ありえない展開と第三の事件
警告
今回は推理小説史に残る前代未聞な展開が発生します。この展開をおもしろいと考えるのか。それともこの展開はタブーだと解釈するのかは読者様の自由です。
この展開をタブーだと思った読者様へ。この小説を読むのをやめないでください。私はただタブーを犯したわけではありません。何か考えがあるから犯したということしか今は言えませんが・・
リビングルームに戻ると尾形瞳と高見美咲がコーヒーを用意していた。
「謎は解けましたか」
美咲の問いに柊は意外な回答をする。
「もうやめだ。やっぱり警察の仕事を奪ってはいけないな。そんなことより宝探しでもしないか。この館に眠っている黄金の仏像探しだ」
先ほどまで推理していた探偵とは思えない発言に美咲たちは呆れた。
「あきらめるなよ。さっきまでの捜査は何だったんだ」
「そうですよ。それに早くしないと犯人に証拠が消されてしまうでしょう」
翔と葵の発言に柊は耳を貸さない。
「最初からただの探偵に犯人探しは無理だった。それに犯人はこの館からは逃げることができない。後は警察が何とかしてくれるさ。警察が来るまでゆっくり宝探しでもしていた方がましだ」
洋子も怒鳴った。
「最低な探偵ね。いまさら宝探しなんてひどすぎません」
激化するリビングルームを夏海は沈めた。
「まあまあ皆さん。現実の探偵が殺人事件の捜査をすることはありません。皆さんは探偵小説の読みすぎですよ。ここは柊さんの言うように宝探しでもしながら警察を待ちましょう」
まさかの展開にリビングルームに紛れている犯人も呆れた。
(現実の探偵はこの程度か。真相が見破られると思って恐怖したが、相手が迷探偵で助かった。さて仕上げでもしますか)
犯人はさりげなくポケットに忍ばせたスイッチを押す。
すると矢が窓ガラスを割った。柊たちは突然割れた窓ガラスに驚く。またボウガンが発射されたと柊は思った。周りを見ると千葉葵の左足を矢が貫通していた。
「早く手当しろ」
柊は葵の体を観察する。尾形颯殺害の時には矢に毒が塗ってあったが、青いチアノーゼも痙攣も起きていないことから毒は塗られていないようだった。
柊は確信した。
(やっぱり。犯人はあの人だ)
柊と夏海は一応外に出てどこから矢が放たれたのかを確認した。
「軌道から矢はここから放たれたようですね」
夏海は鳥小屋を指差した。鳥小屋の周りには鳥の糞が落ちている。鳥小屋の中にはボウガンがあった。
柊は鳥の糞を匂ってみる。
「この糞の匂いは・・」
夏海は状況を分析した。
「状況から考えて犯人はスイッチでボウガンを操作して葵さんの左足を射抜いた」
柊は夏海の推理を聞き流した。
「だからどうした。こんなこと警察でも分かる。リビングルームに帰ろう」