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2.5歳~10歳

「瑞希さんは…学生の頃、何が得意でしたか?」


赤くなった「(トマトジュース)」を呑みながら、マスターとの会話を楽しむ。

然し…「質問」によっては、なんて返答したら良いのか分からない事もある。


「ん~…、私は…小さい頃から取り柄が無かったからなぁ…。勉強も運動ダメで……───あ、でも…絵は得意でした!」


「絵が描けるのは素晴らしいですね…。」


「って、言っても…漫画とかだけど」


「この物語に出てくる少女も「絵」が得意だったんですよ」


「へぇ~、そうなんですね…」


マスターは「フフ…」と笑うと、物語の続きを語り出した。



少女は小学校に入学しました。

然し、少女は家庭環境や保育園でのトラウマの影響で極度の人見知りとなってしまいました。

入学式は知らない友達(ゴミ)──知らない大人(ゴミ)達で溢れていました。

不安が一気に押し寄せた少女は無意識に「学校なんか行きたくない」と騒ぎ出しました。

そんな少女に周りは騒然としました。

それから誰も少女に近寄らなくなりました。頭が可笑しいと思われたからです。

校長(ゴミ)は、少女の母親に言いました


「普通の学校でやっていけますか?」


少女の母親は必死に校長(ゴミ)に謝罪しました。

自分の育て方が悪かったんだ……

自分のせいで───自分のせいで───

少女の母親は「ごめんね」と泣きながら少女を抱き締めました。少女は更に心を閉ざしていきました。誰にも言えない、心に抱えた傷は誰にも見せられない…

それは、血の繋がった親にでさえ……


少女は自分の気持ちを上手く伝える事が出来なくなりました。

学校の授業中にトイレに行きたくても手を挙げられません。失禁してしまっても何も……何も言えません。

言えてしまったらどれだけ楽だったのか

"普通"だったら、どれだけ楽に生きられたか


「お前、漏らしたんだってぇ~?」


「机くっつけるのやーめた」


少女は虐められるようになりました。

我ながら少女は当たり前だと思いました。でも、どうすれば良かったのかは分かりません。誰も教えてはくれません。


学校で音読の宿題が出ました。

少女は母親に聞いてもらおうとしましたが、母親は仕事で疲れて眠ってしまいました。

父親はまだ帰ってきません。

少女は仕方なく、教科書に判子を自分で押しました。

そして思いました───こんな事をやっても意味が無いと……

ウチは普通の家じゃないと


だから国語の授業は嫌いでした

だって宿題が出来なかったから


そんな少女にも、気さくに話をかけてくれるクラスメイトが居ました。でもそのクラスメイトは「トイレ」に行く時だけしか、少女に話しかけませんでした。

他にも少女に声をかける人は居ました。

でも、本命の友達が来るまでの「暇潰し」の存在だったのです。


少女は思いました

「全員死ねば良いんだ」

と……


だから、蟻を殺しました。

蟻をクラスメイトだと思いながら、胴体を


プツン────と、真っ二つに……








「5歳~10歳までの間……、この少女はどんな思いで生きていたのですかね……」


「……ほんとに」


グラスの「水」は少し透明感のある赤に変色した。トマトジュースとは違って、サラッとした感じだ。

瑞希は1口呑むと…「…懐かしい」と吐露する。


「此方は、学校の裏庭の木に生っていた木苺で作られたジュースです……」


「……よく……食べてたなぁ……」


瑞希の手が震え始める─────


「…なんで……涙が出るんだろう」


グラスには、瑞希の涙が零れ落ちる


「……それは、貴方が優しいからですよ」


マスターは、ただただ───優しく囁いた。


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