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隠匿の狐狗狸さん〜殺人結果の探偵殺人〜  作者: 人鳥迂回


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超常現象研究家兼探偵(1)

新作です。

12月中に全話投稿予定。

 死には人の思いが関わっている。

 この世の謎や事件にはすべて人為的な策謀が複雑に絡まりあっており、人の手の介在しない超常現象も、公表した人間がいるからこそ世の中に広まっているのだ。

 人の手を介さなければ世の中に不思議や異常は起こり得ない。

 この世界に存在し、これからも増え続けていく人間の死には目で見えるほどに人の手が入っていると考えてもいいだろう。

 寿命、事故、病気など様々な死因があるが、人間の手が入ることによる死として最初に挙げられるのは『殺人』。

 凶器を使って殺すこともあれば、自分の手を使って絞め殺すこともある。

 無差別殺人もあれば計画的殺人もある。

 不慮の事故による殺人もあれば、引き起こされた殺人もある。

 人が人を殺すと言うことはそこに何かしらの意思が介入しているのだ。

 大概の事件は優秀な警察が捜査することで犯人が捕まり、世の中の大罪人はそうやって罰を受けてきた。

 その時々の事件だけではなく、過去に起こった大きな事件に関しても長い時を掛けて操作し解明しようとしている。その中で未解決事件として語り継がれてしまうものも少なからず存在しているのだ。

 例えばエレベーターの中にいる何かに怯えている女性。その女性はその後エレベーターから降りてくることはなく、気がついた時にはエレベーターの中にもいなかった。数日後、そこから遠く離れた川で遺体として見つかる事件が起こった。その姿には一切の傷も、所持品が奪われることもなく、綺麗なままの状態で溺死をしていたという。

 エレベーターの監視カメラだけでなく、発見現場へ続く道にも女性の姿は一切映っておらず、テレポーテーションをしたとしか考えられない事件。

 警察の捜査は難航を極め、未解決事件として処理された。

 その事件は時効を迎え、犯人が捕まることはなかったのだが、たった一人だけその事件の真相にたどり着いているものがいたのだ。

――被害者は超能力者でテレポートをしたから現場に映らなかった。テレポートをした結果、川の中に移動してしまいそのまま溺死したから傷もなければ所持品も無くなっていない。自身の過失のため犯人もいない。これが真相だ。

  世間に公表したわけではなく、オカルト掲示板に投稿された文章は他の人たちに鼻で笑われ、一蹴されるような内容であった。馬鹿げた発言に嘲笑や侮蔑を受けたこの推理だが、肯定も否定もされなかった。

 その事実を証明する術は無く、否定する要素もなかったのだ。



 その投稿をした主は、現在青白いモニターの光を自身の顔に反射させながら、日課であるネットサーフィンをしていた。


「未確認生物?これはフェイク画像だし、こっちは合成。こんな分かりやすいものを作ってもすぐに分かるじゃない」


 誰に聞かれるでもなく、部屋に一人の声が響く。

 パソコンデスクの上にはプルタブが開いたエナジードリンクの缶。それが何本も置かれており、ひとつが倒れてしまえば連鎖的に倒れ大惨事になってしまうだろう。

 床には脱ぎ捨てられた服、読みかけの本が産卵しており、清潔感は感じられない。不幸中の幸いか排泄物の入ったペットボトルなどはなく、生理現象の際には部屋から出ている。最低限だが人に合う仕事をしているためお風呂には入っており、話題になった風呂キャン界隈とは無縁の生活をしていた。


「どれも面白そうな事件はないね」


 見ていたブラウザを閉じ、床に捨てられたように置かれていたクリアファイルを手に取る。

 几帳面な者に纏められた資料には写真と名前。

 そして

――呪殺を企てた可能性アリ。

 と一言添えられていた。

 世間的に見て呪殺というものはオカルトと一蹴されてしまうだろう。呪うことで人を殺せるのなら、現代社会の人間は日々大量に死んでいる。

 呪殺とは呪ったから殺せるものではなく、殺すために呪いをかけた結果、相手が死に至るものだ。似ているようで全く違う。


「この件は解決してるけど気が乗らない」


 資料をめくると、未だ被害者なしの文が目に入る。相談者が身の回りに起こる不幸をストーカーの仕業だと判断して警察に駆け込むも、証拠不十分として帰されてしまったらしい。現行犯でないとストーカーを逮捕することは難しく、物的証拠もないため警察も動けなかった。

 被害者は自身に不幸が頻発し、死の危険を感じたのか、警察ではなくオカルト掲示板にて助けを求める発見をした。

 それが同居人の目に留まり、調査解決の仕事が舞い込んできた。

 ゲーミングチェアの上で体育座りをしながら流すように資料を読んでいる少女の名を殺人結果ころひとゆいはてという。

 超常現象を信じているからこそ、超常現象についての調査を依頼される超常現象研究家。

 実績自体は多くないが、受けた依頼は九割型完遂しており、信頼度は低くない。今受けている呪殺事件についても、窓口のようになっている同居人が結果に真相解明を託したのだ。

 掲示板に投稿した被害者とは連絡が取れており、詐欺と勘違いされながらも直接交渉をしている。生活するためには金銭が必要であり、警察でも解決できない物事を処理するに当たっては相当な金額を要求することになる。

 自身の生死に関わることのため依頼者は金に糸目をつけない。

 金銭が原因で依頼を断った人達は、重傷を負ったり死亡したりしている。超常現象は常識で判断できない事象が起こる。死の真相も分からぬまま死んでいくのだ。


「直接会うとまた見ることになるのよね。人が死ぬとこ」


 点灯していないシーリングライトは我が物顔で天井に鎮座している。そいつに目を向けながら結果は呟く。こぼれ落ちた言葉は自身に降りかかった。

 結果が依頼を受けたくない理由はただひとつ。


「呪殺をした疑いありってことは相手を殺そうとしたってことでしょ。それなら解き明かしたら返っちゃうんだよなあ」


 結果が謎を解くと、対象に願った不幸が加害者に降りかかってしまうのだ。

 人を殺すように願った加害者に事実を突き付けると、その呪いは加害者へと向かう。

 最後に、加害者は死んでしまうのだ。

 殺人結果は超常現象研究家兼超常現象探偵として一部で名を馳せている。

 探偵殺人という不名誉な呼び名と共に。

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