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「なに。このババ・ヤガー、なぁんも対策を練ってないなどということはない。多少の問題ならさくっと解決してみせようぞ」
言って、少女──ババ・ヤガーは胸を張る。
カネミツの腰程度の身長しかないので威厳や迫力は皆無であったが、その名は強い意味を持っている。
ロシアの民話にも言い伝えられる、大いなる魔女。
地下都市ワシリーサを作りだし、魔法学園〈ババ・ヤガーの小屋〉を設立した、桁違いの「魔法」を実現する魔法使いである。
「で、結局なにが起こってるんだよ」
「若気の至り」
「……は?」
問いただす暇は与えられなかった。
直後に、周囲が薄暗くなったからだ。まるで太陽に雲がかかって日光が遮られたかのようで、そうやって言えば自然現象のひとつではあるのだが、ワシリーサでは事情が違う。
地下都市に雲は発生しない。
カネミツとオキツグは、ほとんど同時に窓の外へ視線を向けた。
四階からは、ワシリーサがほぼ全て一望できた。高くて二階建ての建物か農地くらいしかない町で、もっとも背の高い建造物は〈ババ・ヤガーの小屋〉である。
故に、太陽──〈ワシリーサのしるべ〉の異様はすぐに知ることができた。
宙に浮かぶ白い頭骨はそのまま、中に孕んでいた炎が、赤から黒へとその色を変えている。そのせいで辺りが暗くなったのはなんとなく理解できるが、根底にある原因には思い当る節がない。
黒い炎を収めた頭蓋骨に二人が目を奪われていると、傍らでババ・ヤガーがぼそりと言った。
「学生じゃよ」
一度ため息を挟み、
「できると思ったんじゃろ、魔法を盗むなんてことが。はぁ、なんというか、今までなにを考えて魔法を使ってきたのやら」
教え方が悪かったのかのう、と言うババ・ヤガーは少し悲しげだった。




