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ダンジョンサーガ  作者: 炎尾
森のダンジョン
15/22

14 それぞれの目的

「僕たちの目的は別々だよ」


「ただ師匠から命令されてることはあるけどな」


「師匠? 命令?」


 そういやリーンには何にも話してないからまずはそこからだったね。


「俺たちの師匠は有名な人間でな。すべてのダンジョンを一人で踏破したって言えばわかるか?」


「まさか・・・・・・あの『一匹狼』のことを言っているのか?」


「正解」


 僕がニヤっと笑って正解というとリーンの表情は驚愕に満ちていた。

 まぁそれもそうかもしれない。

 僕たちは師匠のことを鬼畜チビって言ってるけどダンジョンに潜る人間からすれば一応、一応雲上人だ。重要なことだから一応と二回言った。


「驚いた。だがそれで合点がいった。道理で強い訳だ」


「ホント何回死にかけたかわからないけどな」


「経験値ももらえないのにモンスターの巣に放り込まれたなんて数知れず、何度死んだと思ったことやら」


 修行時代のことを思い出し、僕たちは遠い目をし始める。

 目に光が無くなり始めたのを見て変なスイッチを入れてしまったと思ったのかリーンは話題を変えた。 


「二人の強さは納得がいった。そこで話は戻るがそんなに死にかける修行をしてまで果たしたい目的とはいったいなんだ?」


「俺は世界最強になりたい」


「世界最強?」


「そう。リーンは守りたいものってあるか?」


 そうロルフが言った言葉に少し考えを巡らせたあとその答えを言う。


「私は今のところないな」


「そうか。俺には守りたいものがあった」


 ロルフはあったと過去形で言った。

 僕もしっかり聞いたことはないから何とも言えないけど表情を見る限りあまり思い出しなくない話題だったのかもしれない。 

 ロルフは手をひらひらと漂わせる仕草をしながらあまり暗くならないように振舞おうとしている。


「その守りたいものを守るためには強くならなきゃいけないってことを知ったのさ。弱けりゃ守ることすらできない。間違ってるって思ってもそれを正すためには力がいるんだ。俺はそう守りたかった人とと約束をした。だから俺は世界最強にならなきゃいけない」


 最後にニカっと笑って見せたが僕にはそれが無理をしているように見えた。

 僕とリーンはそれ以上追及するのをやめた。


「「・・・・・・」」


「まぁ俺の目的はそんなところだ。盗賊だから強くなれないなんて決められてない。職業なんて関係なくまだまだ強くなっていくつもりなんでよろしくな」


 そういって雰囲気を変えるために強引にロルフは話を終わらせた。


「そんじゃ次は僕の目的だね。僕は記憶がないんだ大体7歳くらいまでね」


「記憶が・・・・・・ない?」


「そう。大体7歳くらいからかな? 気づいたら孤児院にいた。一応孤児院の人たちにも自分のこと聞いたけど僕のことを誰も知らなかった」


「つまり孤児院に置いておかれたってことか?」


「わからない。捨てられたのかもしれないね」

 

 その言葉にリーンが顔をしかめる。

 ロルフは僕の事を知っているため真顔でナイフを磨きながら話を聞いていた。


「僕の記憶はさっぱりないけど、僕の手元にはこの二丁の銃だけがあった。たぶんこれが手掛かりなんだと思う」


「その銃はなんだか見たことない形状なのだが」


「調べてみたら相当古いみたいだね。こんなハンマーをいちいち手動で操作するシングルアクションの銃なんて今時見当たらないよ」


 ホントに見当たらないんだよ。大体銃を使ってダンジョンに挑む人間すらほとんどいない。

 科学技術じゃ攻略の過程で強くなったモンスターを倒すことができなくなるからね。


「なのにその銃を使い続けているのだな」


「さっきも言ったけど手掛かりかもしれないからね。それにこれ色々と不思議なんだよ?」


「不思議?」


「そう。銃ってのは使用後の整備とオーバーホールって言って解体して整備をするもんなんだ。でもこれはそれが全く必要ない。というより解体できないんだ」


 昔手入れしようとしてネジ一つ見当たらないことに気づいた。汚しても次の日には綺麗になっている。まるで誰かの意思が込められているかのように。


「確かにそれは不思議だ」


「でしょ? 他にも火薬を使っているわけでもないのに本物の銃と同じように大きな音が鳴る。もう片方は音はならない空気銃になっていて完全に僕の職業に合わせて作られているんだ」


「そういえばシグルドの職業はなんだ? 私は狩人に近い職業だと思っていたんだが?」


「僕のギルドカードを見ればわかるよ。たぶん言ってもピンとこないからね」


 そう促すとリーンはカードケースを取り出し僕のギルドカードを取り出し職業を確認する。

 するとリーンの表情がまた唖然としたものになる。この表情の変わり方が面白いな。


「なんだこの魔導ガンナーとは!? それにこの強化弾と弱化弾って?」


「僕の職業はユニーク職業でねMPを使って銃に弾丸を込めるんだ。そして強化弾は見せた方が早いかな?」


 そういって有無を言わせず強化弾をリーンに撃ちこむ。

 いきなり撃たれていい気もしないだろうけどこれは試さないとわからない。


「いきなり撃つな! びっくりするだろう!」


 そりゃ怒るだろうね。


「まぁまぁ。とりあえずなんか変わっていることない?」


「・・・・・・? なんだか力が漲るようだ・・・・・・まさか!」


 またもや驚愕の色で染まったリーンの表情を見て答える。


「その考えであってると思うよ」


「例えエルフの魔法でも人を強化する魔法なんて聞いたことがない・・・・・・」


「それが僕の職業の特徴。当たりのユニーク職業なんだろうね」


「確かに当たりだな」


 そこで僕は不思議に思っている銃の話に戻す。


「ホントに不思議だと思わない? この二丁の銃はどこまでも僕の職業に合わせられているんだよ」


 職業を調べる儀式は5歳の時に行われる。

 それから二年間でこの銃は作られたと考えられるわけだ。


「確かにどこまでも不思議が付きまとうな」


「そう。僕の職業といい、この二丁の銃といいダンジョンに僕はたぶんいざなわれているんじゃないかな? だから僕の目的はこの記憶を取り戻したい。僕は強くなってバベルの一番上に居るって言われている神様に会いたい。そう仕向けられている。そんな気がするんだ」


「なるほど。だから強くなるためにボストロールに立ち向かうのか」


「そうだね」


 そこで僕の目的の話が終わった。

 するとリーンも自分の目的を語り始めた。


「二人はそれだけの目的があってダンジョンに潜っているのだな。あまり語りなくないような話を聞いておいて私だけ目的すら話さないのはズルいな。だから私も少しだけ話をしよう」


 そういってリーンは自分の目的を語り始めた。


「二人は魔法を見たことがあるか?」


 その問いに僕たちは二人そろって首を縦に振る。


「師匠の知り合い関係から見せられたことがあるよ」


「てか厳密にいえばシグルドのも魔法なんだけどな」


 それもそうかもしれない。魔導ってついてるし。


「魔法というのは適正さえあれば誰でも使える。エルフに至っては全員が適正を持っている。だからエルフだけは誰でも使えるんだ。例えばこんな風にな」


 そういってリーンは人差し指と親指の間で電気を走らせる。


「おお! 雷が使えるのか!」 


 魔法というのは属性がある。火、水、土、風、雷、光、闇、無と8つある。魔法に適性のある人間は8つのうち一属性だけが使える。例外なく2つ以上属性を持つ人間は絶対にいないとされている。

 ちなみに僕はこの中で言えば無属性に分類される。


 そして魔法はイメージで使うものだ。イメージを作り、MPを込めて魔法の形となる。それを相手にぶつけるのが魔法と呼ばれる技術だ。

 ただ二次創作とかでよく詠唱とか使ってるのを見るけどそんなもの現実には一切必要ない。

 ただカッコよさを求めてそういう詠唱をわざわざやる人間はいるけどね。


「ああ。私は雷の属性を持っている」


 僕たちが期待を持った表情でその話を聞く。

 しかしリーンは苦々しい顔をして次の言葉を言った。


「だが私が使えるのは今見せた規模でしか使えないんだ・・・・・・」


「MPがないのか?」


 そのロルフの問いにリーンは首を横に振る。


「いや。MPはあるんだ。イメージも落雷を見たことがあるからそれをイメージしているんだ。だというのにこの規模でしか魔法が発動できないんだ」


 リーンがそう話しているとき、その目にはうっすらと涙が溜まっていた。


「私はこの程度の魔法しか使えないことから落ちこぼれの烙印を押されたんだ」


 エルフはプライドの高い種族だ。落ちこぼれの烙印というのは相当に応えるものだったはずだ。

 そしてリーンはプライドを傷つけられた期間が他のエルフよりも圧倒的に長かった。

 だから先ほど落ち着いていると指摘したときに彼女は色々あったと言っていた。それがたぶんこれが原因なんだろう。


 それにしてもさっきは何があったのか聞かないって話をしたのに結局過去話聞いちゃってるなぁ。


「周りからは常に蔑まれていたよ。落ちこぼれと言ってな。あの時は本当に悔しかった」


「それで?」


 僕は努めて優しく続きを促す。


「だから私はずっと弓の腕を鍛えてきたんだ。エルフは狩りをして生活をする。だけど狩りだけでは強くなるには限界があったよ」


「どうやってそんな立ち回りを手に入れたんだ?」


「一応私にも優しくしてくれた仲間はいたんだ。その人が私の弓の師匠で徹底的に弓の立ち回りを教えてもらった」


 なるほど。魔法ができない分とにかく弓を使う技術だけを徹底的に磨いてきたってわけか。

 どうりで囲まれる前に敵を察知したり、戦いに慣れている感じがしたわけだ。


「弓は使い始めて何年くらいなの?」


「だいたい10年くらいか。落ちこぼれという烙印が耐えられなくて魔法を使ってやるんだって努力をしていた期間が長かったからな」


「それで今の立ち回りができたわけか」


「そういうことだ。それで肝心の目的だったな」


 そういえば今まで話をしていたのは目的の話だったな。

 よく考えたらここまではリーンの過去話だった。


「私の目的は私を落ちこぼれといったエルフ達を見返してやることだ。そのために私は村も姓も捨てた」


「ダンジョン攻略して見返せるの?」


 その問いにリーンは頷く。


「ああ。エルフに現在七つ星セプタグラムを持つものは一人もいない。エルフはプライドが高いからそのことを大きく気にしているらしいんだ」


「確かに言われてみれば俺たちが生きている間にエルフが七つ星にいる話を聞いたことがないな」


「だから私が七つ星になるんだ。他のエルフ達はプライドが邪魔してエルフだけでパーティーを組むんだ。だからいつまでたっても踏破できない」


 なるほど。そりゃ攻略できんわ。

 ダンジョンではパーティー戦闘する際には基本的に前衛や遊撃、後衛といった役割ロールを決める。

 しかしエルフの職業は大体が狩人や魔法使いといった職業になる。

 何が言いたいかというと後衛しかいないのだ。そんなパーティーを組めばモンスターを止める役割が一切おらずイメージを練ってMPを込めようとしてもモンスターが気になって集中できない。弓で牽制するのにも限界があるだろう。

 だからダンジョンを攻略できない。結果七つ星が生まれないんだ。


「そりゃ後衛だけのパーティーで進めるほどダンジョンは甘くはないだろうな」


「確かに。だったらリーン一人で攻略するのも厳しかったかもね」


 後衛職が一人で戦うのにも無理がある。

 実際のところ一人でダンジョンを踏破している人間は前衛職しかいないのがそれを物語っている。


「むぅ。耳が痛い話だ。本当は私もパーティーを組みたかったんだ。だけど連中はレベルにかまけて腕が未熟なものが多くてな・・・・・・」


「ああ。それ僕たちも思ってた。たぶんパーティー組んでもついてこられないだろうってね」


「だから昨日の模擬戦を見た限りでシグルドにパーティーを組んでもらおうとしてはいたんだ」


「えっそうなの?」


 これは初耳だ。

 僕もリーンの腕ならパーティーに欲しいと思って誘おうと思っていたからね。


「じゃあどうして逃げたんだ?」


 そこでリーンは少しもじもじしながら答えた。


「私も10年もかけて弓の腕を磨いてきたんだ。負けて悔しかったんだ」


 ちょっとむくれながらそう答えるリーンは美形なのも合わさって本当にやばかった。

 何がやばいかって? かわいいんだよ! 説明がいるか!


「ははっ。なんだかんだ言ってまだエルフとしてのプライドはしっかり残っているらしいな」


「すまないな。先ほどの握手といい、昨日の模擬戦といい」


「いやいい。戦いにはそれくらいのプライドはあった方がいい。俺たちも相当の負けず嫌いな自信があるからな」


 それもそうかもしれない。勝てないってわかってても僕たちは師匠に挑み続けた。

 それは簡単な理由だ。ただ勝ちたいから。負けたままで終わらせたくないから。

 意固地な負けず嫌いだっただけかもしれない。


「さて。お互いの目的も知ったし、十分休憩もしただろ。そろそろ進むぞ」


 そうロルフが仕切り僕たちはボストロールのいる7階層へ再び足を進め始めた。

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