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社の子守唄  作者: 咏川晃
1/1

古の記憶と寂れた孤児院

▼登場キャラクター


ヴァジール


ウント


孤児院の先生

それはある日の明け方、ヴァジールの部屋で見つかった

「なんだこれ・・・ラート?ラートって人が書いたんだ」

ヴァジールが手にしたその本は、ラートが書いたであろう本、興味本位で中を開ける。そこには、大量の文字が綴られていた。

「うわぁ・・・すっごい書いてある」

ページをめくるその時、手を離してしまった。

「これは、な、なんだ・・・?」

身体に電流が走ったような、急に本から離れろという本能なのか

「おい」

その時、先生が出てきた。不意に本を隠す、何故隠すのかも私でもわからない。ただバレてはいけないということだけは分かる。それが何故だかは分からないけれど・・・

とっさに返事をした、その返事がどんな言葉が出たは分からない、本能的に返したのか、無意識なのか、それとも返事をしていないのか

「何をしていたんだい?」

「いえ、特に何も」

「そ、ご飯の時間だから行こっか」

「はい!!」

ようやく先生がその場を去る。それを確認して、もう一度本の中身を見る。

「これは俺の記憶だ。かつて、存在するはずのない孤児院の御伽噺、そこでは人体実験が行われていた。逃げろ、早くそこから───」

ここまで読んで、ようやくこの本が先生に見つかってはいけない理由が分かった。これは、この孤児院に関して、貴重な情報が記載されている、この裏表紙に書かれているラートという人は、孤児院の出身なのか、それとも全く関係ない人なのか、何もわからない。

『そこでは人体実験が行われていた。 逃げろ、早くそこから、さもなくば、人として死ねなくなる』

人として死ねなくなる・・・この意味は、今だ知る由もなし

本を隠した後、部屋を出たヴァジールが向かった先は、リビングのような、寛げる空間、そこにはまだ誰もいない。近くにころがっていた石を広い見つめて暇を潰しているヴァジール、そこにウントがやってきた。

「ヴァジール・・・どうした、そんな石っころ見つめて」

突然やってきたウントに驚いたヴァジール、驚かせる意図はなかったようで驚かせるつもりはなかったと一言放つ。それに対しヴァジールは大丈夫と言う。

それにしても、ウントはヴァジールに対して気がかりなことがある、それを勇気を持って聞いてみる

「最近先生との面談断ってるそうじゃん、どうした?体調悪いの?」

「そんなわけじゃ」

「じゃあ、なんでだよ」

その時、先生がやってきた。賑やかな二人を見てほほえましい表情を浮かべる、だがヴァジールは恐怖心を抱いていた。先生がやってきたことにウントはどうしたのかと聞くと、ただの散歩らしい。ウントがあることを思い出した。

「そうだ、先生」

ウントはそう言い、先生が反応する。ウントは先生がこの前話していた遊戯の話をもってしてくれと言った。その話をしているときはヴァジールはいなかった。

「何の話ですか?」

ヴァジールがそう聞くと先生は、二人でできる楽しいお遊びだそう、先生が今度買ってくれるらしいとウントは言った。そこで、先生が急になにかを思い出したかのようにしゃべり始める

「そういえば、今日のお昼ご飯、何がいい?」

「おいしいものがいい」

「それを知りたいんだ、先生」

ウントがおいしいものがいいと具体性もないことを言った横で、ヴァジールは何かを思いついたように、少し小声で言う

「畑に植えてあるものが食べたい」

何故かとっさに出た言葉。それいいと先生は言う。続いて二人とも手伝ってくれるかと聞いた。だが、ヴァジールは頭が痛いと嘘をつく。自己防衛からの本能的な嘘。そのときのヴァジールはどうしてうそをついたかわからない。先生やウントが心配しているのを無視して部屋へと戻る。

部屋へと戻ったヴァジ―ルは隠した本を開いて、中身を確認する。

「・・・この、人として死ねなくなるって、いったい何なんだろう。」

本を読み進めていくと、抜け道に関して記述があった。その時、思わず大きな声を出してしまった。周りを確認して安堵した後もう一度読み続ける。

そして、道の詳細を覚えた後、本を隠し、誰もいないことを確認しながら、その場所へと行く。その場所に到着した、幸い道中に誰も遭遇せずに行けた。そこには重たい扉があった、重たいのは見かけなだけで、実際力のない人でも開けられはできる。その扉を開け、その先を走り始めた。

長い道を抜けた先には、賑やかな街があった。高い建物、見たことのない食べ物や、きらびやかな装飾品。質素で、何もない寂しい孤児院にはなかったもの。そのとき、なぜかこの言葉が脳裏をよぎる。

「早く孤児院に戻らなきゃ」

このまま助けを求めて逃げれば、あの人体実験の施設から逃げ出せる。それなのにどうして・・・

その後はなぜか無力感に襲われた。走って孤児院へ戻る、もうすぐご飯の時間だ。

戻ってきたら、ご飯はもうできてる。

「ごめん、先生。遅れちゃった」

走ってきたから、汗も滝のように流れ、息も切れていて、その場で膝から崩れ落ちる。先生は大丈夫だと言う、それは本当に大丈夫なのか・・・

ヴァジールの状況を見て、体調がすごく悪いと感じた先生は、体い良いものを作りに行った。先生が部屋から出たとき、なぜかすこし安堵した、ウントがなんか話している。その時ほんとに疲れていたからなんて返したか、分からないけれど、ご飯は部屋まで運んでくれるらしい。だからヴァジールは部屋へと帰った。

部屋へ戻ったヴァジールは、隠していた日記を開く。目にしたページにこう書いてあった。

『孤児観察記録、ヴァジール。地方の土地神として生まれ変わった。付近にあった祠には神はいない。記憶を戻すため接触をした、信仰の影響で、体が薄れていった。手の甲の星の傷を見せたら反応を示した、微かだが、記憶が残っているのだろう。助力は与えた、あとは自らの記憶との戦いだろう。』

ヴァジール・・・土地神として生まれ変わる。自分のことが書かれていると怖気づく、ページをめくると、ウントの孤児観察記録が、またページをめくる、ハーティーと書かれている。これからもし、ハーティーと言う孤児が来たら、これは他人事で済まされなくなるような気がする。そしてまたページをめくるそこには、ラートと書かれてあった。ラート、この本を書いた人、ここの孤児観察記録に記載しているラートと裏表紙のラートが同一人物とは・・・

『これは俺だ─── 』

そう記載されている。ならば、同一人物の可能性が高い。またページをめくる、そこには、墨が滲んだような、そのページだけ故意に黒く塗りつぶされている。だが、滲んでいるなら裏にもにじむはずだが・・・

その時ノックの音が聞こえた。

「ヴァジール、ご飯持ってきたよ」

外にはウントが料理を持ってきてくれている。扉を開けて料理の乗ったお盆事もらう、ウントは渡してすぐに去って行った。その後、ご飯をそっちのけで本を読む、ヴァジールはこの孤児院を抜け出す方法を考えていた。もらったご飯が冷めても構わない、夜が来たってかまわない、外はどうやら日が落ちているような時間。そこで、否応なしの結論が出た。その結論を実行するためがある道具が必要、その道具を取りに行く、本を隠して、誰にもバレず、気づかれず、静かに、忍びのように進む。

ようやく見つけた、ヴァジールが手に取ったのはマッチだった。決意を固め火を積用とする、その時

「ねえ!」

先生が腕をつかんで止めた。ヴァジールは絶望した顔を敵に向けた。これは何かと敵が何度も問いかけてくる。どんどん威圧的になり手に持っているのがマッチだという、何をしようとしていたのかと問いただされる。それを言えるはずもなく・・・

敵があきらめたのか知らないが、面談をしようと話し始めた、本能が叫んでいる、逃げろ、逃げろと、つかまれている手を振り払おうとしても大人にはかなわず、強制的に連れていかれる、そこは、不気味な機械が大量にあって・・・大量にあって・・・あれ?なにがあるんだっけ?あれ・・・何してたっけ・・・・・・


「・・・あれ?私何してたんだっけ?」


『・・・随分と小さいのだな。・・・おや、無視か?』

何処からか声が聞こえる、聞いたこともない人の声、

「私が見えてるの?」

何故か口からでた言葉、ここは、どこで、あなたは誰なんですか?

『嗚呼、見えているぞ。小さくて、握りつぶしたら死んでしまいそうだ。』

「そうだね、でも私は神様だから・・・神様?私が?私は!」

『どうした、急に』

神様?違う、これは、なんで私が神様?どうして、私は、人間で、神様なんかじゃない、違う、違う・・・違うんだ!!この気持ちはいつの間にか口に出ていた。

『何が違うんだ?』


暗いところから気が付いたら急にいつもの天井が見えた。

「これは、夢か───」


特に理由もなく、自室を出てみんながいる場所へと行く、そこにはウントだけがいる

「聞いたよ、面談したんだって?」

「・・・そうだよ、なんか。体調も良くなった」

「それはよかった。」

何故か体調がよくなった、体が軽くなった気がする、そう考えているときに、ウントが持っている絵本が気になる、それは何と問いかける。

「あ、これ?孤独の王様っていう絵本」

その見た目で絵本だとは思えなかった、絵本だとは思えないような、とても不気味に思える表紙

「そういえば、先生が言ってた遊び、買ってきたって。もってくる」

ウントがそう言って、立ち上がって走っていく、間もなくして持ってきたのは、白黒のなにかだった。

「これだよ。」

「うわ、すごいね。」

これの名前はシャトランジだと教えてくれた、ウントは駒を持って興奮したように言う

「これね、ウントっていうの?」

ウントと言う駒、同じ名前を持つウントがそれまで興奮する理由がわかるような気がする。

「それでね、これは、ヴァジールっていうの」

別の駒を持って言ったウントは、ヴァジールと言う駒を教えてくれた。

「私と同じ名前・・・」

ふとそう言う、私と同じ名前を持つ駒、なぜか親近感がわいている。そこで、興味を持って他の駒の名前を教えてもらう

「これがペードルで、これがハーティー、これがラートで、これが、シャー。このゲームはこれを取ったら勝ちなんだ。」

「え、じゃあ、王様みたいなものってこと!」

「そうだよ。」

王様を取ったら勝ち、単純で分かりやすルール、これならすぐにルールを覚えられそう。そう思っていた時、ウントが急に思い出したかのように言う

「もう夜だよ、寝なくて大丈夫?病み上がりだもんね」

そう心配かけてくれた、体調が悪かったからぐっすり眠っていたのか、今日はずっと寝ていたから、もう夜だけどあまり寝付けなさそう。そうこう考えながらおやすみとウントと言い合い部屋へと戻る。


それはその日の夜、ヴァジールの部屋で見つかった

「なんだこれ・・・ラート?ラートって人が書いたんだ」

ヴァジールが手にしたその本は、ラートが書いたであろう本、興味本位で中を開ける。そこには、大量の文字が綴られていた。

「うわぁ・・・すっごい書いてある」

ページをめくるその時、手を離してしまった。

「これは、な、なんだ・・・?」

身体に電流が走ったような、急に本から離れろという本能なのか、頭痛がしてうずくまって叫ぶ、そして、なぜかこうつぶやく

「・・・逃げなきゃ」

部屋を飛び出したヴァジールはすぐにウントの部屋へ行き、扉をたたきまくる、手が赤く痛くなるまで叩いた

「なに、寝ようとしたんだけど」

そういいながら扉を開けたウントの腕をつかんでこういう

「逃げよう。」

暗いまま、昼に行った抜け道へと行く、記憶を辿りに進んでいくと、昼と同じ扉があった、その扉を開ける。

「外だ。暗い」

「夜だからね」

「ウント、ここから、逃げよう!!」


その時に、逃げたはず、外に出て孤児院から離れたはず、それなのに、それなのに・・・

どうして孤児院にいるの?


先生が新しいお友達を連れてきた。

「君たちはどうしてここにいるの? 」

「そんなこと言っちゃダメでしょ、ほら、自己紹介しな。ラートでしょ? 」

そう言った先生の言葉になぜか体に電流が走った感覚がした。

「はじめまして、ラートです。これからよろしくね。二人とも 」

そのラートと二人きりになれる時を見計らって話しかけた。

「君は?ヴァジールだっけ?」

何故か持っていたこの本、その裏表紙にあった名前と同じ名前を持つ孤児

「なんだこれ、汚い本。僕に触れさせないで、汚れるから」

そこで私はねえと叫んだ、その後に私でも信じられない言葉が口から放たれていた

「私を助けて・・・」


「なぜ俺がお前を助けなきゃいけない。」

社の子守唄をご覧頂き誠にありがとうございます。

当作品は不定期更新の連載作品でございます、更新をお待ちください。


次回『未来からのおとしもの』

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