表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖戦記  作者: 桂木 京
序章:聖王の眠り

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/2

崩壊の始まり

豪華絢爛たる王城。

その静寂を支配するのは、重々しく敷き詰められた赤絨毯と、立ち込める鉄錆の匂いだった。


大陸の守護者として君臨した聖王ジークハルト。

その胸には今、無慈悲な漆黒の槍が深々と突き立てられている。

傍らに転がるのは、中央から無惨に折れ曲がった大剣だ。

かつては聖王の象徴として、燦然たる輝きを放っていたはずのその刀身に、もはや往時の荘厳な面影はない。

それは、この戦いの絶望的な激しさを物語る無言の亡骸であった。


「……他愛もない」


低く、冷徹な声が響く。

聖王の胸から容赦なく槍を引き抜いたのは、一人の若い黒騎士であった。

その漆黒の鎧は各所が砕け、幾千の火花を散らしたであろう剣戟の記憶を刻んでいたが、驚くべきことに、男の肌に傷一つとしてついてはいなかった。


男が兜を脱ぎ捨てる。 露わになったのは、月の光を溶かしたような銀髪と、彫刻のように端正な(かお)

三十代を前後するであろうその貌は、若さと老練さを同時に宿していた。

男の鋭い瞳が、こと切れた聖王を冷ややかに射抜く。


「愚かな。早々にその座を譲っていれば、死以外の選択肢もあったものを……」


吐き捨てた言葉とは裏腹に、男はしばし沈黙した。

どれほどの力の差があろうとも、最後まで信念を曲げず、王としての誇りを抱いて散った男――その魂にだけは、僅かな敬意を払うかのように、男は静かに胸に手を当て、深く一礼した。


「来世は……戦いの無い世に生きよ」


祈りにも似た手向けを残し、黒騎士は歩き出す。

背後に残された聖王の亡骸を振り返ることはない。

その表情には、勝利の悦びも、屠った者への憐憫も浮かんでいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ