100点の答えと0点の答え
柊と夏海は風雷館のリビングルームに戻ってきた。リビングルームには風雷館にいた人物全員が集まっている。
柊は呼びかける。
「皆さん。先ほど尾形雷助さんが殺されました。この事件が外部犯なのか内部犯なのかはまだ分かりません。後の捜査は警察に任せましょう。窓やドアは施錠して凶悪犯が侵入しないようにしてください」
夏海はコーヒーを飲んだ。
「問題はどのくらいで警察が来るか。一晩で来るといいが」
すると尾形翔が手を挙げた。
「一晩じゃこないな。一生来ないかもしれない。だって電話線が壊されているんだから。この館では携帯電話が圏外になる。助けなんて来るはずがない」
「つまりこの館は陸の孤島になった。そして雷助さんを殺した犯人はこの中にいる」
柊の一言に人々は凍りつく。
「外部犯じゃないのですか。先ほど外部犯か内部犯かが分からないとあなたは言ったじゃないですか」
瞳の言葉を聞き柊は首を横に振る。
「まだ断定できないから外部犯対策で鍵の施錠を指示した。今度は内部犯対策だ。犯人がこの中にいることを伝えたら下手な行動をしなくなるだろう。それだけ生存の可能性が高くなる。俺は100点か0点を取るくらいなら両方の対策をして50点を狙う。下手なギャンブルが嫌いだからね」
「内部犯か外部犯があなたの命を狙っているかもしれない。慎重に行動してください」
夏海がそう言うと尾形颯は血相を変えて自分の部屋に逃げて行った。
柊と瞳、美咲と洋子の四人は部屋に籠った颯を説得する。
「颯君。リビングルームに戻って来なさい。凶悪犯はあなたの命を狙っているかもしれない。一人だと危険だ」
柊の説得に颯は怒鳴る。
「ふざけるな。内部犯ならあのリビングルームの中にいる人間の誰かが犯人かもしれないじゃないか。もしもこの殺人が黄金の仏像を狙った強盗殺人事件だったら犯人は俺たちを皆殺しにする。いきなり来た探偵なんて信用できるか」
そう言うと彼はドアに鍵をかけた。
柊は言葉が出なかった。仕方なく気が落ちつくまで一人にしようと思った。親族が殺されてショックだったのだろう。