大陸の東にある島国、ニホン。その片隅の、とある村に一人の少年がいた。
名の通った剣術道場の息子で、才能にも恵まれていたが、次男坊であり跡継ぎではない。将来はどこかへ仕官をと思い、黙々と剣の腕を磨いていた。
そんな中で、少年は旅人たちから海の向こうの伝説を聞き、大きな憧れを抱くことになる。
声変りが終わる頃には、「世界へ修行の旅に出たい」と思うようになっていた。
少年の幼なじみに、一人の少女がいた。
神職の家に生まれたが、学問の成績が優秀だったので、街の学校へ留学。そこで政治経済地理歴史などなど、世界のことを広く深く学んでいった。
そんな中で、少女は古今東西の様々な伝記に触れ、大きな憧れを抱くことになる。
体つきが女らしくなる頃には、「世界で学問を活かしたい」と思うようになっていた。
少女の留学期間が終わり、帰郷した時。二人は互いの夢を語って意気投合し、それぞれの家の了解を得て、共に旅立つことになった。剣を高めるため、見聞を広めるため、ということで。
そう、二人の目的は、目指すものは、一致していたのである。
「森で暮らし、風と語らう、高潔で気高い種族、エルフ。人間とはあまり関わらないが、巨大な悪に対しては人間と共闘することもあるとか。会ってみたい。そして伝説の英雄のように、エルフの少女と恋仲に……いや、その、それは自然にそうなったらという話で、あの、」
「人間とは異なる文化や技術を持つ種族、エルフ。今は人間とはロクに交流していない。もし、彼らと本格的に交易ができれば、双方にとって大きな利益になるはず。その開拓者となれれば……世界の歴史に名が残る! 魔王の打倒なんて空想物語ではなく、現実の偉人伝として!」
♪西にはあるんだ エルフの国が♪
二人は、夢を歌い上げながら海を越え、西の大陸の地を踏んだ。
その頃。大陸東端の国の、ある山奥にて。
「ふむ。どうやら我々は、エルフという名の種族である、と認識されているようですね。森の妖精とか何とか。何ともメルヘンなこと。しかし変に探られるのも困りますから、話を合わせておくとしましょう。私はエルフ、私はエルフ、と」
この山の中で、道に迷ったり獣に襲われた者を助けてくれる謎の存在が、周辺の村や街の噂になっている。耳の尖った美しい少女、「お山のエルフ様」。その山で今、異変が起こっていた。
世界のコンピュータRPGの原点であり、
日本人にとっては「ドラゴンクエストの元ネタ」である、
アメリカ産のゲーム「ウィザードリィ」。
もちろん何十年も昔の作品。その中に既に「エルフの忍者」はいました。
つまり。今、日本のアニメやゲームなどで、
剣と魔法のファンタジー世界に美少女くのいちなどがいるのは、
「西洋のものに、日本人が自分らの文化をのっけてる」ではありません。むしろ逆輸入。
剣と魔法の世界に忍者がいるのは、西洋でも昔からの伝統です。
無論、当時のウィザードリィの開発スタッフが、日本でのセールスを
意識したはずありませんからね。ごく自然に、そうなったということ。
このことを、現代日本人はちゃんと知って、誇るべきだと思います。
チャイナドレスも青龍刀もない西洋の地に、日本刀を持った侍はいたのだと。
ドラゴンクエストもファイナルファンタジーも誕生してない古き時代から、
エルフの魔法使いやドワーフの戦士と肩を並べて、
忍者はダンジョンに挑んでいたのだと。