落ちたスマホと宝探し大会
冥想をしていた最中に喧嘩をする声が聞こえたことを柊は思い出した。
「それでスマホに鍵型のキーホルダーがついていたがそれは何だ」
「母の形見です。このキーホルダーの謎が解ければ大金を手に入れることができるらしいです」
葵はスマホについているキーホルダーを柊に見せた。材質は一般的な皮で何も変わったことはなかった。
事件の真相を導き出す手がかりが天から降りてきたと思ったが見当違いであった。
手詰まりだと感じた柊は夏海に話しかける。
「どうだ。何か分かったか」
「さあ。犯人の正体と動機。すべて分かりません」
相棒に頼ってみたが何も進展がない。このままだと犯人に警察が見つけるであろう証拠を消されてしまう。
「宝探しよりも難しいですよね。真相を探るのは」
夏海の何気ない呟きを聞き柊は思い出す。
「それをすっかり忘れていた」
柊はあることを思い出し、煙草を吸っている翔に話しかけた。
「一か月前にこの館で宝探し大会を開催したそうだな。その参加者は分かるか」
翔はその言葉に呆れた。
「部屋に帰れば分かる。名簿を持っているからな。でも大丈夫か。殺人犯がいるんでしょう」
「まあ犯人は内部犯だと分かったので殺人鬼が襲ってくることはないだろう」
翔と夏海は目を点にする。
こうして二人は翔と共に翔の部屋を訪れた。
翔は鞄から名簿を取り出す。
「これが宝探し大会の名簿だ。こんな名簿で何が分かるんだい」
「高野美咲さんの父親と尾形雷助さんと颯さがこの宝探し大会に参加したのかどうかだ」
柊は名簿を閲覧する。一分もしない内に彼は尾形雷助の名前と颯の名前を見つけた。
「やっぱり宝探し大会で何かがあった」
それから一分後高野美咲の父親らしい男の名前を彼は見つけた。
「確認です。高野美咲さんの父親は高野隆さんで合っていますか」
「はい。隆さんはこの宝探し大会の一週間後に交通事故に遭って現在も入院中だ。なんでも女性が轢かれそうになった所を助けたらしい。そういえば隆さんと瞳さんは幼馴染で、洋子さんの通っていた高校のボクシング部の顧問をやっていたそうだ。かくゆう私と隆さんはボクシングの大会で出会ったが」
高野隆という男と四人の容疑者は繋がった。
だが本来の目的であった動機から攻める作戦も失敗に終わった。
柊は第一の殺人事件のトリックについて考え込む。
(分からないのはなぜ犯人は第二の事件の凶器をボウガンにしたのか)
分からないことが多いと柊は思った。丁度その時尾形翔が笑いながら部屋から出てきた。
「どうしましたか。尾形翔さん」
「第二の事件の直前にアイドルグループのDVDを返しに行ったという話をしましたよね。その時に開封されていない生写真を貰いましてね、セットを開封したら押しメンの小沢奈美の生写真が入っていました。狙い撃ちガンマの衣装はレア度が高いからうれしいです」
不謹慎だと夏海は思った。だが柊は目を光らせる。
「あの小沢奈美のレアな生写真。見せていただけますか」
「いいですよ」
翔は写真を見せる。その写真にはモデルガンを持った長髪のアイドルが写っている。
(そうか。犯人はこうやって雷助さんの両腕を燃やしたんだ)
「ありがとうございます。かわいいですよね。小沢奈美は」
次回 推理小説史に残る前代未聞な事態が発生。
読者のみなさん。作者のことは嫌いでも、風雷館財宝殺人事件を嫌いにならないでください。




