11 ダンジョン!
ロルフ謹製ポーションによる気絶の時間も含んで僕たちはダンジョンエリアを抜け、ダンジョンとなっている巨大樹の下に到達した。
到達したはいいがだいぶ寄り道をした結果すでに空は赤みを帯びていた。
「ダンジョンに着いたけどどうするの? これからダンジョン入るの? それとも野営? それともワ・タ・シ?」
「おいおい。そんなにポーションが欲しいなら先に言え」
「すいませんっしたぁ!」
僕は流れるように土下座を敢行して許しをもらった。
「ったく。ダンジョンには入るつもりだぞ」
「でもダンジョンに入って休めるところなんかあるの?」
「いくつか安全地帯はあるみたいだ」
ダンジョンにそんなところがあるのか。
てっきりダンジョンエリアの方が安全だと思ってた。
「へー。安全地帯ねぇ。でも大体どこの安全地帯で休むのかは想像ついてるんだけど」
どのダンジョンにも確実にある安全地帯がある。恐らくロルフの考えている場所はそこだろう。
「ほう。シグルドにしては珍しいな。それで? 一体どこだ?」
「珍しいは余計だ。たぶんダンジョンボスの手前にある安全地帯だろ?」
「その根拠は?」
「ボスがいるってことはダンジョンも終盤の地帯だ。レベルの高いモンスターが近くに居るから休憩しながらレベル上げも狙えるってところが根拠かな」
「正解だ。ぶっちゃけ気絶してた時間があるから体力的には問題ないだろ?」
「不本意な気絶による休憩の仕方だった・・・・・・」
あんなポーションで気絶して休憩って随分酷い休憩の取り方だと思うんだけどね・・・・・・
「大丈夫だ。ストックはいくつもある。死にそうになるたびに飲ませてやるから安心しろ」
「全く安心できない・・・・・・!」
絶対ポーションの使い方間違えてるよね。
少なくともポーションは脅しの道具ではないと思う。
「それともう一つ。ダンジョンに入る前に決めとかなきゃいけないことがある」
「もう一つ?」
「ああ。戦闘における陣形を決めておこうと思ってな」
「なるほど」
ダンジョンはダンジョンエリアと違い小部屋になっている場所だったり通路だったりと戦い方が大きく変わる。
ここまでは完全に自由な戦闘で戦ってきたけどダンジョンでは役割を決めないと思うように連携ができず、味方を攻撃してしまうことになることもある。
だからダンジョンで戦うための陣形を決めておく必要があるのだ。
「ぶっちゃけ二人しかいないから前衛と後衛どっちで戦うかってくらいなんだが」
「どう考えても僕が後衛だよね。陣形あんてあったもんじゃない」
「それはお前がパーティーメンバーの勧誘に失敗するからだ。本来ならもっと連携を意識した陣形を組んだりするんだがな」
「耳が痛い話だな」
ロルフのお小言が入った。そこを突かれると痛い。
だってしょうがないじゃん? ギルドにいた人を入れても連携とか言えるレベルじゃなかったんだから。
「ともかく俺が前衛のお前が後衛って形になるんだが・・・・・・誤射するなよ」
「誰に物を言ってる」
僕がどれだけ銃に関して鍛錬を積んでいると思っている。
さっきのコボルトやキラービーと一発の誤射もしていない。
「愚問だったな」
「当たり前だ」
きっちり今までの恨みを晴らしてやるからな。
背中に気を付けやがれ!
「ところでお前の顔に俺の背中を打ち抜きますって書いてあるんだが」
「なななななんんのここことかさささっぱりだなななぁ!」
「お前俺のこと殺る気満々じゃねぇか・・・・・・」
協力? コンビーネーション? ぼくわかんなぁい。
「レベルもさっきのキラービーで5になってんだから当たったら洒落にならんからな」
さっきの戦闘で僕たちは晴れてレベルが5となった。キラービーはレベル3の敵だったためなかなかレベルが数百匹倒したところでレベル差によって経験値が入らなくなってしまったようだった。
「まぁ誤射したらどんなことがあってもお前を道連れにするから安心しとけ」
「さっきからロルフが言ってる言葉ひとっつも安心できる要素がないんだけど」
「気にするな」
ホントかよ。前科がありすぎてホントに信用できないんだが。
「まぁ決めることも決めたしそろそろ行くとするか」
「了解」
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巨大樹のバカでかい根本の部分がダンジョンの入り口だ。
大きく口を開けたような構造の根になっていてそこからダンジョンに入る。
「なんだろう? 外と空気が全然違う気がする」
外よりも澄んでいるような空気の感じがする。
「このダンジョン全体にあるあの草のせいだな」
そういってロルフは光を発している草を指さす。
「このダンジョンではあそこのライトウィードっている草が常時光合成を行っている。ホントにわずかな光で発光して、周りの草もその光に反応して光合成を行う。そして光合成が行われている時に光を発するのが特徴なんだ。」
「どおりでダンジョンも明るいわけだ。そして光合成で空気も常に澄んだ状態になっているってことだね」
「そういうこった。他のダンジョンでも発行するものがあるから松明はほとんど必要ない。戦闘に集中できるわけだな」
確かに。周囲が常に暗い中で戦うとなると相当訓練を積んだり、夜目の効く種族でないとまともに戦えないだろう。
「ありがたい話だ」
そんな話をしながらダンジョンを進む。
少し進むと行き止まりになり数本のツタがあった。
このダンジョンの特徴は上に登るタイプのダンジョンということだ。
この巨大樹の中にある植物のツタなどを使って上がっていく、階層構造となっている。
道というほどではないが地面もしっかりしているもので全力で動いても支障がなさそうである。
ただ迷路のように複雑な構造になっているため闇雲に歩き回るだけでは時間がかかるだろう。
「ところでロルフ。ダンジョンの道順は覚えてるの?」
「ああ。最短で最奥部まで着けるルートだけな。今回の目標は覚えているだろ?」
「ギルドの依頼で来た冒険者よりも先に一度だけ最強と言われるボストロールと戦うためだろ」
「そうだ。必要な素材はまた別の機会でいいからな。だから最短のルートだけ覚えておきゃいいんだよ」
確かに。現在はもう夜だ。あまり長引くと依頼で来た冒険者にボストロールの討伐をされてしまうかもしれない。
それなら最初から無駄を省いたルートで進む方がいいだろう。
ん? 昼頃あれだけ寄り道してただろって?
あんなもの誤差だよ誤差!
「ギルドの依頼が来るまであと一日半ってところだからね。ならさっさとレベルを上げて休憩を取って万全な状態にしとかなきゃ」
「そういうこった。さっさと進むぞ」
そういってロルフはずんずんと前に進み始めた。
そして数分したところで足を止める。
「草をかき分ける音がするな。数は恐らくモンスターパーティーだ」
「了解」
モンスターパーティーということは数は4~5匹。
気配は前方から。
そうしてモンスターパーティーが草の根をかき分けて姿を表した瞬間に僕は発砲する。
見た目はアリのようなモンスターで見えた瞬間にモンスターの目に照準を合わせて2発ほど当てるだけの発砲だ。
しかしそのモンスターは動きが圧倒的に鈍くはなったがまだ息の根はあるようだった。
「硬いな・・・・・・」
そう僕が呟いた瞬間に他のモンスターが一気に飛び出してくる。
「シグルド! マンティス1、ジャンピングスパイダー2だ!」
そういってロルフは向かってくるモンスターを迎え撃つ。
先ほど僕が発砲したモンスター以外にカマキリを大きくしたサイズのマンティスというモンスターや人の顔面ほどのジャンピングスパイダーがこちらに向かってくる。
一番最初に飛び掛かってきたのはジャンピングスパイダーだった。
大きく足を曲げて跳躍。ロルフの顔面目掛けて飛び掛かって来る。
「視界の邪魔だ!」
ナイフを投げてクモの勢いを殺し後ろからの僕の援護射撃により完全に動きが止まった。
無事倒せたみたいだ。
さらにもう一匹のスパイダーもロルフに飛び掛かり始め、目の前に来ていたマンティスがロルフに腕の鎌で切りかかる。
でも僕の存在を忘れてもらっては困る。
先ほどの援護射撃と同時にロルフに強化弾を撃ち込んでおいた。
その結果は飛び掛かって来るクモを片方のナイフで横に薙ぎ払い、もう片方のナイフで鎌を受ける。
そこからカマキリのモンスターが次の挙動を始める前に頭のある部分を蹴り飛ばし、頭と体を分離させた。
そうして向かってきたモンスターがすべて倒れ、最初に動きを止めたアリのモンスター、ベビーアントの息の根を止めて完全にモンスターパーティーは全滅したのだった。
「お疲れ。さっさと経験値にしてしまおう」
「そうだな」
そうしてすべてのモンスターを経験値として回収した後反省を始めた。
「最初に弾丸を当てたモンスターが地味に生き残ってたね」
「ベビーアントは少しだけど甲殻に硬さがある。弾丸ならもう少し貫通力が必要だろ」
「連続で同じところに撃ちこむしかないってことね」
「そういうことだな、もしくは弾丸の形状を少し変えてみるとか」
実際のところ弾丸の形状を変えることはできる。なぜなら全部僕の魔力で作っているからだ。
ただ、別の弾丸にするとイメージが少し違ってくるため多少の時間が掛かってしまうのが難点だ。
「そうするとリロードしなおさなきゃいけないし、弾丸を作るのにも少し時間が掛かるから今は却下だね」
「まぁそこはお前に任せる」
そこは追々の課題ということで。
「その後のモンスターについては言うことはないね」
「ああ。連携してきても同時に捌けるのであればそうした方がいい。一体一体叩くという戦いが今の俺たちにはできないからな」
「僕たちのパーティーは完全に火力特化だからね。モンスターの動きを制限するような手段が少ないのが難点だよ」
そういう意味では最初に飛び掛かってきたジャンピングスパイダーのような対処で一気に向かってこれるモンスターの数を減らすといった行動が必要になる。
「モンスターを何体も抑えられる騎士職がいないのはこれから問題になるだろうけどそれは追々見つければいいだろ」
「そうだね」
今の時点ではそういったものがなくても戦えているからいい。
しかし敵が強くなると一匹を倒すのにも時間が掛かるようになる。
その時にはモンスターを足止めできる職業がいなくてはやっていけないだろう。
「反省はここまでにしとこう。ないものねだりをしても意味がないからな」
そういってロルフは反省を切り上げ再びダンジョンを進み始める。
「そういや今のモンスターのレベルってどれくらいだったっけ?」
「ベビーアント、ジャンピングスパイダーが6。マンティスが8だ」
「僕たち既にレベルが足りてないね」
「そりゃそうだろうな。しっかりとしたレベル上げをしてないからな」
そういう意味ではキラービーの巣に突っ込んでいったのは正解だったかもな。
レベルが足りなければ先ほどのモンスターももう少し倒すのに苦労したかもしれないし。
「まぁそれもこれから出るモンスターすべて倒していけば上がるでしょ」
そうしてダンジョンの奥に進んでいく。
道中何度もモンスターには出くわした。
そのほとんどがジャンピングスパイダー、ベビーアントだった。
「なんか出てくるモンスターが偏ってる気がする」
「まだ序盤だからな。たぶんにあるツタを上に登ればマンティスが基本的に出てくるようになるだろ」
「ならさっさと登ろう。ジャンピングスパイダーがさっきから鬱陶しい」
この階層において厄介なのはジャンピングスパイダーだ。
このモンスターは出会った冒険者の顔に張りつくように飛んできて視界を奪ってくるのだ。
もちろん飛んでくるスピードもなかなかのもので下手な当たり方をすれば首が変な方向を向いてお陀仏という危険もある。
撃ち落とす場合にはタイミングをしっかり計らないと危険だ。
そういう面でここでも騎士職が欲しくなる。
盾で顔面さえガードしてしまえばあとは盾に張り付いたジャンピングスパイダーを地面に叩きつければそれで終わりだからだ。
僕たちにはそれがないから毎回撃ち落とすという戦い方を選択している。
「それは言えてるな。いきなり横から飛んでくるとなると気が抜けない。さっさとこの階層は抜けよう」
そういって僕たちは少し早足になる。
そしてこの階層を抜けるためのツタを見つけたのはこの会話をした一時間後のことだった。
歩いている途中に何度も顔面目掛けて飛んでくるジャンピングスパイダーを凌いで次の階層に行く頃には僕たちのレベルは6に上がっていた。




