。


 ただ心配なのはロルフのHPではなく体力だろう。いやHPも重要だけどね。

 ボストロールの動きは少なくとも今まで対峙してきたモンスターのレベルとは段違いで動きが良い。

 またこのパーティーは全員が軽装だ。一発まともに当たればほぼ戦闘に支障をきたすだろう。そんな状態で戦い続けるには相当に神経を使う。後半になってそれが影響してくる可能性があるため今はできるかぎり温存して戦いたいところだ。


 その後何度かボストロールの怯ませながら戦うがロルフはサインを出して交代をしようとしたときにすれ違いざまにロルフがとんでもないことを言いだした。


「まだ10パーも削れてないぞ」


「嘘だろ?」


「休みながら色々考えておく」


 短い会話を済ませ、僕はボストロールを引き付けるために前に出る。

 MPはまだまだ余裕があるがこのままいけば足りなくなるだろう。強化弾は五発ほど使ったところでロルフと交代した。あと一発あるがこれは戦い方を変えるために弱化弾を使うべきだろう。

 ただそうなると一発分のリロードの時間が欲しい。一発込めるのに10秒ほどかかる。そしてこの強化弾を先に撃ってしまわないと弱化弾を撃つこともできない。


 ロルフにいつもの修行の時に使っているリロードがしたいというサインを出すとすぐさまロルフから援護が来る。一緒に火矢も飛んできたことからリーンにも何がしたいのかロルフから伝わったようだ。

 10秒の時間分を引き付けてもらい一発自分に強化弾を撃って弱化弾を込める。

 ボストロールが怯んだタイミングで弱化弾を撃った。


 ボストロールにそれが当たると強化弾と違い少し青色の光を放つ。

 これが弱化弾が当たったという証拠だ。

 これは攻撃、防御といった相手の能力を弱化させる弾丸だ。ここからは一分は僕が一気に削る!


 後ろからの援護でボストロールが怯むタイミングを見計らい立ち止まってスポットバーストショットを放つ。弱化弾の影響か見事に当てた部位が少し抉れボストロールにダメージを与えることに成功した。


「ロルフ! 今のでどれくらい減った?」


「今ので計11パーくらいだ! どんどんやれ! 時間が切れる前に!」


「了解!」


 頃合いを見計らいスポットバーストショットを決めて弱化弾を使いながら動き、強化弾を使うのをやめた。そして僕のMPを三分の一ほど消費したところでボストロールの体が赤く染まり、先ほどよりも動きが少し早くなりこん棒を振り回す。

 動きが不規則になり避けるのが少し困難になるが師匠の変幻自在の木刀に比べればまだまだ余裕はある。


「どうやら次の段階みたいだね」


 この状態になると周りが見えなくなるのか火矢が効かない。

 だから連携をするにも少し工夫が必要になってくるんだけど・・・・・・


「リーン! いける?」


「済まない! まだ恐怖からか手が震えている!」


 そういう割には先ほどから狙いが結構いい場所ついてるんだよね。

 バッドステータスの状態でも攻撃を続けたためか何かのスキルでも手に入れたのかもしれない。


「ただスキルは手に入った! だから狙いをつける分には恐らく問題ない!」


 やっぱりそうだったみたいだ。

 ならリーンには遠距離で立ち回ってもらおう。


「ロルフ! 頼む!」


「了解だ!」


 僕とロルフが前衛を入れ替わり僕は腰に着けていたマナポーションを一本飲み干す。そして弱化弾を作りロルフの援護に回った。


 肝心の前衛に回ったロルフはボストロールの攻撃を見事に躱し続けている。今のところは強化弾も必要な状況ではなく弱化弾のみの援護で問題ないようだ。


 ちなみに僕はここで攻撃をロルフから止められた。どうやら僕のMP事情に気づいていたようだ。

 できるだけ短期決戦を仕掛けたいがメンバーが三人しかおらずどうしても長期戦を強いられる。それを考慮した判断のようだ。

 そのため現在僕は弱化弾の援護だけに徹して援護射撃はリーンが担当している。


 そしてこれは見事にハマりボストロールの体力を削っていった。

 その間に僕とロルフにもスキルを習得することができた。

 僕は『集中☆1』という命中精度に影響が出るスキルのようだ。恐らくリーンにもこれがついたのではないかと思う。

 ロルフは『回避☆1』『野生の勘☆1』で攻撃に対する回避行動が素早くなるというのと攻撃を察知して回避行動を取りやすくするスキルのようだ。ちなみに先ほど戦っていて『回避☆1』は僕にもついた。



 そして体力が50パーセントを切った瞬間にボストロールの体はさらに赤くなった。

 ここでロルフが攻撃を躱しきるのが困難になり始めているのが見て分かった。


「こっからが本番か・・・・・・!」


 ロルフがそう呟く。

 どうやら僕の弱化弾だけでは完璧に躱しきるのが苦しいみたいだ。

 そう判断し、ボストロール目掛けて僕は走り出す。


「僕も加勢するよ!」


 動きの素早さまで上がると考えると二人で同時に攻めれば躱すことは不可能ではないはずだ。

 ボストロールが起こり始めてからずっと動きを見ていたが目に着いた敵に攻撃を仕掛けているという感じだったためだ。


 ロルフは一度こちらを少しだけ見た後に一度頷き、ボストロールに攻撃と回避行動を今まで通り行っていく。


 ただ問題として動きが早くなるだけでなくどうやら防御も固くなっているようだ。ロルフのナイフで攻撃しても先ほどよりナイフの傷が浅い。

 攻撃力だけなら僕の方が上だ。狙うなら・・・・・・相手の機能を奪うことができる場所。

 

 ボストロールがこん棒を振り下ろしたタイミングでこん棒の上で大きくジャンプをする。

 狙いは大きく開いている口だ!


 顔面の前で僕は肩をしっかり固めるようにしてスポットバーストショットを放つ

 見事に口の中に弾丸が入り、ボストロールは吐血する。


「やったぜ!」


「バカ! 油断してんじゃねぇ!」


「えっ? ガッ!」


 ロルフから声が届いた時にはもう遅かった。

 こん棒から片方の手を離したボストロールが大きく腕で僕を薙ぎ払ったのだ。

 大きく僕は吹っ飛ばされ、地面を大きく転がりリーンの近くでやっと勢いが止まる。


「ガッハ! ゴッホゴホ!」


 口の中から血の味がする。

 やばい。もうすぐ一分だ! このままじゃボストロールが!


 そう思ったときに弱化弾の効果は切れた。

 元の力を取り戻したボストロール強烈な薙ぎ払いをロルフにぶつける。

 ロルフもこれを完全に躱すことができず防御と受け身を取ることは出来たようだが地面を大きく転がった。


「グゥ!」


 ボストロールの動きはこれだけで終わらなかった。

 先ほどから振り下ろしたこん棒によってできた木の破片を掴みそれを投合。リーンに投げつけた。

 まさかの行動にリーンは回避行動に移ることはできたものの、完全に躱しきれず被弾。


「キャー!」


 僕の失敗から一気にパーティーが崩壊し始めた。

 ボストロールが雄たけびを上げる。僕たちを仕留めたと思ったのだろう。


「なめんなよ・・・・・・!」


「こんなことで終わると思ったら大間違いだ!」


「私もまだ・・・・・・いけるぞ!」


 大きくダメージを負ったが、まだこれじゃ終わらない。

 まだHPは残っている。誰も致命傷といったところまではダメージがいっていない。僕は弱化弾の影響で、二人は致命傷にならない程度には回避を行えていた。


 だがここで大きな問題が一つ起きた。

 僕のポケットに入れていたあるものが砕け散っているのだ。

 粉々になったそれを取りだす。

 それを見たリーンが小さい悲鳴を上げた。


「ヒッ! それは・・・・・・まさか?」


「転移石だね」


 僕はいつでも逃げれるように転移石をポケットに入れていた。道具袋に入れていてはとっさに逃げることができないためだ。

 しかし先ほどの一撃で僕の転移石は粉々になってしまったようだった。


「それじゃあ・・・・・・!」


「うん。僕はもう逃げられない。生き残るならあいつを倒すしかない」


 このボストロールの部屋から出るには二つの手段がある。それは転移石を使うこと。もう一つはボストロールを倒して部屋が開くの二つの方法だ。


「そんな・・・・・・」


「もとはと言えば僕の油断だ。これくらいのペナルティなら甘んじて受け入れるよ」


 これで完全に退路は断たれたわけだ。

 油断なんかこれで絶対にできない。考えようによっては今まで以上の集中力を得られるならそれでもいいかもしれない。


 そして僕たちの様子を見ていたロルフもポケットから何かを取り出す。 

 それはまだ無事な転移石だ。

 それをロルフは地面に叩きつけ足で踏みつけて粉々にした。

 こちらを見てロルフは大きな声で言い放った。


「お前だけで死なせるような真似はしねぇよ! 俺たちはもとから一蓮托生だ!」


「ロルフ・・・・・・」


 その言葉で少し涙が出そうになる。どうやら僕一人で死ぬかもしれないってのが怖かったのかもしれない。

 そしてリーンも同じように自分の転移石を取り出しそれをロルフと同じように砕いた。


「私だけ仲間外れは寂しいじゃないか。二人が命を賭けるという条件に私も乗った以上、私も一緒だ」


 そういって恐怖から立ち直ることも出来ていないのにぎこちない笑顔をリーンは僕に向けてきた。


「全く二人とも馬鹿だなぁ・・・・・・」


 涙ぐんでいた目を強引に腕でこすりボストロールを強く見据える。


「勝つぞ! ボストロールを倒してみんなで生きて帰るんだ!」


「「了解!」」


 僕たちの逃げることのできなくなった命がけの戦いはさらに激しさを増していく。

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