03
なにせ、本来は個人で賠償しなければならないところを、学校側で全て解決してくれている。そのことに恩義もなにも感じないほど、カネミツは無神経な人間ではない。
この反省文を誰かが真面目に読むことがあるかどうかは、また別の問題である。
「レポートだってまだ終わってねぇのによー」
ぼやきながらようやくペンをとったカネミツに対し、オキツグは宣言通りよどみなく右手を動かしながら、
「なんだ、まだ終わっていなかったのか。お前のことだから早々に片づけたと思ってたんだが」
「なんだよその、まぁ俺は終わってますけどねー的発言は」
「終わってるぞ」
余裕の返答と同時にレポート用紙を埋め終えた。
それどころか、カネミツがなにも言えずに口をぱくぱくと動かしている間に、文章の見直しまで済ませてしまう。
「だいたい、ハーゲンダッツを食っていいのはレポートを終わらせたやつだけだろう」
「テメェあとで絶対ぶっとばすからなチクショー」
「反省しないやつだな」
「お前に! だけは! 言われたくねぇ!」
今のところ、アイスを食べたことに対するオキツグからの謝罪の言葉は全くない。
カネミツからすれば災難でしかないのだが、謝罪を要求しようとしても、オキツグ本人にしか通用しない理屈で適当に言い逃れられることは目に見えていた。
しかも、その理屈が通用すると本気で思っているらしいのだからタチが悪い。
「時に、カネミツ」
だから、というべきか。
オキツグは常に、自分のペースで会話を成り立たせる。
「とうとうオレたちの学年にも落第生が出るらしいぞ」
内容に反して、口調はあっさりとしていた。
「とうとう、って……まだ二年だろ? 早すぎないか?」
「二年だからこそ、だろう」
オキツグは見た目に反した几帳面さでレポート用紙を三つ折りにすると、そのまま上着の内ポケットに収める。




