表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/18

犯人の16年間 前編

警告 


今回の殺人事件の動機は教育上よくありません。そのためR15に設定しました。

読者のみなさん感情移入することは自由です。この作品はフィクションですが、全国にはこの犯人と同じ境遇の人がいるのも事実です。そのことも考えてください。


全国にいるこの犯人と同じ境遇の読者様。私はあなたの復讐したいという気持ちを背中を押して応援するつもりでこの作品を書いたわけではありません。復讐を止めるためにこの作品を書きました。

この犯人と境遇が同じではない私がこんなコメントを発表していることに違和感を覚えた読者様が「お前に何が分かる」と言われれば何も言えません。


最後にもう一度言います。この作品を読んだ隠し子さん。どうか復讐殺人をしないでください。私はあなたの背中を押すつもりはありません。もしもあなたがこの小説を読み殺人を犯し逮捕されたとしても、私は一切責任を取りません。だから私を恨まないでください。


 美咲は父親の名前が出て驚く。

「なんで私の父に感謝するの。あなたは尾形風馬の浮気相手の子供でしょう」

「たしかにそうだった。私はあの人の浮気相手の子供。それを悪いことのように思ってここまで生きてきた」



 十六年前千葉葵は小学校の教室でいじめを受けていた。同級生たちは葵に向かい黒板消しや消しゴムを投げる。

「父ちゃんも言っていたぜ。お前は浮気相手の子供だからこの世にいてはいけないって」

 一人の男の子の声に賛同するかのように周囲から一つの言葉を同級生は発した。

「悪魔の子供」

 耳に蛸ができるほど葵はこの言葉を聞いた。この言葉に彼女は傷ついた。

 


 家に帰ると毎日のようにベッドの中で泣いた。大切な母親の前では笑顔を装うために。何回も自殺を考えたができなかった。自殺すれば母親を笑顔にできなくなるから。



 それからも周囲の人々は怪物を見るかのように接した。浮気相手の子供は存在してはいけないと言い聞かせるような差別。千葉葵もただの人間。浮気相手の子供というだけで差別を受けなくてはいけないのか。葵には理解できなかった。



 三年前唯一の理解者だった母親が病死した。母親の葬儀の日も親戚は彼女を白い目で見た。

 親戚たちはひそひそ話を始める。

「あの子が尾形風馬の浮気相手の子供よね」

「そうだよ」

 


 その夜千葉葵はベッドの中で泣いた。もう唯一の理解者はいない。それは味方がいないということを意味する。

 ふと彼女は考えた。人生を修羅場にしたのは尾形風馬が母親を捨てたから。彼が一族に残らなければいじめられることも白い目で見られることもなかった。

「全ての元凶尾形一族に復讐するしかない」

 


 こうして風馬一族への復讐殺人を実行するための準備に入った。

 しかし何年考えても殺害方法が思いつかなかった。完全犯罪を狙おうと一所懸命考えたがどれも夢物語。実行は不可能だった。



 一か月前会社をリストラされ途方に暮れていたころあることを思いつく。

「なにも一族を殺さなくても自分が自殺すればいいんだ」

 ようやく自殺をする覚悟ができた彼女は道路を見る。早朝の出勤ラッシュ。さらに天気は雨で周囲は薄暗い。この状況なら確実に交通事故を装って自殺ができる。

そう考えて彼女は赤信号の横断歩道を躊躇することなく飛び出す。

彼女の目の前で居眠り運転をしているようなトラックが走った。

(これで不幸な人生が終わる)

しかしこんな彼女の願いは叶うことはなかった。

「危ない」


 それから何時間が経過しただろう。千葉葵は病院のベッドの上で目覚めた。

 一瞬何が起きたのか彼女には理解できなかった。

「なぜ生きているの」

 彼女は思い出す。

(たしかあの時男性が私を突き飛ばして)

 

 待つことができず彼女は呼び鈴で看護師を病室に呼び寄せた。

「なぜ私が病院にいるのかを説明してください」

「交通事故に巻き込まれそうだったあなたを高野隆さんが助けたのです」

「その高野さんはどこにいますか」

「同じ病院にいますよ」

「連れて行ってもらえませんか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ