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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

死はメールと共に

作者: 桜花蓮華

この作品は夏のホラー2012参加作品です。

ホラーかどうか怪しいものではありますがw

楽しんで、そして少しでも涼しくなっていただければ幸いです。


それでは。

 真夜中――ボロボロの校舎に5人の少年少女がやってきた。

 彼らは小学校の頃から何をするにも一緒だった。遊ぶときはもちろん、ちょっと悪い事をするときまで。そんなやんちゃだった5人も高校3年生になっていた。別々の高校になったが定期的に集まってはいつも遊んでいたのだ。

 ある日、彼らの耳に校舎取り壊しの情報が入った。すでに別の新しい校舎が建ち、入学した当時すでにボロボロだった校舎はこの夏休みに壊されてしまうという。

「なんだか寂しいな」

 なんて思い出話に浸っていると、誰かが言った。


「学校の七不思議って覚えてるか?」


 どこの地域にもある学校の怪談。もちろんみんな覚えていた。その七不思議を目撃する為に遅くまでよく校舎に残っていたからだ。

 トイレの花子さん。動く人体模型。目が光る音楽室の肖像画。4階廊下を走る化け物。段数の変わる階段。ボールの跳ねる誰もいない体育館。中から手が伸びてくる屋上の踊り場の鏡。赤いマントに口裂け女など。

 7つ以上あったりするのだが全て含めて学校の七不思議と呼ばれていた。もちろん一つも目撃する事なんてなかった。が、子供心に怖かった思い出がある。


 そんなある日、5人のリーダー格、拓志たくしが言った。

「せっかくだからケータイで七不思議を撮ってみようぜ!」

 みんなちょっとした好奇心や肝試しのノリ、そして思い出作りのため学校に集まったのだ。



「なぁ、やっぱりやめようぜ」

「そうだよ。立ち入り禁止って書いてあるし」

 小柄な少年と、眼鏡をかけた少女がそう言った。

「なんだよ涼太りょうた美雪みゆきビビってんの?」

 一番のお調子者、俊幸としゆきが二人をからかう。

「でも入れないよ?」

 派手な茶髪、いかにもイマドキな女の子、実紀みきが釘を刺した。


 校舎のの前には立ち入り禁止のロープが張ってある。そして入り口や窓には入れないように鉄格子のようなものが付いていた。当然と言えば当然だ。


「お前ら忘れた? ヒミツの抜け道」

 拓志はそう言うと裏へと駆けだした。

「あっ。待ってよ!」

「まだ開くかなぁ」

 4人は慌てて後を追う。


 拓志は南京錠のついたドアの前に立っていた。ここは職員用玄関だ。彼はそのドアノブをつかみ乱暴に上下に動かすと――鈍い音を立てドアが外れてしまった。

「やっぱり直ってなかったんだな」

「こんな風に開けるの俺だけだったしな」

 このドアは彼らが小学生の頃から壊れかけていた。ドアノブを乱暴に動かすだけで蝶番が外れドアが取れる。しかし他の人がやってもそんな事はできない。拓志だけができる荒業だった。どうやらコツが必要らしい。入った後は蝶番を元に戻すので教師もまさかこんな風に生徒が侵入しているとは気が付かないままだったらしく、今回もあっさりドアを外すことができた。


「さてと。じゃあ確認だ。涼太は人体模型。実紀は花子さん。美雪は廊下。俊幸は音楽室。俺は屋上の鏡。あとはまぁなんか見つけたら撮ってくれ」

「肝試しみたいにさ。一人づつ入っていこうぜ」

「おもしろそう!」

「そ、そうだな……」

「うん…………」

 俊幸の提案にはしゃぐ実紀。そして乗り気ではないが後に引けない涼太と美雪。

「じゃあ最初は俺だな。みんなアレは持ってきたか?」

「もちろん」

 みんなは鞄から懐中電灯を取り出す。それを確認すると拓志はためらいもせず、校舎へと入っていった。


 老朽化した校舎は歩くだけでもギシギシと嫌な音を立てる。明かりは持ってきた懐中電灯と携帯電話のみ。気持ち悪い雰囲気に耐えられず、拓志は一目散に屋上へと向かった。


「あったあった」

 屋上の踊り場、その壁に埋まった姿見は昔から変わることなくそこにあった。そこから手が伸びてきて、鏡の向こうの世界へと引きずり込まれてしまうらしい。

 拓志は鏡へと携帯を向ける。何もあるわけはないと分かっているが、やはり気味が悪い。他の皆は何か撮れただろうかなどと考えながら鏡とにらめっこを続けていた。

 10分ほど経っただろうか、突然電話が鳴った。涼太からのメールだ。

「涼太? 何か撮れたのか?」

 拓志はワクワクしながらメールを開く。本文には何もない。しかし写真が添付されている。拓志は本文を下へと送る――と、1枚の写真が現れた。

「な、なんだよこれっ!?」

 拓志は思わず声をあげた。白いTシャツを赤く染め、ぐったりしている涼太の姿が映っていたからだ。そして、文章が一つ。



『お前達を絶対に許さない』



「ど、どういうことだよ……」

 嫌な汗が吹きだすが、すぐに冷静になる。

「ア、アイツ――俺達を驚かそうとしたな。まったくしょうがな――」

 拓志の言葉を遮るように携帯が鳴った。俊幸からの電話だ。

「もしもし? どうした?」

「お、おいっ、メール見たか?」

 俊幸はかなり動揺しているようだ。かなり息が荒い。

「見たぜ。どうせイタズラだろ?」

「違う! 本当なんだよ!」

「な、なんだよ?」

 声を荒げた事がない俊幸に拓志は驚いた。そして、嫌な予感を覚える。


「ほ、本当に死んでるんだよ! 涼太が! 血を流して!」


「お、落ち着け。見たのか?」

 拓志は悲鳴混じりに叫ぶ俊幸を落ち着かせるようにゆっくりと言った。俊幸は深呼吸をし、唾を飲み込む。

「俺、音楽室にいたんだ。そしたらメールが来て。理科室は真下だろ。だから見に行ったんだ。どうせイタズラだって。でも! 本当に! うわああああああああああああっ!?」

「おい!? 俊幸!? 俊幸!?」

 悲鳴と共に電話が切れてしまった。拓志はただただ呆然とするしかなかった。

「本当に涼太が死んだ? そして俊幸も? まさか――っ!?」

 白いものが通り過ぎたような気がして思わず振り返った。しかし誰もいない。拓志は自分から血の気が引いていくのが分かった。

「お、俺たちは何もしてない! それにそんな事あるはずない! 紫織しおりのわけが!」

 そして大声でわめきはじめた。



「まさか――紫織ちゃんなの?」

 メールを見つめ、呟く美雪。彼女は一人の少女を思いだしていた。

「紫織ちゃん、怒ってるの?」

 そして、誰もいない廊下の真ん中で声をあげた。しかし、自分の声が響くだけで返事はない。

「ねぇ。いるんでしょ!?」

 誰かに見られているような気がして彼女はぐるぐると辺りを見回す。

「お願い! 話を聞い――ひゃっ!?」

 突然携帯が鳴り、彼女は思わず悲鳴をあげた。実紀からの電話である事を確認し、彼女は胸をなでおろす。

「実紀ちゃん? びっくりさせないでよ」

「ごめんごめん」

 涙声の美雪。しかし実紀の声は明るい。

「メール見た? 涼太ってば趣味の悪いイタズラするよね。そういうとこ嫌いなんだ」

「イ、イタズラ? 紫織ちゃんじゃないの?」

「はぁ? 紫織? 紫織はとっくに死んだのよ?」

「だって紫織ちゃんが死んだのは――!」

「親の離婚と、勉強ができなくて勝手に飛び降りたんでしょ。この校舎から」

 実紀は全く興味がない様子で冷たくそう言った。

「でも――」

「美雪、幽霊信じてんの? ははは~。後でめっちゃ怖がってたって言いふらしちゃうからね」

「あっ、実紀ちゃん待っ――て」

 しかし、通話は勝手に終了されてしまった。


「ごめん。みんな」

 美雪はそう言うと階段を駆け下りた。死ぬのは嫌だ。こんなところにいたくない。早く帰ろう。あとでいっぱい謝って、何かご馳走すればみんなきっと許してくれる。そんな事を考えながら職員用玄関へと急いだ。

「そんな……ドアが!?」

 彼女は驚いた。開いていたはずのドアが元に戻っていたからだ。ドアノブをつかみ動かしてみるがビクともしない。蝶番に目を移すが、細工がされ外れないようになっていた。

「一体誰が――」

 彼女は考えを巡らせた。一番最後に入った自分。その時ドアはそのままだった。誰かがこっそり閉めたのだろうか。だがそんなことする必要はない。そんなことしても誰も得をしない。みんなを閉じ込めて得をするのはただ一人。

「やっぱり紫織ちゃんが!? お願い紫織ちゃん開けて!」

 美雪はドアノブにしがみつきながら叫んだ。


 そんな中、着信音が響き渡った。美雪は恐る恐る携帯電話を確認する。俊幸からのメールだった。写真が添付されている事に気が付くと手がガクガクと震えはじめる。メールを開くと、先ほどと同じように何もない画面が映し出された。

「嘘だよね。嘘だよね」

 美雪は祈るような気持ちで画面をスクロールさせていく。映し出されたのは音楽室の入り口。その真ん中に誰かが浮いている。

「いやああああああああああああああっ!!!」

 浮いているように見えたのは、首を吊った俊幸だった。それを理解すると美雪は大声で叫んだ。そして駆けだす。


「紫織ちゃん許して! 怖かったの! 拓君が! 逆らえなかったの!」

 美雪は泣きながら大声で叫び走る。

「あの色ペン盗んだのは私だったの。どうしても欲しかったからつい! それを先生にバラすって拓君が言うから! だから紫織ちゃんをイジメるのを手伝ってたの!」

 昇降口へとたどり着き、ガラス製のドアを叩く。鉄格子のように塞がれた出入り口。もう逃げ場はないのだ。

「辛かったよね。鞄に虫を入れられたり、殴られたり、プールに落とされたり。本当にごめんね――あっ」

 気配を感じ彼女は振り返る。下駄箱と下駄箱の間を誰かが駆け抜けたような気がした。

「紫織ちゃん?」

 美雪は慌ててそれを追う。白い影が2階へと駆け上がるのが見え、彼女も2階へと向かった。しかし、白い影はもう見えなくなっていた。

「待って紫織ちゃ――きゃあああああああああ……っ!」

 2階についたとたん、目の前に突如現れた白い影に突き飛ばされる。なす術もなく、美雪は階段を転げ落ち、頭を強く打った。

「うふふふふ……」

 最後に少女の笑い声が聞こえた気がした。



「二人とも冗談きついって」

 涼太、俊幸の死体写真。さすがの実紀も笑えなくなっていた。そんな中、美雪からメールが届く。

「信じられない! 美雪までこんなくだらない事するなんて!」

 実紀は美雪に電話をかけるが、いつまでたっても出る様子はない。仕方なく実紀はメールを開いた。例によって何もない画面が映る。下へ画面をスクロールすると、無造作に捨てられた人形のように倒れている少女の姿があった。少女の着ている可愛らしい服には見覚えがあった。美雪が今日来ていた服だ。

 そして下に2枚目の写真があった。少女の顔がよく見える写真。涙を浮かべたうつろな目、そして頭から流れる血が生々しく映し出されていた。少女はやはり美雪だった。

「ふざけないでよ。本当に紫織だっていうの!?」

 実紀は思わず叫んだ。


 ――トイレに閉じ込められた少女の泣き叫ぶ声。そして笑い声。


 当時の記憶が今まさに目の前で起きているかのように鮮明に思いだされた。

 紫織――小学5年生のある日、引っ越してきた少女。頭が悪くて、どんさくて。実紀は紫織の全てが気に入らなかった。拓志も同じだったらしく、二人でいつも紫織を苛めていた。いつの間にか仲間が増え、クラスのほぼ全員が紫織を無視していた。

 紫織は離婚した母親に連れられ、引っ越してきた。そんなこともあり、おそらく紫織は誰にも相談できなかったのだろう。

 そして紫織を掃除用具入れに閉じ込めたまま帰った次の日の朝。紫織は死んだ。激しく暴れ、掃除用具入れから何とか脱出した跡、そして屋上に綺麗に揃えられた靴が全てを物語っていた。


「だからって私は関係ない。それに霊なんているわけないし。そうだ。帰ろう」

 霊はいない。それはつまり花子さんなんていないということ。なんだか急に冷めてしまった実紀は帰ろうとトイレから廊下へ出ようとドアに手を伸ばす。

「あれっ?」

 しかしドアが開かない。押しても引いても全く開かないのだ。

「ちょっと。涼太? それとも俊幸? いい加減にしてよ!」

 実紀はイライラした口調で言う。

「あんたたちいい加減に――ひゃっ!」

 ドアから大きな音がし、実紀は思わずドアから離れる。ドンドンとドアを強く叩く音が響く。

「な、なんなのよ!」

「――さない――」

 大きな音の中、か細い声が聞こえた。

「ま、まさか紫織?」

「――許さない――――殺してやる――」

「その声は紫織!? そんなっ!!!」

 すると、ドアがゆっくりと、本当にゆっくりと開いた。実紀は思わずトイレの個室へと逃げ込む。花子さんが出るという3番目の個室へ。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんな――いやああっ」

 そしてうずくまり泣きながらそう呟きはじめた。壊れそうなほど大きな音を立てるドアに思わず悲鳴をあげる。先ほど思い出していた光景が繰り広げられているのだ。中にいたはずの紫織は外へ。そして外にいたはずの自分は中へ。あの時とは真逆になってしまったが。

「きゃああっ!? 水っ!?」

 頭から突然水が降ってきた。そうだ。ホースで水を上からかけたりしたっけ。ドアを蹴る拓志、ホースで水をかける俊幸と自分。遠くで笑っている美雪。そして涼太。

「あれ?」

 なにか違和感を覚えたその時――個室のドアが壊れ開いた。

「いやああああああああっ!?」

 白い服の少女が立っていた。ぼさぼさの長い髪で顔は見えないがその姿に見覚えがあった。紫織がよく着ていた白いワンピース。所々汚れたその服を着た少女の手が実紀の首へと伸びる。

「ぐ――たすげ――」

 少女はものすごい力で実紀の首をぐいぐいと絞めた。

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」

 呪いの言葉を呟きながら首を絞める手を強めていく。

「し――――おり――やめぐぇ」

 実紀は意識がどんどん遠くなるのを感じた。自分は殺される。紫織の霊に。しかしただで殺されるわけにはいかない。実紀は精一杯の抵抗をみせた。手が彼女のぼさぼさの髪に触れ、少女の顔が一瞬だけ見えた。

「あん――た…………がはっ……」

「実紀っ!?」

 聞き覚えのある声が聞こえたが。実紀の意識は闇に落ちた。



「実紀っ!?」

 彼女が死ぬ間際。男が駆け込んできた。しかしもう遅い。実紀を便器に押し込むように置くと、白い服の少女は振り返った。

「お前――紫織なのか?」

 駆け込んできた少年は拓志だった。目の前の少女は懐から包丁のようなものを取り出し何も言わず拓志に襲い掛かる。

「くっ!」

 拓志は慌てて避ける。狭い場所はまずいと考え廊下へ転がるように飛び出す。そして追ってきた少女と対峙する。

「紫織! 全部お前の仕業だったんだな」

「ふふふ」

 少女は肩を震わせながら笑う。

「ふざけんな! 亡霊なんかに殺されてたまるかよ!」

 拓志は叫びながら少女の包丁を奪おうと飛びかかる。もみ合いになる二人。力に自信のあった拓志だが、少女は包丁を放そうとしない。――と、その時。少女のぼさぼさの髪が争っていたはずみで取れた。


「お、お前っ!?」

 拓志は驚きの声をあげる。

「あぁ。バレちゃったか」

「りょっ、涼太!?」

 少女の正体、それは死んだと思っていた涼太だった。力が緩んだその隙に拓志めがけ涼太は包丁を振り下ろす。すんでのところでそれをかわし、二人は距離を取る。


「な、なんで!?」

「復讐だよ」

 涼太は恐ろしいほど静かな声で言った。

「復讐? 一体なんの!?」

「紫織のだよ。お前達が紫織を殺した。俺は紫織の為にずっとずっとお前達を殺そうと待っていたんだ」

「はぁ?」

 拓志は未だに納得が言っていない様子だ。

「お前だって一緒に紫織を苛めてたじゃないか」

「なんだと?」

 拓志の言葉に涼太の表情が一変する。

「なぁ拓志。お前紫織が引っ越してくる前、苛めてたやつ覚えてるか?」

「え? 確か太っててなんだか気持ちの悪い……名前なんだっけ?」

 その言葉に涼太は呆れた顔をした。

「涼太だよ涼太。そうだ。お前達がこぞって苛めてたのは俺だ」

「そ、そんな」

「紫織が引っ越してきて対象は紫織になった。俺はほっとすると同時に紫織が心配になった。家も隣だったし、よく紫織の話を聞いていた……」


 涼太の言葉を聴きながら拓志は思い出していた。そうだ。涼太は太っていて容姿も悪かったためみんなで苛めていた。紫織に気がいっている間に涼太はやせ、みんなは苛められっこだった涼太の事は忘れてしまった。いつも一緒だったと思っていた涼太は紫織が死んだ後、仲良くなっていたのだ。


「ある日、紫織が家に帰ってこないという話を聞いて俺は学校へ急いだ。でももう紫織は死んでいた。俺は決意した。お前らを殺してやるって。そしてお前達に近づいた。性格、行動パターンを把握して、後は殺すだけだった」

「ぐっ」

 涼太は拓志との距離を詰める。

「俺の読み通り、七不思議の話をしたらお前は乗ってきた。お調子者の俊幸をうまく誘い込んで全てが上手くいった」

「じゃ、じゃあ最初のメールと電話はやっぱり」

「そうだよ。死んだふりをした写真をメールを送り、俊幸に電話をさせた。あいつ楽しそうに電話してたよ。もうすぐ殺されるのにな」

 涼太はクククと笑った。それを見て、拓志の背中に嫌な汗が流れる。

「あとは俺の脚本通りにお前たちは動いてくれた。ずっと紫織の死を気に病んでいた美雪。強がってるけど本当は怖がりの実紀。そして、リーダーぶってる猪突猛進型のお前」

「くっそおおっ! 」

 友人を殺され冷静でいられなくなった拓志は涼太めがけて走った。しかし涼太はひるむことなく拓志のみぞおちに蹴りを入れる。

「ぐはっ!?」

「だから言ったろ? お前は猪突猛進型だって。さぁ終わりにしようぜ。紫織が待ってる」

 お腹を押さえうずくまる拓志へ涼太はゆっくりと近づく。

「や、やめろ……うわああっ!?」

 突然、拓志の顔が青ざめていった。そして大きな声をあげながら尻餅をついたようになったまま後ずさりをする。

「ゆ、許してくれ!」

「はははっ。あははははは!」

 涼太の笑い声が誰もいない校舎に響く。

「許してくれ紫織! 本当に悪かった! だから!」

 拓志は気が動転しているのか紫織の名前を口にしながら大声でわめいた。

「大丈夫。みんな待ってるよ」

 そして涼太は拓志に馬乗りになる。

「うわあああああああっ!?」

「一緒にいたけどさ、やっぱお前たちとは仲良くなれそうにないわ」


 そう言うと、涼太は嬉しそうに包丁を何度も振り下ろした……。



「あははっ! 終わった! 全て終わった!」

 血まみれの涼太は狂ったように笑う。そして叫ぶ。

「やったぞ紫織、見てるか? いいや紫織が手伝ってくれたんだよな」

 怖くなるほど大体が予定通りに進んだ事に最初は驚いた。今回の話が決まってから毎日のようにシュミレーションを繰り返し、今日を待ちわびていた涼太。もちろん最悪のパターンも考えていたが、皆、想像以上に怯えいい表情を見せてくれた。

 不可解な点もいくつかある。自分が姿を見せる前に紫織を追ってきた美雪。実紀は紫織の声を聞いた。もちろん自分はその時声を発していない。そして最後に自分の背後を見つめていた拓志。

 きっと紫織だ。紫織もずっとこの日を待ち望んでいたのだろう。涼太はそう思うともっと嬉しくなった。

「さぁ。最後の仕上げだ紫織」

 涼太は階段をゆっくり上っていく。そして屋上へとたどり着いた。ここは紫織が飛び降りた屋上でもある。彼女の靴が置いてあった場所に自分の靴を置く。

「紫織。大好きだったよ。本当に大好きだった。今でも愛してる。あの時俺はまだ子供だったけどこの気持ちはずっとずっと変わっていないよ。お前が死んで初めて気づいたんだ。俺は紫織を支えてるつもりだった。けどいつの間にか支えられていたんだな」

 校庭に白い少女が寂しそうに立っているのが見えた気がした。

「ごめんな。助けてやれなくて。何もしてやれなくて。でもお前の無念は果たした。全て終わったんだ。さぁずいぶんと待たせたね。今から行くよ。紫織」

 涼太はためらうことなく屋上から飛び降りた。


 校庭の少女が笑顔で涼太の元へと駆けすのを見て、涼太は満足そうに微笑んだ。



 ――果たして彼らが見たのは紫織の霊だったのか、恐怖や狂気の末の幻想だったのか。それとも別の何かだったのか。今とはなってはもうわからない。

初ホラー作品です。

ホラーは苦手なんですよね。心霊番組とか絶対見ない。

ホラーゲーは好きなんですがプレイ出来ないほどのチキン野郎です。

あのドキドキ感が耐えられない。

自分より怖がっている人がいれば大丈夫なんですが。


霊とか理解不能なものとか怖いですが、やっぱり人間の狂気が一番怖いなぁと。

いろんなゲームとか作品とかみてそう思います。


俊幸の出番が少なすぎたのが心残りです。

本当はもっとチャラいヤツになる予定だったのに。


もっと細かい心理描写とかもしたかったんですがね。

拓志VS涼太のもがきあいとか。

文字数限界ギリギリです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後まで、恐ろしく、飽きさせない展開がよかったです。 [一言] すごく怖かったです。 最後の涼太の言葉、切ない感じの中に心にグッとくるものがありました。 この作品を読んでいて楽しませてい…
[良い点] キャラクターの性格、ポジションがすんなり入って来るところ。 最後まで飽きさせない展開。 読みやすい文章。 オチの部分で不気味さをだして、ただの復讐もので終わらせなかったところ。 [気になる…
感想一覧
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