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ダンジョンサーガ  作者: 炎尾
森のダンジョン
17/22

16 戦闘準備

 経験値を集め終わったリーンが戻ってきた。

 そこでまずは現在の僕たちのレベルを確認した。


「12か・・・・・・」


「まぁ一般の冒険者がしない無茶なレベル上げをしている自覚はあるが・・・・・・足りないな」


 そうなんだよね。

 確かにレベルが上がって動きがよくなる自覚はある。

 とはいえこのダンジョンで上げれるMAXが17レベルだ。

 そしてボストロールは20レベルと考えると15レベルは欲しい。実際最強の個体と言われてるくらいだし。


「ということは私たちにはまだレベル上げをする必要があるということだな?」


「そういうこと。とりあえず7階層目指すか。経験値くれないモンスターもこの階層にはいるわけだしな」


 ここにいるモンスターで最弱なのはウネで9レベルだ。

 ほとんど妨害しかできないくせにこのレベルの高さは正直納得いかないが、経験値をくれないモンスターがいる以上効率は良くない。


「ただここで休憩するのはよくない。モンスターが集まってくるからな」


 そうロルフが言ったのを聞いてリーンは少し安心したような顔をした。


「リーン、どうしたの?」


「いや。二人のことだから休憩といいながらも経験値を稼ぐのかと思ってな」


 なんということだ・・・・・・リーンの中では僕たちの印象が完全な脳筋キャラになっている。


「それは誤解だぞリーン」


 ナイスだロルフ! そのまま誤解を解くんだ!


「そんなバカなことを実際に実行したのはそこのシグルドって言うやつだけだ」


「そっそうなのか?」


 まさか本当にそんなバカなことをやったのかと問いただすような目で見てくる。

 ロルフ! 貴様ぁ! やってくれたな!

 数回テンション上がってそんなことをした記憶はあるけどここはリーンの印象を上げるために嘘をついた。


「いくら僕でもそんなことはしたことないよ」


 そんな僕を見て肩をポンっと叩きロルフはいい笑顔でこういった。


「嘘は後に身を滅ぼすぞ?」


 僕以上の嘘つき野郎にそう言われた。

 お前が滅びればいいのに。


「シグルド。嘘なら嘘とはっきり言った方が楽になるぞ・・・・・・」


 リーンに心配そうに言われ僕のイメージが悪くなったことをはっきり理解した。

 僕は一体どうすればよかったのかな・・・・・・? いい印象を与えるって難しいなぁ・・・・・・。


 そんな脳筋イメージが着いたのを軽く無視してロルフは話を進めようとする。


「リーン。そんなバカは放っておけ。それよりも安全な場所に移動するぞ」


「待って! 誤解は解いておくべきだと思うんだ!」


「どこにも誤解はないだろう。その当時の映像なら師匠がネタとしてとっておいてくれてるぞ」


 あんのクソ師匠がぁあああ!

 余計なことしやがってぇぇぇ!


 師匠のイラっとする笑顔を思い出しながら僕たちはその場を離れた。


------------------------------------------------


 歩き始めて10分くらいで次の階層へのツタを見つけそこでロルフがどっかりと地面に座った。


「ここがボストロールの部屋の前の安全地帯以外では最後の安全地帯だな」


 近くから水の音が聞こえ本格的に休憩を挟めそうな場所だと思いながら僕もリーンも座り込む。


「そういえば水とかそういったものは大丈夫?」


「まぁ明日までは持つけどパーティーメンバーも増えたし補給しておいても損はないだろ」


「補給したら少し仮眠を取ろう。一日以上動きっぱなしだ。疲れてきたよ」


「私も賛成だ。見張りは順番にやろうか」


 リーンがそう提案するが残念ながらその必要はない。


「それは大丈夫。僕たちに近づくモンスターや人がいればこういう場所ならすぐに目を覚ませるから」


 普段から僕たちは安全だと思う場所以外では熟睡しない。

 そうしないといつまでも休憩を取れない環境に置かれるから、この技術も師匠に叩きこまれた。

 どうやらリーンにとってにわかに信じがたいことであったようだが。


「そんなことができるはずないだろう。二人して私をからかうとは人が悪いな」


「まぁいきなりそんなこと言っても信用してくれないよね」


 正直信じさせるのも面倒だ。さっさと仮眠を取るために適当に相槌を打って仮眠を取る順番を決めて休もう。


「ならシグルドお前が最初に見張りをやれ。水を汲んで来るのよろしくな」


「了解」


「なんでシグルドが一番最初なんだ?」


 リーンが疑問符を浮かべてそう聞くとロルフが理由を話した。


「こいつの戦闘見ただろ? 一番神経を使うことしてるんだ。だから途中で見張り交代みたいなことはやめさせたい」


 ロルフは僕の戦闘を一番間近で見てきた人間のためこういう時には率先して面倒ごとを引き受ける。

 ありがたい話だ。まぁ・・・・・・


「それに休憩足りなくて後ろから手元が来るって撃たれましたじゃ洒落にならないからな」


 自分の保身のためって理由もあるからなんとも言えないんだけど。


「なるほど。なら間の見張りは私が受け持とう」


「残念だがそこは譲らない。それは俺が引き受ける。理由はシグルドと似た理由だ」


「私はそれほど疲れてないんだが」


「それでもだ。精密な技術を使うものほど休憩は優先した方がいい。戦闘ってのはそういった細かいところで生死を分けることもあるんだからな」


 ロルフの言い分は間違っていない。それだけ命をさらした修業があったからこそ言葉に重みもある。


「リーン。ロルフに任せるといい。こういうことは絶対にロルフは譲らないから」


「ならお言葉に甘えさせてもらおう」


 その後仮眠を一人90分ずつ取れるように休憩を挟み7階層へと進んだ。


---------------------------------------------------------


「さて。ここからの方針だが・・・・・・」


「レベル上げだろう? それで何をするかはまたモンスターハウスに飛び込むとか言うのではないか?」


「リーンも順応してきたね。恐らくその通りだよ」


「正解だ。俺たちはまたモンスターハウスに飛び込む。レベルが足りない。そして一番の理由が時間が足りない」


 時間が足りないというとリーンは首を傾げた。


「どうして時間が足りないんだ?」


「ギルドが今回のボストロールの討伐を依頼したからだ。それが来るまでもう一日を切っている」


「ギルドが依頼を出すなんてそんなことがあるのか?」


 リーンの疑問は最もである。

 普通はそんなことはしない。強いボストロールを倒せばそれだけの強さを証明できたということになるからだ。そうすると大手のクランからスカウトされるといったことにもつながるのでギルドは基本的にノータッチの部分なのだ。


「まぁ一か月も討伐されてなきゃそうなるんじゃないか?」


「新人戦も間近なのに参加者が少ないってのがギルドとしても痛手なんだろう。盛り上がりに欠けるからな」


「そういう理由か。納得した」


 そういうとリーンは一つため息をつく。


「とはいえ、またモンスターの巣かぁ」


「さっきと同じようにやれば大丈夫!」


 グッとサムズアップをするとリーンは小さい声でなにかを言ったようだった。


「・・・・・・実力の差を見せつけられるのが一番辛いんだがな」


「ん? 何か言った?」


「いや。なんでもない。とりあえず仮眠を取るならさっさと取ろうか」


 そうリーンが休憩を促すが・・・・・・


「ごめんロルフはもう寝てるよ」


「さっきまで会話をしていた気がするんだが・・・・・・早くないか?」


「慣れてるからね」


「野宿だというのにか?」


「慣れてるからね」


「地面だぞ?」


「慣れてるからね」


「・・・・・・」


 これ以上質問しても無駄だと思ったのかリーンも仮眠を取ろうとし始めた。


「さて僕は水でも汲んで来よう」


 そうつぶやいてギルド支給の道具袋から水を入れる水筒を取り出し水を汲みに行き、その後自分も仮眠をとって7階層へと進んだ。


-------------------------------------------------------


「さて。それじゃこの階層のモンスターを全滅させるぞー」


 あまりやる気のない声でロルフが目標を呟く。


「おー!」


「おー! ってちょっと待て! モンスターハウスに飛び込むだけじゃなかったのか!?」


「リーン・・・・・・細かいことは気にするもんじゃない」


「私は入るパーティーを間違えたのかもしれない・・・・・・」


 なんか6階層からリーンのテンションがダダ下がりな気がする。

 僕たちは慣れっこだけどきついかもしれないのは確かなんだけどね。


「後悔先に立たずだ。もうそんなことを考えても遅い。それに・・・・・・」


「それに?」


「こんな人材がこのダンジョンを攻略するのにまた見つかる気がしない」


 ロルフと僕が考えている切実な理由だ。


「確かに」


 ギルドにいた人間は実力不足だし。

 予定外とはいえ今のボストロールを倒すならこれくらいの実力がないと厳しいだろう。


「そういわれると照れるのだが二人の実力には及ばないぞ?」


「能力は人それぞれだ。戦闘が得意なやつだっているし援護が得意なやつもいる。強さなんて一つの面から見るもんじゃないさ」


 少なくともモンスターを察知する能力とかそういう面で僕たちは全くリーンに及ばない。


「とにかくリーンの力があればこの階層のモンスターを根こそぎ経験値に変えてしまうことも可能だ。レベル上げにここまで頼もしい奴がいる。さっさとギルド員が来るまでの時間を休憩に当てたいじゃないか」


「そうそう。だからリーン頼りにしてるよ」


 そう僕たちが褒めるとリーンは嬉しそうにしながらやる気になってくれた。


「頼りにしている・・・・・・か。わかった。力になれるだけなろう」


「よし。ならとりあえずモンスター狩り倒してレベルを15に上げるぞ!」


「「おー!」」


 この階層に入って一番レベルの高いモンスターはモスマンという巨大な蛾のモンスターだ。

 レベルは15もあり、毒の鱗粉を使う近接がメインであれば厄介なモンスターだ。

 だが残念なことにレベルを17に上げるために冒険者に狩り倒される運命にある。


 モスマンは哀れなモンスターである。


「前方からモスマン2だ」


「「了解」」


 僕たちは全員遠距離で攻撃する手段が存在する。

 ロルフは投げナイフ、リーンは矢、僕は銃。近づいてくる前に羽に集中砲火。地面に落として動きが鈍くなったところをさらにナイフ、矢、弾丸の雨あられで片づけられる。


「よっわ・・・・・・」


 モスマンは哀れなモンスターである。


 僕たちにとってはただの経験値にすぎないのが現状だった。


 その後特に問題もなくモンスターの巣に着いた。

 モスマンも数匹いたが巣に近づく前にまずは遠距離でリーンの矢に火を着けモスマンの羽を燃やした。

 毒の鱗粉は脅威だが羽にその成分があり、モスマンの羽は燃えやすい。実によく燃えた。

 地面を転がって火を消していたが鱗粉を出せないモスマンなどただの経験値だ。


 もう一度言おう。

 モスマンは哀れなモンスターである。


 この階層に入りウネも出現しなくなり、向かってくるモンスターを僕とロルフで抑え、後ろからリーンの援護で無事にモンスターハウスのモンスターを根こそぎ倒すことに成功した。

 そして無事レベルも15になり目標に到達した。


「よっし! レベル15だー!」


「お疲れさん。準備もできたし、さっさとボストロールの部屋の前に行くぞ。安全地帯で休息するぞ」


「わかった。ではすぐに移動しよう」


 そうしてボストロールの部屋の前に着くとそこは完全に休憩してくださいと言わんばかりの空間だった。


「ロルフ。こんなにあからさまに休憩してくださいって場所があるんだね」


「ああ。テントでも広げて休んでくださいと言わんばかりだ」


 あるのはボストロールが奥にいるであろう部屋へ続く大きな門だけでそれ以外は完全に開けた場所だった。

 こんな何もないところにモンスターがホントに来ないのかとこっちが聞きたいくらいに何もなかった。


「ホントにモンスターが来ないのか?」


 リーンが不安になったのかそうつぶやく。


「らしいぞ。まぁずっと昔からそうだったらしいから心配するな」


「そうそう。今更そんなことに不安なんか持つだけ無駄だよ。途中にあった安全地帯も襲われなかったから大丈夫だって」


「ならいいんだが」


 まぁ気になるのはしょうがないけど今はやるべきことをやろう。


「さてロルフ。ギルド員はあとどれくらいで来るかな?」


「だいぶ飛ばしてきたからな。依頼の時間まであと12時間ってところか」


 実際僕たちは仮眠を取る休憩しかしてきていない。だからこれだけ休む時間があるのは正直ありがたい。


「食事、睡眠って感じで行こう。ただ戦闘に支障が出ないように2、3時間前には起きておくつもり」


「そうだな。頭回りません、集中できませんは俺も勘弁したい」


「しっかり目を覚ましておくべきだろうな。体調を万全にしておくのは重要だろう」


 リーンの言う通り体調は万全にしておきたい。

 準備でつぶせる命取りになる案件はすべて潰しておきたい。


「それで起きてからボストロールの対策を話そう」


「頼むぞ。お前が集めた情報次第で戦況が大きく変わるからな」


「私も元々ボストロールと戦う予定はなかったからな。できるだけ情報は欲しいところだ」


「了解。そんじゃ予定もざっくり決まったしさっさと休もう」


 そういって道具袋から寝袋を取り出し僕たちは十分な睡眠をとるのだった。

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