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「いつか頭ブチ抜いてやる……」
「おい、見ろ」
なんなんだよ! と顔を上げる前に、カネミツはふと思い出した。
いま、カネミツとオキツグは追われている身である。
空を自由に駆け巡り、炎を吐き出す防衛機構が彼らを追いかけていたはずなのだが、停止し、恰好の的になっている今も火炙りにはされていない。
視線を上げてみると、後方、かなりの距離をとった位置に、〈ワシリーサのしるべ〉のミニチュアたちが止まっているのが見えた。その気になればものの数秒で人間二人を灰にできるはずだというのに、距離を詰めようとする気配がない。
忌々しげに、あるいは警戒するように、歯を噛み鳴らしてガシャガシャと音をたてている。
次いで、オキツグの指さす方を見ると、遠く、草原の端に土のめくれあがったクレーターができているのが目に入る。すぐ傍らに刺さっているのは、学園支給の飛行用箒だろうか。
「介入者だ」
断言するオキツグ。
しかし、否定する要素はどこにも見当たらなかった。
ババ・ヤガーは言った。この件は「若気の至り」によるものだと。「学生」が〈ワシリーサのしるべ〉に介入し、魔法の支配権を奪おうとしたことに原因がある。
そして、介入者がクレーター付近にいるのだとしたら、〈ワシリーサのしるべ〉の挙動がおかしいことにも説明がつく。他者からの介入を受けた結果、持ち主のいない魔導具にすら介入を避けようとしているのだから、その原因に近づこうとしないのも頷ける。
なにより、〈ワシリーサのしるべ〉に異変が起こる前。オキツグは介入者を指して言っていた──「悪意の純度が低すぎる」。
「オレ自身がかつて言ったことを否定するのは心苦しいが、訂正する。アイツが持っているのは悪意という程のものでもない。八つ当たりする子供みたいな薄い感情だ」
クレーターから反らさないまま、オキツグは目を細めた。
ひとまずカネミツは怒りを収め、問う。




