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「で、それが停まる理由になんのか?」
異変が起こってから現在に至るまで、介入者は動いていない。
遠く、上空に見える〈ワシリーサのしるべ〉に直接触れないまでも、近くまで行ったことは確実だ。ということは、介入後、彼あるいは彼女はその高さから地面に叩きつけられたということになる。
「死んでるんだろ、アイツ」
「いや、息がある」
「……はい?」
そんなバカな、とカネミツはもう一度クレーターに目を向けた。
姿こそ見えないものの、地面がめくれあがるほどの衝撃が、人体を破壊しないはずもない。
「あれで?」
「他人の魔法を奪おうとしたやつがどうなるか、知っているか?」
オキツグはクレーターに向けていた指を下ろし、続ける。
「魔法のための象徴を自分で選んだり作ったりしなくちゃならないのは、少しでも使いやすい魔力を安定して手に入れることができるからだ。そこらに落ちてるものの魔力を使っても魔法はできるかもしれないが、手間に対する見返りが少ない。自分のための魔力じゃないからだ」
では他人の象徴ならば、とオキツグは一呼吸挟んだ。
「誰かが象徴として……自分の魔法のために必要な、自分のために必要な象徴として使っているものを、他の誰かが使おうとしたらどうなるか。手間に対する見返りが少ない、なんていう次元の話じゃない。我をなくすことになる」
「我?」
「単純な話だ。魔法使いと象徴が、言うなれば力を合わせて作り出すのが魔法。その魔法を、魔法使いが一人で奪おうとしたら。魔法使いと象徴から発される二つの魔力と、そこに含まれる感情や意思に打ち勝たなければならない」
歯を打ち鳴らす〈ワシリーサのしるべ〉たちが、さらに騒々しくぶつかり合い始める。
カネミツの視線の先、クレーターの中心地で、立ちあがる影があった。




