表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/107

9.Don't forget!

「おはようございまーす」


「うい。おはよう」


「今日もヒマであってくれっ」


「またお前はそんな事言って……そんなヒマが続くと給料出ねえぞ」


「わかってる……わかってる。だけど……本当に何もせずにお金が欲しい」


「お前、マジでクビにすっぞ」


「ですよね」


「漬け物届いてるから、開梱して冷蔵庫詰めといてくれ。それ終わったらロッカーに溜まってるダンボール外に出しといて」


「はい」


 今日はバイトの日。朝8時から夕方5時、たまに早くて3時まで、俺は弁当屋で働いている。


 まだ働き出してそんな期間経ってないけど、俺が以前からしょっちゅう通ってた弁当屋で、ここの店長とは客として通ってた時から顔なじみで、俺が仕事探してる話をしたら快く、即攻で雇ってくれた。


 一応、チェーン店なので形式的な面接はしたが、俺は元々お客だったため、また何か妙にこの店長と上手く気が合ったのもあって、たまにタメ口混じりで接してる。悪いな、とは思うんだけど、店長は別にいいって感じで気にしてない。見た目はけっこうマッチョで体育会系なのだか、バイトへのさりげない気遣いができる、同性の年下からは好かれそうな存在だ。ギャップ萌えというやつか。


 店長は袴田はかまだ 敏樹としき。年齢は確か27歳。正社員でこの弁当屋チェーンに入社して、以前ここの店長が急に辞めて、急遽本社的な所から一時出張的な感じで来てるらしい。しかし俺は今の店長がこの店に来る前からこの店には通ってて、その前の店長というのが女性なんだが、まあ変わった人だった。多分話した感じからすると中国の人かな?まあ適当な日本語を話して、俺としてはそれがけっこう気さくに感じて楽しかったんだが、今の店長が来なかったら多分俺はこの店で働いていないだろう。

 たまに店長から、


「お前が成長してここの店長やれば、俺は無事元の部署に戻れる。ゆえに頑張れ。俺の為に」


 なんてふざけた事を言ってきてたが、最近はどうも言ってこない。店長は俺の周りで唯一俺が動画活動、ゲーム実況で活動しているのを知っている人物で、俺の動画もたまにだけど見てくれてるらしく、どうやら俺には店の店長は務まらないと判断してくれたのだろう。色んな意味で。


 俺はこの弁当屋と家の往復で今の生活が成り立っている。仕事がある事に感謝。

 だがいつまでもここにいたくはない。


 若者の希望・夢。わかるだろ?店長。

 俺はまだまだ青春真っ只中でいたい。


「そういえば昨日、秋波原行くって行ってたけど、どうだった? 楽しかったか?」


「ああ、はい。実は秋波原で、幼馴染と再会したりなんかしちゃったりして、そりゃもう最高のルートでした」


「幼馴染?」


「はい。自分で言うのも何ですけど俺の幼馴染、かなり無理目の子でー」


「何だムリメって」


「いや、だから、自分で言うのも何ですけど誰が挑戦しても無理だろって位の可愛さで」


「ほう」


「そんな可愛い幼馴染と再会しちゃってとにかく最高の休みでした。まあ、目的は果たせなかったんですけどね……」


「いいな。そんな可愛いムリメ? な幼馴染がいて。

まあでも、お前にはそんなムリメな子はムリだろうけどな」


「いやいや、何でですか? 俺は幼馴染だし、小さい時からその子の事知ってるし、多分誰より無理目ラインから抜け出そうとする人物ですよ」


「その自信はどっから来るんだ」


「まあ、ある程度の数の女の子をこなせば多少の余裕は出てきますよ」


「お前の場合はゲームでだろ。現実はちげえぞ」


「いやいや、でも最近のギャルゲーは本当によく作り込まれてて、女の子のささいな心の変化や、それにともなう言動なんかもしっかり描かれてて本当勉強になるんです。男側としての行動も一個一個、慎重に慎重を重ねて判断して恋愛していくんす。まあそれでも失敗する時もあるんすけど、その失敗の数すら俺は沢山経験してるし、何より俺は美少女という存在の素晴らしさを誰よりわかっているつもりです」


 店長は、やれやれ…といった面持ちで、


「あのな悟。ゲームはゲームなんだよ。その作り込み?とやらがいくらしっかりしてても所詮、ゲームをやる男からの目線でしかなくて、男側のご都合主義だけで進んでうまく男心をくすぐるように出来てるだけなんだよ、そんなん。現実にその子と話さねえだろ?

 ゲーム以外の、想定外の言葉がきたらどうする?決められた選択肢なんてねえぞ?自分で、自分の経験から向き合うんだぞ?」


「だから〜俺にはその経験がありますってばよ」


「ダメだこりゃ」


「まあ、見ててくださいよ。そのうち店長にも紹介しますって。そしてその目で、無理目の美少女という存在を目に焼き付け崇拝していただきたい」


「何でそこまでせにゃならんのだ。…写真ねえのか?」


「あ、持ってないです」


「そんなムリメなら、SNSとか載ってないのか?」


「あ…SNS……」


 すっかり忘れていた。


 引越して離ればなれになった当時はまだSNSというものすらなかったが、今はある…!


 何で気付かなかったんだ? 

 バカなのか(知ってる)? 

 昨日会ってそれで満足したのか? イヤイヤ、そんな事はない、確かにこのご時世、夢も何かしらSNSをやってるはずだ……。


  よし……


「店長」


「ん?」


「もう上がっていいですか?」


「お前ほんとクビにすっぞ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ