【『私』が一人の私に戻るまで】
『私』はもう傷つきたくない
親に殴られて蹴られたくない
泣いても泣いても 誰も助けてくれない
だから心の奥に逃げた
暴力の連鎖に対する『身代わり』を立てた
その瞬間 生まれたのが別の私
暴力の身代わり者だ
身代わりの私は
いつしか『私』を憎む
それから外界の状況に合わせ
『私』はいくつもの私を生んだ
それぞれの私に
様々な状況を押し付けて眠った
長く長く眠る 本当に長く──
ある時 外界の状況が変わったらしい
厳しい声 憎む声 恨む声 責める声
労わる声 甘やかす声 泣く声
様々な『私』に対する声が聞こえてきた
彼女たちは話し合いをはじめ
議論は何度も繰り返される
だが全員に共通するのは
眠っている『私』をどうにかして
自分たちが一つに戻ること
眠っていても
つながっているからわかった
『私』はそれを拒否し拒絶する
いやだ もう起こさないで
もうこのまま眠っていたい
けれど私たちは許さなかった
外界の情報が入ってくる
暴力の両親からは引き離され
穏やかな養親と暮らしていること
今は病院に通い 精神状態について
治療を始めたこと
すでに『私たち』は 医師と面会しており
共通の意思を示していること
そうひとりの人格に統合するために
だれも責めはしない
だが 真の人格である『私』が
目覚めなければ 状況は変わらない
応援する声が聞こえた
どうか目覚めて
勇気をもって
現実と対峙して
ああ……本当に大丈夫なのだろうか?
どのくらいだろう
『私』は久しぶりに
自分の身体に現れた
少しずつ『私自身』は医師と面会する
私の取り巻く状況は
大丈夫なのだと知った
その時の安心が
大きく状況を動かした
それから──
『私』は様々な私と対峙し
直に話し合う
どの私も私が生んだ犠牲者なのだ
そのすべてを受け止め
一人ずつ私を統合していく
最終的に──
二十二人もいた私は
つい本当『私』になった
人格が統合されたことで
感情や記憶がつながっている
もう不安もない
怯えることもない
泣くこともない
だから
私はもう逃げない
自分に負けない
一人の人間として
しっかり生きていこう




