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時速八〇キロを軽く超えている自転車を駆っているのだから、必要にはならないかもしれないが。
それはともかく、
「なんでこんな入り組んだ道に入った? 確実に最短ルートじゃないだろうが」
無秩序に左折と右折を繰り返す道筋は、道幅と傾斜、不意に現れる行き止まりや資材に対応した結果のそれだ。
オキツグが風を読んで進んでいるとはいえ、手間のかかる道をわざわざ選ぶ道理はない。彼の理屈がそれを受け入れるかどうかは別として。
「オレの右目が導くコースは最短じゃない、『最速』だ。それに、ここを通っている間、〈ワシリーサのしるべ〉は垂直方向からしか攻撃をしてこない」
「あん?」
ただし、今回ばかりはオキツグにも理があった。
ミニチュアたちが水平方向の火炎放射を撃ってこない。
高速で移動する標的に対し、上空から垂直に火柱を落とすような攻撃は非効率にすぎるが、周りを見てみればその理由もおのずと知れる。
魔法のための物品が並ぶ、魔導具商店の数々。
まだ魔法使いによって象徴付けされていない、ナチュラルな魔力を放つアイテムがそこら中にあふれている。
「まさか、魔導具への影響を避けてるのか?」
「暴走しても、学園都市の防衛機構だということだな」
それに、と続けつつ、オキツグはハンドル捌きと体重移動で狭い道を駆け抜ける。
建物の隙間に遠く見えていた、青い空を映す壁が近づいている。
「誰かの魔力介入を受けて暴走状態に陥ったなら、誰のものでもない魔力だろうと積極的に近づこうとはしないだろう。実際、介入への拒絶は表明しているわけだからな」
介入は許されません──〈ワシリーサのしるべ〉が発した警告が、カネミツの脳裏で繰り返される。
「……やっぱ、そこまでの自律機能は持ってるよなぁ、アレ」
「昼夜の明暗まで事細かに学長が命じているとは考えにくいからな」
淡々と言うオキツグに対し、聞いているカネミツの表情は渋い。




